Note副腎不全の補充療法の書籍 重要
欧米のコミュニティで副腎皮質機能低下症の専門書を紹介していました。2024年3月時点で最新の情報から、原因・メカニズム・補充療法・薬物相互作用・緊急時の対応などのすべて情報を、病状別(アジソン病・下垂体機能低下症・先天性副腎低形成・副腎摘出)に解説してある唯一の書籍だそうです。
ちょっとお高いので購入するか迷っていて、まずはサンプル版を読んでみました。
概要
Peter C. Hindmarsh(内分泌医)とKathy Geertsma(患者家族)の副腎不全の補充療法の書籍「Replacement Therapies in Adrenal Insufficiency」という本で、Amazonでも購入可能です。
著者のPeter C. Hindmarshは、ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンの小児内分泌学教授、ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン病院とグレート・オーモンド・ストリート小児病院の小児内分泌学と糖尿病のコンサルタントをされているそうです。Kathy Geertsmaは先天性副腎過形成を持つ子供の親として、家族のサポートグループの議長をされていて、適切な治療を受けるのに苦労している世界中の患者や患者家族と広いネットワークがあり、患者視点のユニークな意見を提供しているそうです。
Peter C. HindmarshとKathy Geertsmaは、2017年の5月に先天性副腎過形成症の専門書「Congenital Adrenal Hyperplasia: A Comprehensive Guide」を執筆しています。その内容の一部が、続発性副腎皮質機能低下症のコミュニティでも参考にされていて、書籍にも多数の高評価とフィードバックがあった事を受けて、今回の書籍は副腎皮質機能低下症のすべての人に適用する情報として執筆されたそうです。
構成
全内容は16章の構成になっていて、第3章の「ステロイドとは」まではAmazonのサンプルで読む事ができる様です。
第1章「副腎不全」
第2章「コルチゾール分泌の生理学」
第3章「ステロイドとは」
第4章「副腎不全に使用される生化学的検査」
第5章「副腎不全の原因を確定するための検査」
第6章「薬理学の原則」
第7章「適量の補充が重要な理由」
第8章「副腎不全に関連する問題」
第9章「グルココルチコイドの投与」
第10章「補充療法のモニタリング」
第11章「概日リズムを模倣するポンプ療法」
第12章「ストレス・シックデイ・手術時の投薬」
第13章「補充療法と他のホルモンとの相互作用」
第14章「ナトリウムと水のバランス」
第15章「減薬について」
第16章「慢性医療と副腎不全」
サンプル版の感想
この本は、コルチゾール補充療法を念頭に置いて書かれており、副腎不全のすべての患者に適用できる可能性があります。また、副腎クリーゼの概要や、補充量の不足や過剰によって引き起こされる短期的・長期的な副作用についても解説されています。
この分野の知識や最善の方法は絶えず変化しているため、研究方法や専門的な実践、治療方法の変更が必要になると言われています。
日本の副腎皮質機能低下症の医療も、こうした変化とともにアップデートされていくはずですが、10年単位のタイムラグが発生することもあります。そのため、欧米の情報を参考に知識を蓄え、変化に対応できるよう準備しておくことが重要だと感じました。
コルチゾールの概日リズムを完全に模倣するためにポンプを使用すると、他のホルモンの正常化にもつながるそうです。副腎不全があっても、体の生理機能自体が変わるわけではないため、補充療法を患者の代謝に合わせることがポイントだとされています。
第1章「副腎不全」では、診断・原因特定・補充療法の投与と評価について解説されています。第2章「コルチゾール分泌の生理学」では、補充量の不足や過剰が短期的(24時間以内)に引き起こす問題について触れています。第3章「ステロイドとは」では、最適なコルチゾール補充療法や日々の体調管理方法、18時以降に服用しないほうが賢明な理由、水とナトリウムのバランスの重要性、補充療法の減薬について解説しています。
[出典]Replacement Therapies in Adrenal Insufficiencyサンプル版
第2章の「補充量の不足や過剰で短期的に直面する問題」には、「血糖値の乱れがコルチゾールの無駄遣いにつながる」というメカニズムも説明されており、「低血糖」だけでなく、「血糖値が正常範囲内で急速に低下した場合=血糖値スパイク」でもコルチゾールが分泌される(=コートリルが必要になる)ということが解説されていました。
また、コルチゾール産生における重要な「概日リズム」は、睡眠だけでなく光と闇のサイクルに合わせて変化していること、さらに健康な人でも夕方のコルチゾール値は低いものの1.8mg/dLを下回ることはほとんどないため、夜間にもある程度のコルチゾール補充が必要であることが説明されていました。
さらに、シックデイにおいては、呼吸器感染症(上下気道炎)の場合、24時間にわたって28〜43mg/dLのコルチゾールが必要になることや、コートリルを3倍量服用しても、血中のコルチゾール濃度はかろうじて2倍にしかならないことも説明されていました。
[出典]Replacement Therapies in Adrenal Insufficiencyサンプル版
その他、CYP450やコルチゾール結合グロブリン(CBG)、アルブミンの影響についても記載されており、甘草がコルチゾールをコルチゾンに変換するのを妨げ、さらにコルチゾールの排出を阻害するため、避けるべきであることが説明されています。また、甘草製剤に含まれるグリチルリチン酸の影響により、高血圧や低カリウム、代謝性アルカローシスだけでなく、時には致命的な不整脈を引き起こすこともあるとされています。さらに、ACTH産生が不足すると、副腎からのコルチゾール産生が減少し、副腎萎縮が起こることも記載されています。
専門的な内容をすべて解読するのは時間が必要ですが、結論は今まで言われていた通り「補充量の調整・不要な薬の精査・血糖値をなだらかに保つ・シックデイは2倍量まで」で、自発コルチゾールを失わないように、残存している機能を維持する事がベストという事でした。
これらの内容は、欧米のコミュニティでは既出なので、Noteや診断された方へ にもまとめています。
サンプル版だけでもなかなか読み応えがあり、欧米の副腎皮質機能低下症の患者さん達のお墨付きでもありますので、私も購入して読んでみようと思っています2024.4.20購入してみました。また別途まとめ記事を作ります。
ご興味がある方・詳細を知りたい方も、購入して全文を読んでみる事をお勧めします。
国内外の情報や論文・コントロール良好な方の体験談などから見つけた情報を集めています。副腎皮質機能低下症のメカニズムに関する事は「Note」へ、体験談やヒントなどは「Misc」に記録しています。
※医療も翻訳も素人で、コメントも個人的な感想・見解である事をご了承ください。