Note下垂体ミニレクチャー 国内
以前、下垂体の市民公開講座を開催された「下垂体患者の会」の顧問の先生による会員限定ミニレクチャーが、対面とオンラインのハイブリッドで開催されました。その中の「ホルモン補充療法中の薬服用における注意点」からコルチゾール補充療法に関する部分を中心にまとめてみました。
体内における薬剤の流れ
コートリルは、小腸→肝門→肝臓→上脈→心臓(右)→肺→心臓(左)→大動脈→動脈循環→全身という流れで体が使えるようになる事が解説されていて、以前まとめていたコートリルの利用能の答え合わせになりました。
血中半減期と生物学的半減期
補充療法は、健常者の日内変動を再現しようとしていますが、朝と午後のコートリルの服用では、特に朝4時のコルチゾールが増え始めるタイミングが模造できないので、もし早めに目覚めた場合は、朝4時頃に服用しても良いそうです。
日内変動と補充量のイメージ(=参考)
日本にはまだ採用されていませんが、欧米で導入済の徐放型ヒドロコルチゾン(日内リズムを再現できる経口コルチゾール)の導入が検討されているそうです。
軽度の副腎皮質機能低下症でも、自発が残っているケースの場合は、朝1回の5〜10mgでも体調維持できる事も話されていました。
副腎皮質ステロイド
コートリルの服薬は、薬物動態(吸収・分布・代謝・排泄)やCYP3A4誘導薬と阻害薬(CYP450)による促進・阻害・作用増強を考慮する事が大事というお話で、以前まとめていた誘導薬と阻害薬(CYP450)の答え合わせになりました。
このレクチャーで取り上げられていたのは、抗結核剤(リファンピシン)との併用で半減期短縮させる事、成長ホルモンとの併用で11BHSD-1が減弱する事、抗けいれん剤(フェニトイン・カルバマゼピン・バルプ口酸など)との併用で作用減弱する事、ジルチアゼム・シメチジン・フルオキセチンとの併用で代謝遅延する事、エストロゲンとの併用で、CYP3A4の阻害やコルチゾール結合グロブリン(CBG)増加の影響がある事などでした。
場合によっては服薬の時間を2時間程ずらす対処が有効な場合もあるそうですが、半減期が長い薬の場合は難しいそうです。
質疑応答
グレープフルーツとの併用はCYP3A4への影響がある事や、甘草(グリチルリチン)との併用はカリウムを下げる可能性がある事、マクロライド系の抗菌剤との長期併用は、やはり服薬量の調整が必要と回答されていました。
また、以前Xのポストにも投稿した様に、女性ホルモンは経口ではなく経皮を勧めるそうです。
薬物動態・体質・併用している薬の影響を考慮した場合、同じ身長・体重でも、15mg/dayが適量の人・過量の人・不足の人が存在する一方で、今の医学では適量を確認するマーカーが無く、やはり体感や副作用の有無だけを頼りに調整するしか無い様です。
また、日本ではコートリル錠は10mgの一択ですが、経済的事情からも5mg錠が出る予定はなく、1/4カットの2.5mg単位で調整する方法や、小児科での処方の様に、粉で1mg単位の調整をする方法しかないとの事でした。
コートリルと他の薬剤の併用については、大きな影響があるかどうかは、その患者の体質によって違うので、新たな処方や薬剤の変更があった時に、影響を考慮した補充量の調整をするという対応で良いという見解でした。
ただ、併用した事でコルチゾールが全然足りなくなったというレベルでは無くても、併用の影響で体調不良になる事はあるというコメントだったので、謎の体調不良時の服薬チェック※1や、日常から注意できる余裕のある方は、体調を整える手がかりになる事もあるのかもしれません。
- 救急搬送された患者にも服薬している薬のヒアリングを行なっていて、その理由は既往症の把握だけではなく、薬物相互作用からの体調不良を把握する為だそうです
以前Xのポストにも投稿した大塚製薬の情報の、弱い阻害剤に分類されるシメチジンも今回リストされていたので、コートリル服用時に併用する場合は、ネキシウムカプセル・タケキャブ・タガメットではなく、ファモチジンにしようと思っています。
[出典]CYP3A4薬剤一覧
かかりつけ薬剤師に質問する為に、自分でも調べてみたところ、ファモチジンの方がCYP3A4阻害作用が低そうですが、薬剤師さんからの回答をいただいたら追記しようと思います。2024.7.18追記薬剤師さんから回答がありました。CYP3A4に影響しない胃薬(制酸剤)はファモチジンだそうです。なのでコートリルを服用した時に飲むなら、ファモチジンにしようと思います。
国内外の情報や論文・コントロール良好な方の体験談などから見つけた情報を集めています。副腎皮質機能低下症のメカニズムに関する事は「Note」へ、体験談やヒントなどは「Misc」に記録しています。
※医療も翻訳も素人で、コメントも個人的な感想・見解である事をご了承ください。