Noteガイドラインの補足文献 国内
数年前の情報になりますが、2016年に発行された日本内分泌学会の「副腎不全の診断と治療ガイドライン」の補足事項が、別途英文で公開されていて、その中にCYP3A4についての記述もされていたので、主要な部分だけまとめてみました。
Abstractには、副腎不全の診断と治療ガイドラインの日本語版はすでに出版されており、重要なポイントはこの英語版にまとめています(The Japanese version has already been published, and the essential points have been summarized in this English language version.)と記載がありました。
CYP3A4について
資料の769ページのI-3.5には、コートリルと併用する他の薬剤との干渉により薬効が十分に認められない場合は、コルチゾール補充量を変更することを推奨します(We recommend changing the dose of Cortril® when the drug effect is not fully observed because of interference between Cortril® and other drugs used concomitantly.)と記載されていました。
CYP3A4などの薬物代謝酵素を誘導する薬剤(リファンピシン・フェニトイン・フェノバルビタール・カルバマゼピン・バルプロ酸・プリミドン・エトスクシミドなどの抗てんかん薬・ピオグリタゾンなどの抗低血糖薬・ミトタンなど)は、HC(ヒドロコルチゾン)の効果を減弱する可能性があるそうです。
エストロゲンもコルチゾール結合グロブリン(CBG)を増加させて、血清コルチゾール値の上昇につながる薬剤ですが、通常はコルチゾール補充量を増やす必要は無いそうです。
成人GH欠乏症の患者でGHの補充療法をしている場合、血清コルチゾール値が低下する可能性があるので、GH補充後に副腎皮質機能低下症の症状が増えた場合は、コルチゾール補充量の増量を検討する必要があるそうです。
CYP3A4の活性を阻害する薬剤(ジルチアゼム・シメチジン・アプレピタント・イトラコナゾール・リトナビル・その他の抗レトロウイルス薬・フルオキセチン・その他のSSRI(セロトニン再取り込み阻害剤))などは、コートリルの効果を増強する可能性があり、同時に投与する場合はコルチゾール補充量の減量が必要になる場合があるそうです。
急性副腎クリーゼについて
資料の775ページの「急性副腎クリーゼ」には、吐き気・嘔吐・腹痛・筋肉痛・関節痛・疲労感・高熱・低血圧・意識障害などの症状が2つ以上ある場合は、副腎クリーゼの可能性があると定義されていました。まだ副腎皮質機能低下症と診断されていないケースの場合は、急性腹症と誤診されることがあるそうです。また、随時の採血でコルチゾール値が<3~5μg/dLの場合は、副腎クリーゼの可能性が高い事も記載されていました。
副腎クリーゼの発生は、女性・中枢性尿崩症・喘息・糖尿病に関連しているそうです。
中枢性尿崩症について
中枢性尿崩症は急性副腎不全の引き金になる事や、副腎皮質機能低下症に中枢性尿崩症が合併した場合、中枢性尿崩症の症状が潜在していて、補充療法開始後に顕著化する事がある事が記載されていました。
テーパリングについて
ステロイドを長期投与している患者が中止する場合は、用量を徐々に減らして急性副腎不全を予防することが重要で、経口投与だけでなく、経鼻投与・経皮投与・経気管支投与でもHPA軸を抑制する可能性がある事が記載されていました。
徐放性ヒドロコルチゾン
この時点でクロノコート®についても検討されていた様ですが、8年経った今でも国内では導入されていない様です。
この情報は2016年のものなので、既出の内容がほとんどですが、この時点の日本の情報でもコートリルと併用する他の薬剤のCYP3A4やCBGによる影響が記述されていた事が確認できました。参考までに、コルチゾールに影響する成分にも詳しい薬剤名の情報をまとめています。
国内外の情報や論文・コントロール良好な方の体験談などから見つけた情報を集めています。副腎皮質機能低下症のメカニズムに関する事は「Note」へ、体験談やヒントなどは「Misc」に記録しています。
※医療も翻訳も素人で、コメントも個人的な感想・見解である事をご了承ください。