Hint擬似アレルギーと喘息
副腎皮質機能低下症は、体にとって必要な「コルチゾール」というホルモンがうまく作れなくなる病気です。コルチゾールは、体の中で炎症を抑えたり、免疫バランスを保ったりする働きがあるのですが、不足するとちょっとした刺激にも体が過敏に反応しやすくなってしまいます。そのため、もともとアレルギー体質でなくても、かゆみや息苦しさなど「アレルギーっぽい症状」が出ることがあるそうです。
喘息にも影響が出る?
喘息は、気道に炎症が起きて呼吸がしにくくなる病気です。コルチゾールがしっかり働いていれば、気道の炎症を抑えることができるのですが、不足するとその炎症がひどくなってしまうことがあります。たとえば、「いつもなら平気だったのに、においや天気の変化で息苦しくなる」「ちょっとしたことで咳が止まらない」といった過敏な反応が出やすくなるそうです。
アドレナリンも関係している?
アドレナリン(エピネフリン)は、アレルギー反応やショック状態など、体が緊急事態に直面したときに重要な役割を果たすホルモンです。直接の材料ではありませんが、コルチゾールはアドレナリンの合成や働きを支えるサポート役のような存在で、コルチゾールが不足していると、アドレナリンの合成がうまくいかず、強いアレルギー反応や喘息発作の際に、体が十分に対応できなくなることがあると聞いたことがあります。
もしそれが本当なら、コルチゾールが1.6μg/dLしか作れなかった頃に、さまざまなものにアナフィラキシーのような反応が出ていたことや、喘息というより「気道閉塞」に近い状態になっていたこと、そして、今では問題なく摂取できている食品にまで過敏に反応していたことにも、少し説明がつく気がしています。
[参考]Physiology, Cortisol – August 28, 2023
治療の相性
副腎皮質機能低下症の治療では、必要最低限のステロイド補充(コートリルなど)により副作用を避けつつ、生理的なホルモンバランスを保つことが目的です。そのため、「できるだけ少量で」「過剰なステロイドは避ける」というのが基本的な方針になります。一方で、喘息の治療は、気道の炎症をしっかり抑えることが第一で、吸入ステロイドを基本としながら、必要に応じて全身ステロイドを使用することもあります。このように、ステロイドの使い方に関しては、それぞれの治療方針が一部で相反するため、バランスをとることが大切になります。
吸入ステロイドはどうなの?
喘息の治療では、吸入ステロイドを使って、気道の炎症を抑えることがよくあります。この薬は体の中にはあまり吸収されないので、副作用が少ないとされていますが、長く使い続けたり、量が多かったりすると、少しずつ副腎に影響を与えて、コルチゾールが作れなくなることもあります。
- 気道の炎症をしっかり抑えられる
- 発作の回数や重さを減らせる
- 長い目で見て、気道の悪化(リモデリング)を防げる
- 長期間・高用量の使用・併用薬の影響(特にCYP3A4)で副腎機能が落ちる可能性がある
- 特に体の小さい人や高齢者、代謝がゆっくりな人は要注意
経口・点滴ステロイドは?
なるべく使わない方が良いのですが、プレドニンのような短期作用型のステロイドであれば、一時的に副腎機能が落ちたとしても、もともと副腎機能に問題がない人であれば、時間をかけて回復できる可能性が高いそうです。なので、本当に必要なときには怖がりすぎず、早めに使ってしっかり治すことが大切だと感じています。
むしろ、プレドニンを避けるあまり、結果的にデキサメタゾンのような強くて長時間作用するステロイドを使う方が、副腎への影響が長引いてしまうこともあるようです。長時間作用型ステロイドは、1回の投与で約1週間ほどコルチゾール分泌が抑制されると言われていて、たとえ1か月のみの使用でも、多めに投与された場合は、HPA軸の機能低下が長引いたり、場合によっては永続化するリスク※1も指摘されています。
具体的な対策
副腎皮質機能低下症で喘息も併発して、度々救急外来のお世話になっていた私が、なるべく喘息を出さずに、副腎機能を守っていく為に、気をつけたこと・気をつけておきたかったこと・気をつけていることをまとめました。
日常
- 吸入ステロイドは必要最小限の量で使いながら、症状が安定してきたらステップダウンする
- 普段の生活の中で、食事・運動・睡眠などを整えて、自然なホルモン分泌を助ける
- 薬やサプリをなるべく最低限にして、CYP3A4代謝への負担を減らす(ステロイド作用を無駄に強めない為)
- 合わない食品や化粧品をできるだけ避けて、刺激の少ないものを選ぶ(隠れたアレルゲンやトリガーを避ける)
強い症状が出た時
- 必要な場合は、医師の指導のもとでステロイドを効果的に使って、早期に治せるように取り組む
- 経口を使う場合でも、できるだけ弱めのステロイドで、短期に解決できるうちに先手を打つ
- 治療に使われているステロイドの種類や作用時間は、きちんと把握しておく
- 多めのステロイド投与時は、甘いものは避けて、なるべく外出せず、刺激や感染のリスクを避ける(当たり前ですね)
- 喘息治療でステロイドを使うときは、必ず内分泌の先生にも共有して、重複しないように気をつける
発作を出さないようにベストを尽くしつつ、でも発作時に限っては、「ステロイドは使わない方がいい」と思い込みすぎず、今の自分の状態や症状を見ながら、そのときどきでベストな選択をしていくことが大切でした。服薬だけに頼らず、日々の「ライフスタイルの見直し」もあわせて取り組んでいくことが、結果的にいちばん効果的だったように思います。
アレルゲンの特定
以前、喘息が手に負えず、頻繁に救急外来のお世話になっていた頃に、アレルギー科の先生から「大人になってからアレルゲンを特定するのはとても難しいし、多くの人が気づかないまま過ごしている」と言われたことがありました。その言葉がずっと心に残っていて、食べものだけでなく、吸入薬と住環境でも書いたように、何気なく続けていた習慣や身の回りのものを見直すことも重要だそうです。なので私は、「これかな?」と思うものがあれば、まず一度やめてみて、体の反応を見るようにしています。
体質に合わないものの特定
明確なアレルギーやアレルゲンではないけれど、「この食品を食べると、なぜかコートリルを飲む機会が増えてしまう」と感じたり、明確な数値には表れなくても、体調の変化として実感があるものもありました。私の場合は、「小麦」や「多めの乳製品」「甘いもの」がその要因の一つのようで、今でも「グルテンフリー」と「甘いもの控えめ」だけは続けることで、なんとかコートリルを常用せずに過ごせているみたいです。
欧米でも、同じ体感で同じように工夫を続けている人が一定数いて、その一部はコントロールが良好になり、治療から卒業していくこともあるので、とても励みになっています。ただ、同じ病気でも、原因や体の反応は人それぞれなので、自分に合ったやり方を見つけながら、焦らず少しずつ調整していくことが大事かなと思います。
国内外の情報・論文・コントロール良好な方の体験談などから見つけた情報を記録しています。副腎皮質機能低下症のメカニズムに関する情報は「Note」へ、体験談やヒントなどは「Hint」へ、その他の内容は「Misc」に記録しています。
※医療も翻訳も素人で、コメントも個人的な感想・見解です。