Note回復の可能性についての論文

数値がなぜ回復したのか、この状態が維持できるのかといった情報を探している中で、欧米のコミュニティで「続発性副腎皮質機能低下症の一部は回復する・回復した」という情報を見かけました。そこで、具体的にどのような状況で回復の可能性があるのかを調べてみました。

Gradual steroid withdrawal over several months allows many individuals to regain adrenal function. The standard cosyntropin (ACTH1–24) stimulation test can be used to assess the chance of hypothalamic–pituitary–adrenal axis recovery.

Eystein S Husebye – Adrenal insufficiency

欧米では、続発性副腎不全の一部のケースで、回復の可能性を考慮した補充療法と経過観察を行っているようです。併用する薬剤や物質の影響により、コルチゾール値が「実際に低くなる」「実際に高くなる」「低く見える(実際には正常)」「高く見える(実際には正常)」といった可能性を考慮しながら、適切な判断を下すことで回復が見込める場合もあるようです。

The Short Synacthen (Corticotropin) Test Can Be Used to Predict Recovery of Hypothalamo-Pituitary-Adrenal Axis Function – Published: 25 May 2018によると、可逆的な原因で副腎機能不全を発症した患者※1において、ACTH負荷試験の30分後のコルチゾール値が12.7μg/dL前後の回復率が最も高く、12.7μg/dL以上のケースでは99%が4年以内に回復し、それ以下のケースでも49%が回復したことが示されています。

また、ステロイド治療歴のある患者において、デルタコルチゾール値(ピークとベースの差)が3.6μg/dL以上の場合、95%が4年以内に回復し、デルタコルチゾール値が3.6μg/dL未満で、その後1年間のランダムコルチゾール値(朝9時〜12時、最後の補充から18時間後)が7.3μg/dL未満だった患者は、回復しない可能性が高いことが示されています。

  1. 対象は、下垂体手術の術後・下垂体腺腫(非機能性・手術なし・放射線療法なし)・その他の中枢神経系腫瘍・その他の下垂体疾患(下垂体炎を含む)・副腎疾患(片側副腎摘出・腺腫・癌を含む)・ステロイド治療歴(局所・鼻・吸入・経口・筋肉・静脈)・その他の適応症(自己免疫疾患・低ナトリウム血症・嘔吐・体重減少・高カリウム血症・低血糖・低血圧・虚脱・疲労)で、アジソン病・先天性副腎過形成症・副腎腫瘍で放射線治療を受けた患者・両側副腎摘出術を受けた患者は除外されています

[出典]The Short Synacthen (Corticotropin) Test Can Be Used to Predict Recovery of Hypothalamo-Pituitary-Adrenal Axis Function – Published: 25 May 2018

2018年に行われたこの研究では、ACTH負荷試験の30分後のコルチゾール値と、1年間のランダムコルチゾール値の評価を組み合わせることで、副腎機能が回復する可能性が高い人と、回復しない可能性がある人を正確に予測できることが報告されています。

全体として、最初にACTH負荷試験に不合格だった患者のうち37%、非機能性の下垂体腺腫の57%、下垂体手術後の患者の44%が最終的にACTH負荷試験に合格していることからも、続発性副腎皮質機能低下症の可逆性に現実的な可能性があることを示唆しているそうです。

別の論文では、コルチゾール補充療法を継続中の患者51例のうち、9例(17.6%)が8〜51ヶ月の期間で完全に回復したという報告や、続発性の患者の約6人に1人が、診断から5年を経過しても副腎機能が回復しているという報告があります。

欧米の副腎皮質機能低下症のコミュニティの投稿でも、ライフスタイルの改善・薬・サプリ・食べ物・日用品の見直しによって体調が改善し、治療や回復のスタートラインに立てたという情報が見られます。診断から長期間経過していても、状態を良くする為に出来る事は沢山あるのかもしれません。

[出典]The Short Synacthen (Corticotropin) Test Can Be Used to Predict Recovery of Hypothalamo-Pituitary-Adrenal Axis Function – Published: 25 May 2018(※日本語訳は参考までに)

2018年時点では、欧米でも回復を評価する手法や時期についてコンセンサスが取れていなかったようですが、これらの研究結果を通じて、続発性の患者には定期的な検査と回復の評価を行うことが推奨されているそうです。

回復の可能性を示す指標のひとつであるランダムコルチゾール値を、国内の病院で受診日の採血時に測ってもらうことは、それほど難しいことではないと思います。

ただ、正確に評価してもらうためには、ACTH負荷試験と同様に、採血の前日の14時以降はコートリルを服用しないこと、誘導薬と阻害薬(CYP450)コルチゾール結合グロブリン(CBG)を考慮すること、コルチゾールに影響する成分は6週間前から中止する必要があるとされています。

回復の為に正確な判断をしてもらう為にも、継続している補充量峰の適量模索を成功させる為にも、なるべく薬の精査ができると有利なので、まずはライフスタイルを見直し、治せる持病は治し、多重服用にならない様にする事が大事だと思っています。

[出典]The Short Synacthen (Corticotropin) Test Can Be Used to Predict Recovery of Hypothalamo-Pituitary-Adrenal Axis Function – Published: 25 May 2018
[出典]Recovery of adrenal function after chronic secondary adrenal insufficiency in patients with hypopituitarism – First published: 29 February 2016
[出典]Residual endogenous corticosteroid production in patients with adrenal insufficiency – Published online 2019 Jun 20


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