Noteオンライン医療講演会 国内
2024年12月21日(日)16時から行われた「間脳下垂体機能障害の各疾患の病態と治療に関して」のWeb配信を視聴しました。
内容は、ホルモンの基本的な役割から下垂体機能異常によって起こる各疾患、そして近年の治療の進歩までを広く整理したものでした。講演全体を通して印象に残ったのは、複数のホルモンが低下している症例であっても、補充療法が適切に行われていれば副腎クリーゼを起こさず、安定した経過をたどっているという点でした。ホルモン異常は診断までに時間がかかることも多く、非特異的な症状のために見逃されやすい側面がありますが、医療の発展によって「見つかればコントロールできる」疾患になってきていることを、あらためて実感する内容でした。
ここからは、講演内容の中でも特にコルチゾール補充療法に関する部分に焦点を当てて整理してみます。
コルチゾールというホルモンの位置づけ
講演の中では、クッシング病の説明を通して、コルチゾールがどのようなホルモンなのかがあらためて整理されていました。コルチゾールは、単に「ストレスのホルモン」というだけではなく、朝に分泌が高まることで目を覚まし、1日の活動を始めるスイッチのような役割を担っています。一方で、コルチゾールが慢性的に高い状態が続くと、いわゆるクッシング症状が出現します。代謝は乱れ、糖代謝にも影響が及び、インスリンが出にくくなることで血糖コントロールが悪化します。この「多すぎると確実に困る」という側面は、コルチゾール補充療法を考える上で重要な前提だと感じました。
検査値のヒント
講演の中では、朝のホルモン状態を考える際の一つの目安として、ACTHは20pg/mL程度、コルチゾールは7.2μg/dL程度という数値が示されていました。これは補充量を決めるための基準ではなく、補充を行っていない健康な人における朝のホルモン環境をイメージするための指標として提示されていたものです。補充療法では、この数値を再現すること自体が目的になるわけではありませんが、こうした健康な状態で見られる数値があることを知っておくことは、回復を考える際の目安のひとつになるように感じました。
症例からのヒント
症例として紹介されていた多数ホルモン低下症の患者さんは、これまで一度も副腎クリーゼを起こしておらず、補充療法を継続することで10年以上にわたり安定した経過をたどっていると説明されていました。複数のホルモンが低下している状態であっても、必要な補充が適切に行われていれば、必ずしも不安定な経過になるわけではないことが、長期経過を通して示されていました。
また、重症成人成長ホルモン分泌不全症については、身体的な変化だけでなく、脂肪肝や倦怠感、骨密度の低下、集中力や認知機能の低下など、全身への影響が生じうることが説明されていました。一方で、成長ホルモン補充を開始することで、これらの所見が改善し、QOLの向上とともに長期的にも安定した予後が得られている症例が示されていました。
質問への回答から見えた補充療法の考え方
質問への回答では、副腎皮質機能低下症、特に続発性で自発分泌が残っているケースに対する、コルチゾール補充の具体的な工夫が紹介されていました。追加でコートリルを服用する際は1錠単位ではなく、体調や状況に応じて少量を使うという発想が示されていました。食後に服用すると血中濃度がなだらかに上がり、比較的長く効果が持続しやすい一方、空腹時に服用すると血中濃度は早く上がりますが、効果は長く続きにくいという特徴があります。
そのため、強い不調を感じたときには、空腹時に2.5mgや5mgといったごく少量で指示をしていて、まずは2.5mgから試してもらうという考え方が紹介されていました。数日間2.5mgを空腹時に増量しても、発熱などで不調が解決できない場合は、受診して医師の指示を仰ぐと説明されていました。あと乗せの追加については個人差が大きく、一概に決められるものではありませんが、シックデイまで行かない不足時に「空腹時に2.5mg」という飲み方であれば飲み過ぎになりにくく、実際にはさらに少ない量の1.25mg(1/8錠)単位で調整しているケースもあるとのことでした。
コートリルの足し方
2025.12.22 追記「空腹時に2.5mgという飲み方であれば、飲み過ぎになりにくく、自発も残しやすい」という話は、こういうことだと受け取っています。追加=量の問題ではなく、設計の問題なんですね。

欧米では、こういうメカニズムが周知されているので、「シックデイ以外の微調整」は、1.25〜2.5mgが一般的で、それでもダメな時でも5mgくらいでコントロールしている人がほとんどです。もちろん、足さずにコントロールできるのが一番ではありますし、シックデイの時は「シックデイ・ルール」で対応が必要ですが、日常の微調整はこの範囲で十分できる人も多いってことなんだと思います。
副腎皮質機能低下症のメカニズムに関する情報は「Note」へ、補充療法のヒントは「Hint」へ、その他の情報は「Misc」へ、メッセージ経由でいただいた質問の一部は「FAQ」にまとめています。読んでくださった方が、自分なりの工夫を見つけるヒントになればうれしいです。
※体験をもとに整理した内容であり、医学的助言を目的としたものではありません。医療に関する判断を行う際は、必ず医師にご相談ください。
