Note糖尿病の予防
健康な人が糖尿病になったときのデメリットと、副腎皮質機能低下症に糖尿病を併発したときのデメリットは、全然レベルが違うことはご存知ですか?
糖尿病だけでも「傷が治りにくい」「感染しやすい」「手術のリスクが増える」などのデメリットがあるのは知られていますが、副腎皮質機能低下症で補充療法をしている方は、リスクが二重三重に高まります。
- 炎症を抑えにくい(コルチゾール不足による影響)
- シックデイに弱い(感染や手術の際に増量が必要)
- 血糖管理と補充療法の両立困難(補充や増量で高血糖・不足時には低血糖)
- 胃腸からの吸収障害で副腎クリーゼのリスクが高まる
- 免疫機能が低下し感染症にかかりやすい
たとえば小さな傷や感染でも治りが遅れたり、その回復に必要なエネルギーは補充から奪われたり。健康な人よりコルチゾールが作れないため、そもそも炎症が長引きやすいのも特徴です。そこに補充や増量からの血糖の乱れも重なって、治癒に不利な状況になってしまいます。
実際に、糖尿病だけの場合と比べて、副腎皮質機能低下症を併発している方は死亡率が約4倍に上がるという報告もあり、実際に欧米の患者さんの事例でも、糖尿病を併発した副腎皮質機能低下症の方は、全身状態が不安定で手術や治療が進められず、命に関わるケースが報告されています。
In a 2017 study, 68 patients with primary adrenal insufficiency and diabetes had an almost four times increased mortality rate compared with patients with diabetes alone.
Eystein S Husebye – Adrenal insufficiency
併発してしまった場合でも「それ以上進行させないこと」が予後を大きく左右するため、さらに厳しい管理が必要になります。であるならば、「併発する前に予防する」ことが、ずっと楽でメリットも大きいので、欧米では糖尿病併発の予防が強く意識されています。
糖尿病の予防は、コートリルを適量(プラマイゼロの量)に調整し、甘いものを控え、バランスの取れた食事と適度な運動を日常に取り入れることが大切です。また、HbA1cの検査では見逃されがちな血糖値スパイク(食後の急激な血糖値上昇)を防ぐことも重要※1と言われています。
正しい糖質制限
糖質制限は効果的な方法の一つですが、誤ったやり方では逆効果になることもあります。例えば、夕食時にお米を控える一方で、スイーツや甘いコーヒーを習慣化するのは間違った対策です。
お米(特に玄米や雑穀米)は、タンパク質・食物繊維・ビタミン・ミネラルが豊富で、スイーツに比べて低脂肪で栄養バランスの良い糖質です。お米は、筋肉の維持や体・脳のエネルギー源として重要で、運動や筋トレをする方々にとっても欠かせない栄養源です。
糖尿病と筋肉量
糖尿病のリスクを高めるのは体重そのものではなく、体内の組成です。筋肉量が少なく、体脂肪量が多い場合、体重に関わらず糖尿病のリスクが高まるとされています。
筋肉量が減少すると、グルコースの貯蔵能力が低下し、血糖値の急激な上昇や下降(血糖値スパイク)が起こりやすくなります。また、インスリン感受性が低下することで血糖値が上がりやすくなり、糖尿病のリスクも高まります。
一方、筋肉量を増やすことで、グルコースの貯蔵能力やインスリン感受性を向上させ、血糖値を安定させることができるので、糖尿病のリスク軽減も期待できます。副腎皮質機能低下症の場合は、血糖値のブレがコルチゾール値にも影響しますので、血糖値を安定させることで、体調も安定しやすくなるメリットがあります。
ステロイド治療を行う場合、副作用で筋肉量が減少しやすくなるため、適切な栄養摂取と適度な運動で筋肉量を維持することが、寿命や健康寿命に大きな影響を与えます。
筋肉量を増やす習慣は、糖尿病と診断された方にも有効※2です。筋肉量の増加は、血糖値管理に役立ち、糖尿病の進行や症状の悪化を防ぐために重要な役割を果たすそうです。
適度な運動
適度な運動(特に有酸素運動や筋力トレーニング)は、血糖を消費し、血糖値を安定させるのに非常に効果的です。ただし、運動は体内のコルチゾール値にも影響を与えるため、副腎皮質機能低下症の場合は低血糖になるリスクがあります。そのため、運動を行うタイミングや方法については、特に注意が必要です。
欧米の研究では、血糖値が安定しているタイミングで運動を行うことが推奨されます。
出典
- 血糖値スパイクを予防しよう ──糖尿病になる前に対策を! – 済生会
https://www.saiseikai.or.jp/medical/column/blood_sugar_spike/ - 糖尿病と筋肉の関係 – 東京高輪病院
https://takanawa.jcho.go.jp/wp-content/uploads/2016/12/8-3_kawamura.pdf
欧米のコミュニティや患者さんが執筆した書籍では、具体的で実践的な知恵がたくさん紹介されています。このブログでは、そのなかから「病院では教えてもらえない工夫」を学び、自分でも試して効果を感じられたこと、そして病気のメカニズムに関する理解を深めた内容を記録しています。
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読んでくださった方が、自分なりの工夫を見つけるヒントになればうれしいです。
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