Hintコートリル以外の治療法

副腎皮質機能低下症では、通常コートリル(ヒドロコルチゾン)を中心に、体内リズムを意識した補充が行われます。でも、処方された「そこそこの量」でも体調が整わず、結局頻繁に追加することになって困っている──そんな方も少なくないのではないでしょうか。

実際、欧米ではこのような状況に対応するために、プレドニン(プレドニゾロン)をごく微量だけ併用し、サーカディアンリズムをより忠実に模倣する方法を取り入れている患者さんもいらっしゃるようです。この工夫によって、体調が安定し、追加投与が減ったという報告もいくつか見られました。

資料[出典]Circadian Rhythm Dosing – Professor Peter Hindmarsh and Kathy Geertsma

コートリル中心が基本方針

副腎ホルモン補充では、基本的にはコートリル(ヒドロコルチゾン)を第一選択にするのが世界的な推奨です。なぜなら、コートリルは本来のコルチゾールと非常に似た作用を持ち、副作用リスクもプレドニンより低いからです。

ただ一方で、体質や代謝の違い、併用薬の影響などによって、コートリルだけではうまくリズムを模倣できないケースもあります。特に「コルチゾールの谷間」──例えば夕方や深夜にかけて──体調が落ち込みやすい方では、その谷の直前だけ、プレドニンをごく微量に置き換えるという工夫が行われることがあるようです。

なお、この「コルチゾールの谷が深くなるタイミング」は人それぞれ異なります。そのため、コルチゾール測定器を使ってモニターしたり、代わりに血糖測定器を活用して血糖値の推移からコルチゾール不足のサインを読み取ったりしながら、自分に合ったタイミングを見つけて、服薬計画を調整していく方法が取られているようです。

このように、あらかじめ谷を予測して先に整えておくことで、突発的な不調や追加投与を減らし、結果的に1日の総ステロイド量を抑えることにもつながるそうです。

資料

プレドニン微量併用のポイント
  • すべてをプレドニンに置き換えるわけではなく、コートリル中心を守りながら、一部だけプレドニンに置き換える
  • プレドニンは半減期が長く、血中濃度が緩やかに推移するため、リズムの補完に向いている
  • この方法を続けることで、結果的にコートリル単独の頃より総ステロイド量を減らせたケースもある

なお、論文の中には「プレドニンに完全に置き換えたケース」の報告もありましたが、臨床現場では副作用のリスクも考慮しながら、できるだけコートリルを主体にする方針が取られていることが多いみたいです。

[参考]Optimising prednisolone or prednisone replacement in adrenal insufficiency
[参考]Prednisolone Replacement Therapy Mimics the Circadian Rhythm More Closely Than Other Glucocorticoids

2025.4.29 掲載

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