Noteガイドライン2023年版 国内

日本内分泌学会雑誌(2023年99巻)の「間脳下垂体機能障害と先天性腎性尿崩症および関連疾患の診療ガイドライン2023年版」の「ACTH分泌低下症の診断と治療の手引き」と「ACTH分泌低下症」の部分に目を通してみました。

資料の45ページの「ACTH分泌低下症の診断の手引き」には、主症候・検査所見・除外規定・診断基準がまとめられていて、除外規定には、ACTH分泌を低下させる薬剤投与を除く事と、注射薬・内服薬・外用薬・関節内注入薬だけではなく、吸入薬や点眼薬なども記載されていました

その他、一部の症例では血中ACTHは正常・軽度高値を示す事や、生物活性の乏しいACTHが分泌されている可能性や、血中コルチゾール値に関しては約10%の測定誤差を考慮して判断する事、視床下部性ACTH分泌低下症の場合は、CRHの1回投与でACTHは正常〜過大反応を示すことがあるが、コルチゾールは低反応を示す事が書かれていました。

資料の46ページの「ACTH分泌低下症の治療の手引き」には、血中ACTH濃度は治療効果の指標にはならない事や、治療に際しては、少量(ヒドロコルチゾンとして5〜10mg/日)から開始し、最初は1〜2週の間隔で経過を観察する事などが書かれていました。

注意点には、シックデイには「2〜3倍に増加する」という記載になっているものの、服用は3分割投与が望ましい※1事も書かれていました。

  1. コルチゾール結合グロブリン(CBG)の影響で、コートリルは3倍量にしたところで、余分に摂取したコルチゾールが尿中に排出される為、血液中のコルチゾールのレベルが3倍になるわけではないという理論からも、欧米のガイドラインは2倍量が目安になっていて、「1日の2倍量を一度に飲む」ではなくて「24時間かけて2倍にする」事で、効率的にコルチゾールを活用できるという事の様です。

診断と治療の手引き

資料の132ページの「ACTH分泌低下症」には、ACTH分泌低下症でステロイド補充療法を受けている場合の予後や死亡リスクについて書かれていて、ACTH分泌低下症の患者のヒドロコルチゾンの補充投与量が高用量とならないよう配慮することが提案されていました。

ACTH分泌低下症

コートリルの服用は、少ければ少ない方が生命予後が良く、できれば5〜20mg/day以内にする事がベスト(コートリルの追加が頻繁な場合は、服薬した合計で)といった感じでしょうか。

その他、意識不明時の連絡先、グルココルチコイド注射の必要性、主治医の連絡先を書いた副腎不全カードを常に携帯するように書かれていました。

文献検索

引用されていた文献

このガイドラインで引用されていた欧米の4つの論文も見つけたのでリンクしています。

Tomlinson JW, et al. Lancet 2001; 357: 425–31.
Sherlock M, et al. J Clin Endocrinol Metab 2009; 94: 4216–23.
Burman P, et al. J Clin Endocrinol Metab 2013; 98: 1466–75.
Hammarstrand C, et al. Eur J Endocrinol 2017; 177: 251–6.

[出典]日本内分泌学会雑誌 – 間脳下垂体機能障害と先天性腎性尿崩症および関連疾患の診療ガイドライン2023年版


国内外の情報や論文・コントロール良好な方の体験談などから見つけた情報を集めています。副腎皮質機能低下症のメカニズムに関する事は「Note」へ、体験談やヒントなどは「Misc」に記録しています。

※医療も翻訳も素人で、コメントも個人的な感想・見解である事をご了承ください。