欧米のコミュニティの方々の情報から、最近の研究でACTH刺激試験のコルチゾールの基準値(カットオフ値)が見直されていることを知り、気になったので「自由研究」として詳しく調べてみました。
なぜ基準値が変わるの?
新しい免疫測定法やLC-MS/MSでは、従来の測定法よりもコルチゾールを特異的に測定できるようになっています。
一方、従来の免疫測定法では、コルチゾール以外の似た構造をもつステロイドにも反応する「交差反応」によって、コルチゾール値が高めに測定されることがありました。より特異性の高い測定法では従来法より低い値が出ることがあり、これまで広く使われてきた18μg/dLという基準値を、そのまま当てはめるのは適切ではない可能性が指摘されています。
| 測定法 | 何を検出する? | 特徴 |
|---|---|---|
| 従来の免疫測定法 | コルチゾール+類似した物質も拾うことがある | 交差反応により、コルチゾール値が高めに出ることがある |
| 新しい免疫測定法 | コルチゾールをより選択的に検出 | 交差反応が少なく、従来法より低い値になることがある |
| LC-MS/MS(質量分析法) | コルチゾールを分子の性質から識別 | 免疫測定法のような抗体の交差反応を受けず、特異性が高い |
新しいカットオフ値の提案
こうした測定法の変化にあわせて、ACTH刺激試験のカットオフ値についても見直しが進んでいます。2021年の研究では、従来の18μg/dLに代わり、使用する測定法に応じて「14〜15μg/dL」というカットオフ値が提案されています。
また、「Abbott Architect」という測定法を検討した2022年の研究では、ACTH刺激60分後のカットオフ値として「14.6μg/dL」が提案されています。つまり、「18μg/dLから一律に14〜15μg/dLへ変更する」ということではなく、使用する測定法に合ったカットオフ値で判断する必要があるということです。
患者さんが知っておくべきこと
以前「測定方法の違い」でも書いたことですが、ACTH刺激試験の結果を判断する際には、以下の点を知っておくことが大切だと思いました。
- 使用される測定法によって、適切なカットオフ値が異なる可能性があること
- 測定法によって、コルチゾール以外の似た物質を拾う「交差反応」の程度が異なること
- ACTH刺激試験の結果は、使用された測定法と、それに対応するカットオフ値をあわせて判断する必要があること
検査結果については主治医の先生とよく相談し、必要に応じて追加の評価を受けるのが良さそうです。
参考資料
New Cutoffs for the Biochemical Diagnosis of Adrenal Insufficiency after ACTH Stimulation using Specific Cortisol Assays – 2021 Feb 18
https://academic.oup.com/jes/article/5/4/bvab022/6142947
ACTH Stimulation Test for the Diagnosis of Secondary Adrenal Insufficiency: Light and Shadow – 2023 Mar 15
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10045406/
New Diagnostic Cutoffs for Adrenal Insufficiency After Cosyntropin Stimulation Using Abbott Architect Cortisol Immunoassay – 2022 July
https://www.endocrinepractice.org/article/S1530-891X(22)00481-5/abstract
日本内分泌学会雑誌(2024年100巻)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/endocrine/100/1/100_149/_pdf/-char/ja