Noteステロイド様作用のリスク 重要

コルチゾール低下薬(cortisol-lowering agents)と上昇薬(cortisol-raising agents)の事を書いた投稿を読んでいただき「もしかするとコルチゾール上昇薬は、コートリルの代用になるのではないか?」と誤解してしまった場合の為に補足します。

コートリルの特徴

まず、コートリルは10mgの服用で10μg/dL補充される訳ではなく、10mg服用した場合、瞬間的に30μg/dLくらいまで血中濃度が上がるので、8時に10mg・13時に10mg・18時に5mgを服用した時は図の様な感じになり、青線がコルチゾールの日内変動、過剰な部分でクッシングの症状のリスク、不足の部分でコルチゾール不足の症状が出るリスクがあるそうです。

日内変動と補充量日内変動と補充量のイメージ(=参考

コートリルは自然に一番近いステロイドと言われている通り、最も自発のコルチゾールに近く、生物学的半減期は8〜12時間で、コルチゾールの日内変動にも合わせやすく、他のステロイドよりも、クッシングの症状やコルチゾール不足のリスクも低いとされています。

一方、プレドニゾロンの半減期は18〜36時間デキサメタゾンは36〜54時間と、コルチゾールの日内変動に合わせにくい事と、過剰によるクッシングの症状のリスクの時間も増えてしまうので、コルチゾール補充療法には適していないとされています。

ステロイド様作用のリスク

Liquorice inhibits 11βHSD type 2, which protects the renal mineralocorticoid recep­ tor from cortisol, and concurrent use with glucocorticoids can lead to oedema, hypertension, and hypokalaemia. Grapefruit juice inhibits cytochrome P450 3A4 and induces intestinal drug transporters, increasing the availability of hydrocortisone and enhancing its effects.

Eystein S Husebye – Adrenal insufficiency

グレープフルーツと甘草などの、コルチゾールの排出を抑制する物質との併用は、服用したコートリルの効果を長くするので、例えるなら、コートリルがプレドニゾロンやデキサメタゾンのような半減期になり、クッシングの症状のリスクが上がる事が懸念され、その他のステロイド様作用のある薬・サプリ・食品などの物質も、同じ様なリスクがあると考えられています。

実際に、生理的補充量なのにクッシング症候群の症状が出ていた方が、習慣にしていたグレープフルーツを徐々に減らして除去したところ、その症状が出なくなって、コントロールも良好になったという体験談も書かれていました。

なので、よくわからないステロイド様作用のある成分よりも、自然に一番近いステロイドのコートリルを飲む方が、日内変動に寄せた調整もしやすく、過剰によるクッシング症状のリスクも最小限にできる事と、コルチゾール過多による不調が減る事で、体調が安定するという理論の様です。

もっと言うと「クッシング症候群でコルチゾール結合グロブリン(CBG)の濃度が低下する(=コートリルの効果も持ちも悪くなる)」という理論も考慮すると、コートリルとコルチゾール上昇薬を併用する事で、コートリルの効きも悪くなる(=追加が増える)という連鎖も考えられる様です。

そういった理由から、欧米の方々の情報は「コルチゾール低下薬も上昇薬も服用しない事」「余計な追加を減らす事」「より自然に近いコルチゾールの推移を目指す事」を心がけ、その結果、最低限の補充で元気に過ごせているという概要になっています。

日内変動に寄せる工夫

欧米では、より自然に近いコルチゾールの推移を目指す事で、コントロールが良好になる事が周知されているので、4〜5回に別けて補充している方も多く「6回の補充が自分には最適だった」という体験談も見かけます。

ただ、コートリルの調整は危険も伴う作業なので、薬の調整を許可してもらっている場合を除き、欧米の状況を把握している・理解してくれる主治医との協業で進める必要があると思います。ただ、医療には基準が設けられていて、日本と欧米のマニュアルは全然違うので、特に大きな病院の場合は、目上の先生の手前、変わった事ができないケースもあるかもしれません。

私は副腎の予備能が残っていたので、朝1回のみの服用指示で、活動量超過による調整を許可いただいていたので、推奨量と適量予備能を弱らせない事を考慮しつつ、なだらかで長持ちできるように工夫する事で、日内変動に近い補充を心がけていました。

また、空腹時よりも食後の方が「なだらかで長持ち」になる研究結果を参考に、コルチゾールに関与しなさそうな物を食べた後に服用したり、粉薬は錠剤よりも吸収が早い(=持ちが悪い)事を考慮して、2.5mg単位のコートリルも錠で服用していました。


国内外の情報や論文・コントロール良好な方の体験談などから見つけた情報を集めています。副腎皮質機能低下症のメカニズムに関する事は「Note」へ、体験談やヒントなどは「Misc」に記録しています。

※医療も翻訳も素人で、コメントも個人的な感想・見解である事をご了承ください。