Note令和6年度市民公開講座 国内

2025年2月8日(土)14時から、オンラインで行われた令和6年度 市民公開講座(主催:間脳下垂体機能障害に関する調査研究班)を視聴しました。いつもは、コルチゾール補充療法と回復に関する部分を中心にまとめていますが、今回は「診断技術の進化」「感染症と下垂体疾患」もメモを取りました。

診断技術の進化

これまで、下垂体の疾患を診断するには手術で生検を行う必要がありました。ただ、生検は体への負担が大きく、一生ホルモンが出なくなるリスクもあるため、慎重な判断が求められていました。

そこで、新たな診断法として「抗ラブフィリン3A抗体」を利用した非侵襲的な検査が研究されています。この検査は高精度とされ、将来的には保険適用されることが期待されています。現在は保険適用外ですが、特定の病院では「自費」または「病院負担」で受けられる可能性があります。

感染症と下垂体疾患

近年、新型コロナウイルス感染後に尿崩症を発症するケースが報告されています。ワクチン接種後に発症した例もあり、どちらも抗ラブフィリン3A抗体が陽性でした。また、インフルエンザ感染後にリンパ球性下垂体炎と尿崩症を発症した例もあり、これらのケースではステロイドパルス治療が行われ、6か月後には縮小が確認されています。

目の奥の痛みを伴う頭痛は、下垂体疾患の症状として現れることがあり、特に炎症が関与している場合は注意が必要です。感染症などによる下垂体の炎症は、早期に診断し適切な治療を行うことで改善が期待できるため、気になる症状がある場合は早めの受診が大切です。

炎症の場合、下垂体前葉機能がプレドニンの投与によって回復する可能性がありますが、プレドニンの使用はガイドライン上、特殊なケースに限られています。回復する人は治療開始が早いことが多く、「下垂体炎が腫瘍に変化することは基本的にないが、判断が難しい」とも言われています。

コルチゾール補充療法

ホルモンは体のバランスを整えるのに欠かせない存在です。特に副腎皮質機能低下症は、適切に管理しなければ命に関わることもあるため、コルチゾール補充療法が重要となります。

  • コルチゾール補充により、ラトケ嚢胞の縮小や尿崩症が改善することがある
  • ACTH単独欠損症の場合、日本人には20mgは多く、最近は15mg程度、女性はさらに少なめの量を推奨
  • 診断初期のクリーゼ(急性副腎不全)では、一時的に100mgなど多めに投与することがある
  • 投与例は、20mg→15mg→12.5mgのように症状を見て減らす
  • 夕方の疲れを感じる場合、服用のタイミングを工夫することで、症状を安定させることができる
  • 補充が適切なのかを示すマーカーが確立されていないため、症状を見ながら慎重に調整する
  • 関節痛をコルチゾール不足の症状の目安とすることも多い
患者の体験から学ぶこと

本講座では、医師でもある患者さんの経験談が紹介されました。「コートリルを飲むと電池のように充電されるが、ストレスがあるとあっという間になくなる。」という言葉が示すように、ストレス管理が症状の安定に直結することが分かります。

初期はコートリル25mgを服用し、最大で30mgまで増量しましたが、現在は15mgで折り合いをつけながら生活しているそうです。コートリル単剤ではホルモンレベルの谷が深くなってしまうため、甲状腺ホルモンを追加することで谷を浅くする工夫を行っているそうです。加えて、コルチゾールの副作用の予防も兼ねて、筋力トレーニングを続けているそうです。

  • コートリルは多ければ効くわけではない
  • 余分に補充しないことが重要
  • ドーピングのような過剰な服用は逆効果
  • ホルモンの谷底を低くしすぎないように調整することが大事

主治医(内科)はオーバードーズを避けたいと考える一方で、患者(外科医)は日常生活や活動の維持を優先したいと感じることがあり、この調整が難しいという現実も語られました。

「一時的に人生の希望を失ったが、治療を通じて新たな人生設計を立て直すことができた。」と語られたように、下垂体疾患の診断や適切な治療によって、生活の質を大きく向上させることが可能です。

まとめ
  • 診断技術の進化により、抗ラブフィリン3A抗体を用いた非侵襲的な検査が進められている
  • 感染症などからの下垂体の炎症は、早期なら治療で改善できる場合があるため、早期に医療機関で診断し治療することが重要
  • 適切な投与量と服用のタイミングが大事で、多すぎても少なすぎても体調に影響が出る
  • ストレス管理が、症状の安定と治療の成功に直結する
  • 下垂体再生医療は日本がリードしており、実現が期待されている

国内外の情報・論文・コントロール良好な方の体験談などから見つけた情報を記録しています。副腎皮質機能低下症のメカニズムに関する情報は「Note」へ、体験談やヒントなどは「Hint」へ、その他の内容は「Misc」に記録しています。

※医療も翻訳も素人で、コメントも個人的な感想・見解である事をご了承ください。