Note日本の総説からのヒント 国内
数回にわたる特集記事を読み込み、特に印象に残ったポイントを整理しておこうと思います。
2025年から2026年にかけての最新の総説に基づいた、副腎・下垂体診療の現在地です。
1. 診断の目安
早朝の血中コルチゾール値については、現在でも大きくは変わらない目安として説明されていました。早朝コルチゾールが4μg/dL未満であれば副腎皮質機能低下症の可能性が非常に高く、18μg/dL以上であればほぼ否定的と考えられています。その4〜18μg/dLの範囲はグレーゾーンとされ、ACTH負荷試験などの動的検査で評価する流れになります。ACTH負荷試験やCRH試験のカットオフ値についても、ピークコルチゾール18μg/dLという基準は2026年の総説でも同じ基準で説明されていました。※3
この基準は以前から知られているものですが、2026年の総説でも同じ整理が示されていたことから、現在の臨床でも大きくは変わっていない基本的な判断基準であることが分かります。
2. 生活リズムが数値に与える影響
興味深かったのは生活リズムの影響についての説明です。昼夜逆転の生活(夜中に起きていて、朝方に寝るような生活)を送っている人の場合、血中コルチゾール基礎値が低値を呈することが少なくないそうです。※1
3. 補充療法の微調整:CYP3A4への意識
治療については、ヒドロコルチゾン(コートリル®)による補充療法が基本になります。この総説では5〜10mg/日から開始し、一般的な維持量としては10〜20mg/日が目安とされていました。また、コルチゾールは肝臓でCYP3A4によって代謝されるため、併用薬にも注意が必要とされています。CYP3A4を誘導する薬剤と併用する場合は、コルチゾールの代謝が促進されるため補充量を増量する必要があることがあります。反対に、CYP3A4を阻害する薬剤と併用する場合は、血中濃度が上昇する可能性があるため、減量を検討する場合があるとも説明されていました。※2
4. 「分泌予備能」とグラデーションの考え方
副腎不全には「完全欠乏だけではない」、グラデーションのような病態が存在します。「分泌予備能の低下」という状態では、普段の生活(低ストレス下)では問題がなくても、感染症や発熱などの大きなストレスがかかった瞬間に、必要なだけのコルチゾールを追加分泌できず、副腎クリーゼを招く恐れがあります。「普段は何ともないから大丈夫」という油断が、救急搬送のリスクにつながる可能性があるという警鐘は、とても重要なポイントだと感じました。※1
https://doi.org/10.57554/2025-0088
副腎皮質機能低下症というと、機能が完全に失われた状態をイメージしがちですが、今回の総説では、そうした「自発ゼロ」だけではなく、部分的な分泌低下や分泌予備能の低下といった段階にも触れられていました。これまでのガイドラインは、自発分泌がほとんどない状態を前提に補充量の目安が示されることが多かったと思いますが、最近の総説では、軽度の機能低下や回復過程など、より幅のある病態も意識して整理されているようです。
5. 多様化する原因(COVID-19など)
原因の整理の中に、COVID-19感染や関連ワクチンという項目も含まれていました。自己免疫や薬剤性(免疫チェックポイント阻害薬など)と並んで、新しい背景についても日本語の総説で整理されているのが印象的でした。※4
COVID-19感染やワクチン接種後に下垂体炎や副腎機能低下が報告されていること自体は、欧米の文献や日本の研究でも以前から触れられていましたが、今回のように日本語の総説の中で原因の一つとして整理されているのを見ると、この分野の情報も少しずつアップデートされてきているように感じました。
6. 副腎クリーゼの予防とシックデイの鉄則
副腎クリーゼの予防の重要性についても強調されていました。感染症や発熱、強い運動、侵襲的な検査などのストレスがかかった場合には、通常より多いステロイド補充が必要になることがあります。いわゆるシックデイの増量については、この総説でも触れられていましたが、日常生活の中で頻繁に増量してよいという書き方は見当たりませんでした。基本の補充量を整えたうえで、ストレスがかかったときに増量するという考え方が前提になっているようです。※1
また、グルココルチコイド補充療法がプレドニゾロンなどの合成ステロイドやコルチゾンで行われている場合には、服用中の薬剤を単純に増量するのではなく、ヒドロコルチゾンを追加投与する方法が有用な場合もあると説明されていました。そのため、シックデイ時の対応については、事前に医療者と相談し、具体的な方法を指導しておくことが重要とされています。※2
この説明を見ると、日本でもヒドロコルチゾンだけでなく、プレドニゾロンなどの他のグルココルチコイドで補充療法が行われているケースがあることを前提に書かれていることが分かります。
ストレスの程度に応じた補充量の目安については、欧州内分泌学会(ESE)と米国内分泌学会(Endocrine Society)が共同で作成したガイドラインに詳しく記載されているため、そちらを参照するよう説明されていました。※2
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38714321/
出典
- 低血糖と副腎不全(J Pract Diabetes Endocrinol. 2026; 4(2): 0018.)
https://doi.org/10.57554/2026-0018 - 下垂体機能低下症におけるホルモン補充療法(J Pract Diabetes Endocrinol. 2025; 3(6): 0089.)
https://doi.org/10.57554/2025-0089 - 下垂体機能の評価:ホルモン基礎値の評価から内分泌負荷試験の実際と注意点(J Pract Diabetes Endocrinol. 2025; 3(6): 0088.)
https://doi.org/10.57554/2025-0088 - 自己免疫性下垂体疾患:新たな疾患概念とその臨床的意義(J Pract Diabetes Endocrinol. 2025; 3(6): 0087.)
https://doi.org/10.57554/2025-0087
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