診断された方へ
私がこの病気と診断された頃は、まだまだ情報が少なかったので、病名で検索して出てきた記事を読んだり、SNSやブログの体験談を参考にしたりしながら、この病気について学んでいました。
より具体的な情報を求めて、欧米の副腎皮質機能低下症のコミュニティ(実名制)※にも参加し、情報収集を始めたところ、欧米では論文や臨床データに基づいた、科学的根拠のある方法を実践しながら、比較的元気に日常を過ごしている人が多いことに驚きました。中には、適度な運動を習慣にしつつ、運動時にコートリルを追加せずに体調を維持している人も一定数いて、その工夫や判断の仕方がとても参考になりました。
※2025年7月現在、欧米の副腎皮質機能低下症のコミュニティには約15,000人が登録されており、運動を習慣にしている方は約4,800人、回復を目指して減薬に取り組んでいる方は約970人、調整・減薬に取り組んでいる方は460人、論文ディスカッションに参加している患者・医師・研究者は約1,080人いらっしゃいます。
理論に基づいてライフスタイルや対処法を見直すことで、他に複数の疾患を抱えていない場合は、この病気の定義にもある「適切な治療が行われれば予後は比較的良好」という状態まで、体調を改善できる可能性が高いようです。
この「適切な治療」とは、単にコートリルを補充・追加することだけではなく、日々の栄養状態を整え、負荷のかかりにくい環境を整えること(=参考)も含まれています。コートリルの追加や増量だけに頼らず、体が頻繁な追加を必要としない状態を目指して、生活そのものを調整していくことが、安定した予後につながっていくことが広く知られています。
コートリルの飲み方について
コートリルをお金にたとえるなら──
「もらった給料(=ベース量)でやりくりしてね。ちょこちょこ借金(=追いコートリル)していると、あとで高いツケ(=副作用や調整困難)を払うことになるよ」「でも、事故や病気みたいな緊急時は、借金(=追加投与)してでも乗り越えるしかないよね。それは仕方ないし、命を守るために必要な選択」
──世界中で共通して使われてる基準は、こんな感じだと思います。
日本のSNSから見える状況
少し前の日本では、コートリルを多めに処方されていたこともあった(=参考)ようで、その影響から、現在も「増量対応」のまま過ごされている患者さんが一部いらっしゃるようです。最近は「多くても15mg/day」とされていて、特に日本人女性なら、それより少ない量でも十分(=参考)という見方が広まりつつあります。これから補充を始める方や、見直しを考えている方は、まずは「今の基準」に合わせて、体調を丁寧に観察していくことが大切だと思います。
私の立ち位置
私は、副腎皮質機能低下症(ACTH単独欠損症)で、他にホルモンの欠如や持病はなく、比較的シンプルなタイプの病態です。コルチゾール低下薬とされているベンゾジアゼピン系やオピオイドなどの服薬もありません。「必要最小限の量で、できるだけ長く安定して過ごす」ことを目標にしているため、コートリルの追加や増量だけに頼らず、体調を丁寧に観察しながら過ごすなかで、自分なりに感じたことや実践してきたことを書き留めています。
この病気と向き合いコントロールしていく上で欠かせなかったのは、コートリルの追加や増量だけに頼らず、CBGの影響やCYPの影響を理解して、負荷やリスクを避ける視点を持つことでした。参考にした文献の中から、調整や回復に役立った知識の多くは、Vaidya先生の総説(2025)、Hindmarsh教授の専門書(2024)、Husebye先生の総説(2021)に詳しく書かれています。
補充療法の必読
過剰投与の予防法(2025.07.07)
しっかり補充の誤解(2025.06.22)
コートリルの飲み方(2025.06.18)
副腎クリーゼの誤解(2025.06.10)
追いコートリルの罠(2025.06.04)
補充療法の失敗例(2023.12.17)
国内の公式情報
セミナーまとめ
下垂体ミニレクチャー(2025.07.27)
第5回大阪下垂体セミナー(2025.03.14)
令和6年度市民公開講座(2025.02.08)
第13回市民公開講座(2024.12.15)
オンライン医療講演会(2024.12.08)
下垂体ミニレクチャー(2024.07.07)
下垂体の市民公開講座(2024.03.16)
診断・治療ガイドライン
ガイドラインの補足文献(2024.06.13)
ガイドライン2023年版(2024.03.19)
日本の研究
ステロイドホルモン学会(2025.03.23)
低用量補充の検討について(2024.08.05)
CBGや薬剤の影響(2024.06.01)
間脳・下垂体・副腎系研究会(2024.03.18)
その他、欧米の論文や研究からのヒントもあわせて参考にしています。
論文・総説の記事一覧
※補足として文献参考のヒントに、文献の信頼性を判断する目安を記載しています。