FAQ
基礎知識と回答記録
副腎皮質機能低下症の基礎知識と、今までDMなどでいただいた質問と回答をまとめました。
はエビデンスあり(ドクターに確認・論文や文献を参考)で、それ以外の投稿は体験談としての回答記録です。
- 精神的ストレスにはコートリルが必要ですか?
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Peter C. Hindmarshの副腎不全の補充療法の書籍には、精神的ストレスも場合によってコートリルが必要と書かれていました。5〜10分間だけの突発的なストレスには不要で、それ以上の時間でも解決できない場合は、コルチゾールに影響するって理論だそうです。
精神的ストレスとコルチゾールいついては「メンタルの影響とHPA軸」にも記載しています。
コルチゾールが低いとストレス耐性も下がってしまうので、健康な人よりも精神的からのダメージ受けやすいのかもしれません。工夫できるとすれば、ストレスを受け流したり、躱わしたり、糧にしたりできる心を育てる事も良いと思っています。
- コートリルを追加する目安を決めていますか?
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日本のガイドラインの補足文献には、吐き気・嘔吐・腹痛・筋肉痛・関節痛・疲労感・高熱・低血圧・意識障害などの症状が2つ以上ある場合は、副腎クリーゼの可能性があると定義されています。また、欧米の副腎クリーゼの見分け方の資料には、コルチゾール不足と副腎クリーぜの症状が図解されています。
コルチゾール不足と副腎クリーゼのボーダーラインと追加の目安は、人それぞれだと思いますが、私の場合は「症状が複数揃った時(私の場合は3つ以上)・意識朦朧の時・脈や呼吸に症状が出た時・少し休んでも悪化する時」をボーダーラインにしています。ただ、午前中をゆっくり過ごして乗り切れば、午後からは自力で回復できる事が多いので、なかなかヤバい体調で動かなければならない時以外は、活動量を落として過ごしています。
あと、副腎クリーゼの見分け方にまとめていますが、「元気をブーストする薬ではない・多くても少なくても良くない・全ての不調に効く訳ではない・活動量にあわせて追加が必要・相性の悪い薬や成分に注意する・休める時は休んで補う事も必要」も重要だと思っています。
コルチゾール不足と血糖値にも記載していますが、血糖値もコルチゾール不足の目安になるので、病院に救急搬送された場合の副腎クリーゼの判断にも、血糖値を参考にしている様です。食生活が整っていて、血糖値の推移が安定している方の場合は、血糖値を通してコルチゾール不足を予測できるケースもあって、私はかなり参考になっています。
- コルチゾール不足の症状があるのに診断に至りません
- 欧米(特にイギリス)ではCBGへの影響を考慮して、負荷試験の6週間前から、数値に影響を及ぼす可能性のある薬やサプリを停止して、正しく検査できるように整備していて、日本の文献でも同様の記述を見かけるようになりました。服薬されている薬の影響で、本当は副腎皮質機能低下症と診断されるはずのケースが、正常と診断されている事もあり、その逆の可能性もある様です。詳しくはコルチゾールに影響する成分にまとめています。
- 体調が悪くなる理由がわかりません
- 体調が悪くなる原因を探って解決する事で、コートリルを増やさずに、上手くコントロールができるようになる事もあると思います。その為に欧米の方々がやっている事のひとつに、服薬と症状のレコーディングがあります。 私も初期の頃から、服薬量・追加の有無と量・追加の理由・1日の体調メモ(朝の症状・日中の状態・睡眠の質)・イベント・血圧と脈を、症状日記と称して毎日記録して、判断する材料にしていました。
- 下垂体性か視床下部性か判明していない状態だと不利ですか?
- 私も同様に、下垂体性か視床下部性か判明していない状態ですが、もし検査をしても、できる事は補充療法の一択です。なので入院して負荷試験を繰り返す利点があるのか不明です。そもそも内分泌の負荷試験は、色黒つけにくいケースもある様です。ただ、原因不明の場合(特に続発性)は回復のチャンスもゼロではない様です。
- コートリルの持ちが悪くて困っています
- コートリルの持ちが悪い場合は、併用している薬を精査してみると解決する場合があります。もし影響がある薬剤があり、それが必要な薬でも、服薬のタイミングを工夫する事で、コートリルの利用能が上がる可能性もあります。あと、腸内環境の改善も重要です。薬の併用についての精査は、誘導薬と阻害薬(CYP450)を考慮する必要があり、日本の薬剤師さんの情報では不十分でした。
- コートリルを多めに服用すると効果が上がりますか?
- 熱や炎症がある時以外は、多めに服用する利点がなく、多い事によって早く効果が切れてしまう事もあります。コルチゾールの血中濃度が16~18μm/dLを超え始めると、CBGが飽和状態になる事から、遊離コルチゾールの量が増加しますが、これは肝臓と腎臓によって非常に簡単に除去されてしまうため、実際に補充される総コルチゾールの量は、摂取量に比例して増加する訳では無く、閾値(16~18μm/dL)よりも多く取り込まれる事が無いというメカニズムです。詳しくは「コルチゾールとCBGの影響」に記載しています。
- ビタミンサプリは体調管理に有効ですか?
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欧米の副腎皮質機能低下症の方は、血液検査で不足している栄養素に限りサプリメントを服用することがありますが、過剰摂取による副作用があるため、実際に不足していないものは服用しない方が良いと認識されています。
ビタミンA:頭痛・めまい・吐き気・肝臓障害・骨の脆弱化・皮膚の乾燥・脱毛
ビタミンD:不整脈・腎機能障害・食欲不振・嘔吐・筋力低下
ビタミンE:出血リスクの増加・疲労感・吐き気・消化器症状
ビタミンB6:神経障害・しびれや痛み・運動失調
ビタミンC:消化器症状・吐き気これらのビタミンは、適切な量を守って摂取すれば健康に役立ちますが、サプリメントなどで過剰に摂取すると、体に害を及ぼす可能性があります。また、CYP(シトクロムP450)酵素への影響も考慮することが重要です。
- コートリルは水以外で飲んでも良いですか?
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コートリルは、主にCYP3A4により代謝されるので、グレープフルーツジュースは禁忌になっています。グレープフルーツ以外にもフラノクマリン類が含まれている柑橘類(ライム・ダイダイ・シークワーサー・スウィーティー・はっさく・ブンタン・河内晩柑・不知火(デコポン)・ネーブル・オレンジなど)は、薬剤への影響が報告されています。
その他、ポカリスエットで薬を飲んでもいいですか?という質問に、大塚製薬の公式サイトでは「ポカリスエットで医薬品を服用することは避けてください。」と回答されています。また、アクエリアスで薬を飲んでもいいですか?という質問に、コカコーラジャパンの公式サイトでは「お薬は用法用量に従って、水・または白湯でお飲みください。」と回答されています。
- 体調が不安定でも何か運動する事は可能ですか?
- 副腎皮質機能低下症で運動に取り組む方々は、日頃のコントロールが良好な事が前提な様ですが、コントロールが不安定な方が運動する場合にも、段階的運動療法というものを用いて、2年かけて少しづつ安全にパフォーマンスをあげる方法があるそうです。詳しくは「コルチゾールと運動」と「欧米のコントロール方法」に記載しています。
- 2.5mgや1.25mgのコートリルを作る方法をおしえてください
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国内ではコートリル10mgが最小単位になっているのですが、5mgや2.5mgだけではなく、1.25mgで微調整する事も多いので、ピルカッターや糸切りハサミなどを使って作っています。
5mgの時はピルカッターで半分に割っていて、2.5mgは調剤薬局の方にお願いして作ってもらっています。それ以下の2mgや1.25mgなどの場合は、糸切りハサミなどで微調節しています。
- 生理の時はコートリルを追加しますか?
- 私の場合、子宮腺筋症を持っているので、出血量がとても多くなり、激しい痛みが出る事があります。その場合は、カロナールなどの鎮痛剤やトラネキサム酸などの止血剤で症状を緩和してみて、それでも出血量や痛みなどからコルチゾール不足による体調不良になりそうな時だけ、見合った量のコートリルを追加するようにしています。毎日コートリルを服用するようになってからは、出血や痛みも緩和したように感じているので、ほとんど追加する事なく過ごせています。
- 血糖値スパイクの症状と対処法を教えてください
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私は糖尿病ではないのですが、コルチゾールが作れない事で血糖値コントロールが弱くなる体質なので、なるべく血糖値が上がりすぎない様に工夫することで、急降下して低血糖になる事を防げています。
もし血糖値スパイクからの低血糖になった場合は、スポーツドリンクやラムネで回復させています。そもそものコルチゾールが足りてない事で血糖値を保てなくなっている時は、一時的に血糖値を持ち上げたとしても、リバウンドしてまた低血糖を起こすので、ラムネなどと一緒にコートリルも追加して対処しています。詳しくは「第19話「低血糖対策」」に記載しています。
ちなみに欧米では、副腎皮質機能低下症の体調維持は、Hindmarsh教授の研究からヒントを得て、低血糖と血糖値スパイクを防ぐ事が一番大事で果がある方法と言われています。血糖値の影響については、情報と日記に記録しています。
- グルテン・カゼイン・カフェインを控えると不調が改善されますか?
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副腎皮質機能低下症でも、そうでない場合でも、グルテン・カゼインが体の負担(炎症)になっている体質の方と、そうでない方が居ると思っています。私の場合は効果があったので継続していて、副腎皮質機能低下症でも一定数の方が暮らしやすくなっている印象です。
欧米の医師の指導で、サラセミア(鉄が過剰になる病気)の患者への指導で、「食事中にお茶を飲んで鉄分の吸収を下げる」「鉄分を排出するように、カフェイン・乳製品を摂る」という方法があるそうです。逆に、サラセミアではない場合は貧血になる可能性があり、カフェインは脱水・電解質異常になる可能性もあり、血糖値にも影響するので、コルチゾールの無駄使いになる場合もあるようです。
同じHPA軸の機能障害からのヒントとして、ハーバード大学医学部が出版しているManaging and Recovering from Long COVIDを購入して読んでみたところ、グルテン・カゼインを除去する事について記載されていて、海外の副腎皮質機能低下症の自然療法(おそらく軽症者やグレーゾーン向け)でも、一般的なアレルギーや過敏症を招く食品・毒素・化学物質を取り除く事で、体の自然な回復をサポートするという取り組みがある事からも、自分の体質にあった食事内容で、体が楽になる可能性はあると思っています。
- コルチゾール不足の時に他の持病も悪化してしまいます
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コルチゾールが生命維持の方に優先的に使われて、もともと弱い場所の炎症を抑える分が足りなくなって再燃してるという話が書籍に書かれていました。そうだとしても、コルチゾール不足と定義されている症状以外にコートリルを入れる事を否定的な先生方が多い印象なので、私はそれぞれの症状にあった方法で対処しています。場合によっては単発のステロイドで炎症を抑える事もあります。コートリルは割と何にでも効いてしまうので、あらゆる不調に使ってしまい、依存しないように運用する事が大事だそうです。
参考までに「第52話「炎症と副腎機能」」に副腎不全のフロー図をまとめています。
- コートリルを服用しても体調が良くなりません
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睡眠や食べ方を見直してみると、体調が安定する事もある様です。私の場合は、朝の血糖値が基準値でも、食べた後に血糖値がアップダウンしやくす、それでコルチゾールの無駄使いをしてしまうというケース(血糖値スパイク)でした。血糖値をなるべくフラットに保つように意識するだけで、コルチゾールを無駄に消費しにくくなり、不調が少なくなる事もある様です。また、夜中に低血糖になっていると、眠りが浅くなってしまい、コルチゾールが効率的に作れないからか、翌日に不調になっている事もあるので、睡眠の質は結構重要です。
ちなみに欧米では、副腎皮質機能低下症の体調維持は、Hindmarsh教授の研究からヒントを得て、低血糖と血糖値スパイクを防ぐ事が一番大事で果がある方法と言われています。血糖値の影響については、情報と日記に記録しています。
- コートリルを服用すれば元の健康状態に戻りますか?
- 副腎皮質機能低下症の情報ページには、適切な補充療法を続ける事で、良好な一生を過ごす事ができると記載があるのですが、実際はホルモンコントロールは難しく、なかなか整えるのが大変だと思っています。同時に、比較的元気に過ごしてる方も存在しますし、私自身も健康だった頃の7割〜9割くらいのポテンシャルで動けていて、体調がとても良い時は、健康だった事とほとんど変わらない状態で過ごせています。体調が良くなるまで数ヶ月〜1年くらいかかると言われている方が多い印象で、発病してから診断までにかかった期間と比例しているという体験談も多くあります。
- コートリルの減薬がうまくいきません
- ステロイドは急に減らす事ができない薬なので、副腎が健康な人でも、ルールを無視した減薬をすると、副腎不全に繋がります。副腎皮質機能低下症の場合、そのリスクは健康な人よりもさらに高く、生命の危険が伴う事なので、主治医の許可と指導のもと、数値を参考に進めて行く事が大前提です。主治医のサポートがあったとしても、細かい体調の変化に対応する事が必要です。詳しくは、英語圏の論文の内容を要約した「補充療法の漸減アプローチ」と、「第25話「減薬と維持量」」や、「調整・減薬」の関連記事にも記載しています。
- 副作用を予防する方法はありますか?
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コートリルは10mg飲んで10μm/dL補充される訳ではなく、空腹時に服用した場合は一時的にかなり血中濃度が上がります。クッシング症候群の定義では、血中コルチゾール濃度が30µg/dLを超えた状態が長く続くとリスクがあると記述されているので、データに基づき、なるべく血中濃度をなだらかに保つようにするように、毎朝補食した後の服用や、推奨服用量の定義の範囲内での服用で、副作用を予防しています。私自身、2023年11月時点で1年半ほど服用していますが、ムーンフェイス・体重増加・糖尿病・高脂血症など、ステロイド特有の副作用は全くありません。
英語圏の副腎皮質機能低下症のコミュニティでは、コルチゾール結合グロブリン・ステロイド様作用のリスク・CYP450(シトクロムP450)の影響も考慮して副作用の予防を心がけている様です。
- 最小限のコートリルで過ごす方法はありますか?
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コートリルは、我慢や気合いで少なくするのは現実的ではなく、理論的に最小限に出来る唯一の方法(今のところ)は、CYP450(シトクロムP450)を考慮する事で、研究者も参加するコミュニティも含め、ほとんどのコミュニティでCYP450の話題が出ている(検索してみました)事からも、副腎皮質機能低下症のコントロールには欠かせないと認識されている様です。
英語圏の副腎皮質機能低下症のコミュニティでは、コルチゾール結合グロブリン・ステロイド様作用のリスク・CYP450(シトクロムP450)の影響も考慮する事で、コルチゾールの生物学的利用能を100%に近づけて、最小限の補充で過ごす事を目標にしている方が増えてきている印象です。
- 副腎クリーゼ(急性副腎不全)ってどんな症状?
- 副腎クリーゼ(急性副腎不全)とは、副腎の機能が急激に低下することで、生命の危険に曝される状態で、脱水・血圧低下・血糖低下で意識障害を呈し、ショックに陥り死に至ります。詳しくは「副腎クリーゼの見分け方」に参考例を記載しています。
- 副腎不全ってどんな症状?
- 副腎不全とは、副腎から分泌されるコルチゾールの低下により、全身倦怠感・腹痛・悪心・嘔吐・消化器症状・体重減少・精神機能低下・低血圧・低血糖・耐寒性低下などの状態になり、早い段階で適切な治療をしない場合は副腎クリーゼに繋がります。
- 副腎皮質機能低下症ってどんな病気?
- 副腎皮質機能低下症とは、副腎から分泌されるコルチゾールが少なくなってしまう病気です。易疲労感・全身倦怠感・腹痛・悪心・嘔吐・消化器症状・体重減少・精神機能低下・低血圧・低血糖・耐寒性低下など、様々な症状が出てきますが、いずれも非特異的な事から、不定愁訴や他の病気と診断されているケースも多く、また、診断の基準になるコルチゾール値も、血液検査の一般項目に含まれていない為、なかなか診断に繋がらないのが現状です。生涯にわたりコルチゾールの補充が必要で、治療が軌道にのった後も、負荷やストレスにさらされた際には副腎不全を起こして重篤な状態に陥ることがあるため、日々のイベントに応じた服薬の調整が不可欠で、治療が遅れれば生命にかかわる病気です。
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