Note低血糖の予防と対処法 重要
欧米のコミュニティで話題になっている、Peter C. Hindmarsh(内分泌医)とKathy Geertsma(患者家族)の副腎不全の補充療法の書籍「Replacement Therapies in Adrenal Insufficiency」(2024年3月29日に出版)にも、「副腎機能不全において最も重要なことは、低血糖の発生を防ぐように努めることです。」とはっきりと記載されています。
The most important thing in adrenal insufficiency is to try and prevent the occurrence of hypoglycaemia.
Hindmarsh, Peter C.; Geertsma, Kathy. Replacement Therapies in Adrenal Insufficiency (p.175). Elsevier Science. Kindle.
低血糖に加えて、血糖値が正常範囲内でも急激に低下した場合(血糖値スパイク※1)も、概日リズムによる正常なコルチゾール生成に影響を与える要素とされています。
- 食後2時間の血糖値が140mg/dL以上、または食前から60mg/dL以上の急上昇をした場合は「血糖値スパイク」で「糖尿病予備軍」と呼ばれていて、何度も繰り返すと血管が傷つき、動脈硬化を促進させ、放置すると脳卒中や心筋梗塞を引き起こす恐れもあるそうです。
Another situation where the normal cortisol production through the circadian rhythm can be altered, is in hypoglycaemia (low blood glucose), or if blood glucose falls rapidly within the normal range.
Hindmarsh, Peter C.; Geertsma, Kathy. Replacement Therapies in Adrenal Insufficiency (p.36). Elsevier Science. Kindle.
低血糖や血糖値スパイクは、コルチゾールが無駄に消費されるだけでなく、もともとコルチゾールを十分に生成できない状況では、さらにコルチゾールの減少が進み、アドレナリンの生成も阻害されます。この二重の影響により、副腎機能不全の人はさらに低血糖を発症しやすくなるとされています。
Now not only has the individual lost cortisol, which they could not make anyway, but because of this loss of cortisol the production of adrenaline is also impaired. This double hit leaves the individual with adrenal insufficiency very susceptible to developing hypoglycaemia.
Hindmarsh, Peter C.; Geertsma, Kathy. Replacement Therapies in Adrenal Insufficiency (p.175). Elsevier Science. Kindle.
この負のループを繰り返すことで、ますますコントロールしにくい体質になってしまうので、低血糖を起こさないように予防することが非常に重要です。そのための予防と対処法を以下にまとめました。
先手で予防する方法
低血糖が起こる前に、日常から予防することが重要ですが、その予防法は「バランスの良い食事からの栄養で血糖値を保ち、低血糖を防ぐ」という積み重ねが基本です。糖質だけに頼らず、タンパク質を取り入れて血糖値を安定させることも大切です。
もし、朝昼夜の食事だけで低血糖が起きてしまう場合は、4分食や10時と3時のタイミングで補食を摂り、血糖値をなるべくなだらかに保つことが重要です。最終的には、補食を徐々に減らしても体調を維持できるようにすることが目標です。
後手の間違った方法
糖尿病でインスリンを使用している場合を除き、軽い低血糖(生命に関わらないレベル)が起きるたびに、甘いものを摂ってごまかす対策や、ちょこちょこスポーツドリンクや甘いものを摂って血糖値を保とうとする対策は「予防」ではなく「応急処置」です。
この応急処置を日常的に繰り返したり、過剰な補食を続けていると、インスリン抵抗性※2を引き起こし、糖尿病のリスクが増加(糖尿病の場合は悪化)したり、糖分過多で肥満になったり、逆に血糖値スパイクを引き起こしやすくなり、結果的にコントロールしにくい体質になる可能性があるそうです。
- インスリン抵抗性とは、体の細胞がインスリンに対して鈍感になる状態を指します。インスリン抵抗性が生じると、細胞がインスリンに反応しにくくなり、血糖値が上昇しやすくなります。進行すると、体が血糖値を適切にコントロールできなくなり、2型糖尿病に発展するリスクが高まります。
緊急時の応急処置
生命に関わる低血糖が起きた場合は、ブドウ糖10gか、ブドウ糖を含む飲み物を150~200ml摂取して回復させます。洋菓子やチョコレートは油分が多く、胃腸の動きを遅くしてしまうため、糖分が速やかに吸収されず、血糖値が上がるまでに時間がかかります。そのため、緊急時には不向きで、効かないと感じて量を増やしてしまうと、逆に血糖値スパイクを引き起こす可能性もあります。
国内外の情報や論文・コントロール良好な方の体験談などから見つけた情報を集めています。副腎皮質機能低下症のメカニズムに関する事は「Note」へ、体験談やヒントなどは「Misc」に記録しています。
※医療も翻訳も素人で、コメントも個人的な感想・見解である事をご了承ください。