Hint補充療法の落とし穴 必読

欧米の副腎皮質機能低下症のコミュニティでは、補充療法を開始して体調を安定させている方や、その延長線上で回復傾向にある方、すでに回復できた方の情報が共有されています。その情報を参考に、この病気を拗らせないための「補充療法の落とし穴」と「成功のポイント」を整理しました。

資料

※2025年8月現在、欧米の副腎皮質機能低下症のコミュニティには約15,000人が登録されており、運動を習慣にしている方は約4,920人、回復を目指して減薬に取り組んでいる方は約1010人、調整・減薬に取り組んでいる方は480人、論文ディスカッションに参加している患者・医師・研究者は約1,080人いらっしゃいます。

「甘いもの」「カフェイン」「甘草」「眠剤や安定剤」などを手放せない方や、小さな不調を薬で解決しようとして服薬が増えていく方は、どうしても体調が不安定になりやすく、補充量が増えてしまうケースも少なくありません。発症までには10年ほどかけてじわじわと進むこともありますが、その過程で糖尿病(あるいは予備軍)を指摘されたり、高血圧・骨粗鬆症・脳血管疾患を併発する方も見受けられます。

なので、できるだけ余計なものを体に入れないように意識することが大切です。

マイナスの時間の過ごし方

補充療法の限界と工夫にまとめていますが、コートリルを使ったコルチゾール補充療法は完璧ではなく、副作用の予防を優先して服用した場合、どうしても埋められない「マイナスの時間」ができてしまいます。そして、この時間をどのように過ごすかによって、体調の安定度や回復の可能性が変わってきます。

資料

[出典]Hindmarsh, Peter C.; Geertsma, Kathy. Replacement Therapies in Adrenal Insufficiency. Elsevier Science. Kindle.

自発がある場合

自発がある方は、この時間を自発でカバーできるように工夫したり、なるべく補充したコルチゾールを無駄に使わないように、活動量を落としながら過ごしています。また、適度な運動を取り入れる場合は、食事とコートリルを服用した少し後の安定している時間帯に、追加のコートリルなしで行う方がほとんどです。

自発がない場合

自発がない方が、この時間をコートリルで埋めようとすると、どうしてもベースの補充量が過剰になりやすく、副作用リスクも高まります。そのため、自発がある人以上に、甘いものとステロイドによる高血糖を予防したり、適度な運動で糖代謝を整えながら、合併症の予防に真剣に取り組み、なるべく最低限の補充で過ごせるように工夫している方が多い印象です。

自発がない方も含めて、欧米の患者さんは日本の患者さんよりも、病気を増やさないように努力して、比較的元気に過ごしている方が多い印象があります。日本の患者さんも、メカニズムを理解して工夫しながら過ごしていけば、自発がない方でも健康を保ちながら生活できるのではないかと思います。

補充量を増やす時のリスク

コルチゾールの需要が多くて一時的に増量する場合でも、増量したからといって副作用がゼロになるわけではありません。1回の増量による副作用リスクは低いものの、その状態が頻繁に続けば、副作用の可能性は高まっていくことを理解しておくことが大切です。

どのケースでも目指すゴールは共通で、健康な人のコルチゾール推移をできるだけ模倣することですね。

参考資料

Hindmarsh, Peter C.; Geertsma, Kathy. Replacement Therapies in Adrenal Insufficiency. Elsevier Science. Kindle.
https://amzn.asia/d/hOt2joJ


2025.8.21 掲載

欧米のコミュニティや患者さんが執筆した書籍では、具体的で実践的な知恵がたくさん紹介されています。このブログでは、そのなかから「病院では教えてもらえない工夫」を学び、自分でも試して効果を感じられたことを記録しています。副腎皮質機能低下症のメカニズムに関する情報は「Note」へ、参考になった情報は「Hint」へ、その他の情報は「Misc」にまとめています。読んでくださった方が、自分なりの工夫を見つけるヒントになればうれしいです。

※医療も翻訳も素人で、コメントも個人的な感想・見解です。