知っておきたい大切なこと

副腎皮質機能低下症と診断されてから、ガイドラインや医学文献を読んだり、内分泌の専門医の先生方にお話を伺ったりしながら、補充療法について少しずつ学んできました。

その中には、もっと早く知っておきたかったと思うことや、知ってから自分の補充療法に対する考え方が変わったこともあります。今回は、そんな私自身が知って良かったと思うことを、いくつか書き残しておこうと思います。

ガイドライン2023年版から学んだこと

日本内分泌学会などがまとめた「間脳下垂体機能障害と先天性腎性尿崩症および関連疾患の診療ガイドライン2023年版」の中にある「ACTH分泌低下症の診断と治療の手引き」には、補充療法についてこんなことが書かれています。

少量から開始する

補充療法は5〜10mg/日から始めて、1〜2週ごとに体調の変化を見ていきます。この量で体調が整う人もいるので、必要以上に増やさずに済むなら、それが一番いいですよね。

必要に応じて増量する

それでも症状が改善しない場合は、副作用がなければ10〜20mg/日を目安に段階的に増量していきます。最初から多めに飲むのではなく、少量から始めて、自分に必要な量を見つけていくという考え方になっています。

シックデイの増量

シックデイには、必要に応じて通常の2〜3倍に増量します。ただし、2〜3倍の量を一度にまとめて飲むわけではなく、増やした1日の量を3回に分けて飲むのがいいとされています。

長期的な過剰補充のリスク

必要以上の量を長く飲み続けると、骨粗しょう症や糖尿病などの合併症が起こりやすくなるだけでなく、死亡率も上がることがわかっています。補充量は、多ければ多いほど安心というわけではありません。

そんな内容を読んで、私自身も、毎日の補充療法について改めて考えるようになりました。

日常の「追いコートリル」について

患者さんの間では、しんどいときにコートリルを追加で飲むことを「追いコートリル」と呼んだりします。コートリルを罪悪感なく気軽に増量できるようにと親しみやすい名前がつけられ、周囲の患者さんにも増量を勧めてまわったことで広まったそうです。

副腎皮質機能低下症の患者さんにとって、コルチゾールが足りなくなることはもちろん危険です。でも、必要以上にコートリルを飲み続けることにも、長い目で見るとリスクがあります。

このガイドラインが一般公開される前は、補充療法についての情報が少なかったこともあって、しんどくなるたびに、コルチゾールが本当に足りていないのかを考えることなく、1錠単位で何度もコートリルを追加している人も多かった印象です。

患者さんの間では、日常のちょっとした負荷でも一度に3倍量を飲むことが勧められていて、中には飲み薬なら1日100mgまで飲んでいいという話まで出回っていました。そんな飲み方を日常的に続けた結果、過剰補充から抜け出せなくなって、クッシング様の症状や合併症に悩む方も少なくありませんでした。処方量では足りなくなり、主治医に内緒で海外からステロイドを個人輸入して増やしていた人もいました。

でも、ガイドラインや医学文献で過剰補充のリスクを知って、それまでの飲み方を見直すようになった人も、多いのではないかと思います。

私も普段から、こんなことを心がけています。

  • 日常は安易にコートリルを追加しない
  • 感染症などのシックデイ自体も、できるだけ予防する
  • 本当に必要なときには、しっかり補充する

もちろん、コルチゾールが足りないときに我慢するという意味ではありません。足りないときは、足すしかありません。感染症や強い負荷で体がたくさん必要としているときには、必要な量をきちんと補充しますし、吐いてしまって薬が飲めないときは、すぐに受診します。

ただ、いちばん大事なのは、そもそも足りなくならないように先回りしておくことだと思っています。体調を崩さないように生活を整えたり、感染症を予防したり、負荷がかかりそうなときには前もって備えたり。そうやって先回りしておけば、慌てて追加しなければいけない場面そのものを減らせます。

普段のちょっとした疲れや不調まで、全部コルチゾール不足だと思って追加していくと、結局は飲みすぎにつながってしまいます。健康な人でも疲れたり、体調がすぐれない日はあるので、すべての不調をコルチゾール不足と結びつけないようにと、内分泌の先生からも言われています。

副腎クリーゼを防ぐことも、長期的な過剰補充のリスクを避けることも、どちらも大事にしていきたいと思っています。

あとから減らすのが難しくなることも

ちなみに、ガイドラインで少量の5〜10mg/日から始めて、様子を見ながら増やしていくことになっているのにも、ちゃんと理由があります。

健康な人がほかの病気の治療でステロイドを飲んだ場合は、時間をかけて丁寧に減らしていけば、多くの人が自分の分泌を取り戻せることが文献で報告されています。でも、副腎皮質機能低下症の人が一度ステロイドを飲み始めると、なかなか減らせないことが多いそうです。これは、私が複数の内分泌の先生から聞いたお話です。先生の側も、一度高用量で始めてしまうと、なかなか減らす方向に進めないことが多いとのことでした。

その理由のひとつは、外から補充を続けるうちに、もともと少なかった自発(自分の体で作れるコルチゾール)がさらに失われて、体が完全にステロイドに頼る状態になってしまい、それがうまく戻せなくなるからではないかと思います。

私は一度20mg/日まで飲んでいましたが、主治医の先生と相談しながら少しずつ減らして、今は頓服だけで過ごせるようになりました。でも先生のお話では、私のように一度高用量を飲んでから頓服まで減らせた人はかなりレアなケースで、減量はとても難しくて、うまくいかない人も多いとのことでした。

私の場合は、自発がある程度残っていたことに加えて、早い段階から減量に取り組んできたことも大きかったと思います。でも、誰にでも同じように減量できるわけではありません。

こうしたお話を先生方から聞いて、ガイドラインで少量から始めて、必要に応じて増やしていくことが勧められている意味も、以前よりよくわかるようになりました。最初から必要以上に増やさずに過ごせるなら、それに越したことはないですよね。

自発をできるだけ残していきたい

私の場合、診断されたときから自発が完全になくなっていたわけではなく、今もある程度の分泌が残っています。ただ、普段はそれなりにコルチゾールを作れていても、感染症や体に強い負荷がかかったときには、自分の分泌だけでは追いつかず、コートリルの補充が必要になることがあります。

一方で、外から補充するステロイドにはACTHの分泌を抑える作用もあるので、必要以上の補充を続けていると、残っている自発まで抑えてしまうかもしれません。せっかく自発が残っているなら、できるだけその働きを失わずに過ごしていきたいですよね。

なので、必要なときにはしっかり補充しつつ、普段はなるべく余計に増やさないようにしています。日常的に追加を繰り返していると、元の量に戻せなくなるかもしれないことも、頭の片隅に置きながら管理していきたいと思っています。

自分に合った補充療法を見つけていく

私も最初からうまく管理できていたわけではありません。4年以上闘病してきた中で、何度か失敗もしながら、自分の体調の変化や、コートリルが必要になるタイミングが、少しずつわかるようになってきました。

副腎皮質機能低下症は、病気の原因も、残っている自発や分泌予備能も、人によって違います。誰かに合っている補充量や飲み方が、そのまま自分にも合うとは限らないので、主治医の先生と相談しながら、自分に合った方法を見つけていく必要があります。

ただ、足りなくならないように先回りしながら、必要なときにはしっかり補充して、普段はできるだけ余計に増やさない。その基本の考え方は、みんな同じだと思います。

これからも、ガイドラインや医学文献、先生方のお話から学びながら、自分の体のこともちゃんと理解して、必要な補充と過剰な補充のバランスを考えつつ、この病気とうまく付き合っていけたらと思っています。