闘病のフェーズ
欧米のコミュニティでは、副腎皮質機能低下症の闘病を、いくつかのフェーズに分けて整理されていました。
- 診断までの道のり
- まずは体調を安定させる時期
- 最適な維持量を見つける時期
- 調整後の課題と向き合う時期
私が診断された頃の日本では、2番目の「体調を安定させる」段階で試行錯誤を続けている方が多い印象でしたが、最近は4番目のフェーズまで進むケースも少しずつ見かけるようになり、診断当初から頓服でコントロールする患者さんも増えてきたように感じています。
とはいえ、最初の2番のフェーズがうまくいかないと、3番の「調整」には進みにくく、病態によっては2番までで止まってしまうこともあるようです。なので、自分が今どのフェーズにいるのかを意識しながら、段階に合った情報やケアを取り入れていくことが大切だと思っています。
調節が重要な理由
「Peter C. Hindmarshの副腎不全の補充療法の書籍」や「Husebyeの副腎皮質機能低下症の論文」や「Daily Glucocorticoid Replacement Dose in Adrenal Insufficiency, a Mini Review」など、近年の欧米の文献では、補充療法の調整や減薬の重要性が繰り返し述べられています。実際の医療の現場でも、こうした考え方に基づいた治療が少しずつ広がってきているそうです。
また、日本でも2024年3月に行われた「下垂体の市民公開講座」では、維持期の補充量の調整が重要と解説されていて、国内の医療にも欧米の最新情報が少しずつ反映されつつあるように感じています。
少し前の日本では、副作用が出てから調整するという「後手」の対応が主流だった印象です。でも、そのやり方では、ブログ記事「補充療法の漸減アプローチ」で紹介しているMini Reviewの内容にもあるように、糖尿病・骨粗鬆症・心血管疾患など、不可逆的な状態に進んでしまうリスクがありました。
最近診断された方は、こうした情報が医療側にも少しずつ共有されるようになってきたことで、以前に比べて副作用を考慮した投薬計画を立ててもらえるケースが増えてきているように感じています。
予後について
一部の続発性副腎皮質機能低下症では、うまくいけば頓服や断薬の段階まで進めるケースもあるようです。そこまで進まない場合でも、補充量が過剰にならないよう気をつけながら、残っている自発機能をできるだけ温存して、副作用の少ない元気な予後を目指していくことができると言われています。
副腎皮質機能低下症の原因がはっきりしないケースや、過去に少量でも経口・吸入・点鼻などでステロイドを使用していた方、ベンゾジアゼピンの服用歴がある方、またその他の薬の影響でコルチゾール値が実際とは異なって見えている方などは、現在の日本の医療体制では、回復の可能性に十分に気づいてもらえないこともあるかもしれません。
いずれの場合でも、コートリルだけに頼らず、できるだけプラマイゼロの服用で体調を維持しながら、定期的に採血でコルチゾールの値を確認していれば、回復の兆しに気づいてもらえる可能性もありますし、結果的に健康的な予後につながることもあると思います。
診断された方に読んでほしい概要は「診断された方へ」に、副腎皮質機能低下症やコルチゾール関連の事はNoteとMiscにまとめています。