Noteコルチゾールと運動

副腎皮質機能低下症で比較的体調が安定している方や、軽症・グレーゾーンで頓服の方で、体に負担をかけずに、適度な運動を習慣にしたいと思う方もいらっしゃるかもしれません。そこで、運動に関する論文をディスカッションしているスレッドからの情報を日本語でまとめてみました。

運動時の増薬(追加)に関する論文は色々とある様ですが、意外な事に、運動前にコルチゾールを増薬する必要がなかったという結論のものが多い事がわかりました。

運動前にコルチゾールを補充した場合・補充しない場合ともに、運動後は(健康な人よりも)コルチゾールが低下し、補充した場合の方が、運動時に健康な人よりもコルチゾールが有意に高くなり、その後にコルチゾールが大幅に低下し、開始時よりも低くなるそうです。

また、少数の例を除き、運動開始時の負荷からのグルコース反応が、運動中の負荷の主な原因である事、コルチゾール補充は運動のパフォーマンスには影響しない事が示されていた事からも、運動前にコルチゾールを増薬する必要がなかったという結論になったそうです。

そもそも副腎皮質機能低下症は、運動をサポートするのに不十分な血糖の状態である事が多く、その影響から、パフォーマンスだけでなく、運動後の体調も安定しづらい状態になる事からも、むしろ、運動前のコルチゾールの補充よりも、適切な血糖値・電解質・水分の補給が、運動後の体調への影響にも重要な要素で、運動のパフォーマンスの鍵でもあるそうです。

このテーマに関する研究論文を読むと、異なる視点からも同じ結論が出ているようです。

実際に、副腎皮質機能低下症のアスリートコミュニティ(2023年12月現在3,500人以上在籍)のメンバーの多くは、服薬後80~100分以内の血糖値が、健康な方と同様のレベルになっているという理論から、追加や頓服ではなく、予定されていた服薬時間の1時間以内に運動をしているケースが多く、通常の服薬・食事・水分補給・電解質の調整・さらにはカフェインの摂取によって運動をサポートしていて、多くのメンバーが運動能力の40%~70%のゾーンで運動する、いわゆるZone2トレーニングを実践しているそうです。

副腎皮質機能低下症で運動に取り組む方々は、日頃のコントロールが良好な事が前提な様ですが、コントロールが不安定な方が運動する場合にも、段階的運動療法というものを用いて、2年かけて少しづつ安全にパフォーマンスをあげる方法があるそうです。

欧米の方々は、体調不良に関しては、クリーゼ寄りのコルチゾール不足・副腎クリーゼ・シックデイのみにコートリルを追加するように節制している印象で、運動習慣にはコートリルを追加しなくて良い範囲内で工夫して行い、非日常の作業・旅行・イベント・仕事などからの負荷で体調不良が予想される前などは、コートリルの追加をして、毎日多めになってしまわない様にしている様です。

日々の活動量の超過でコートリルの追加が必要になってしまうという方も、予定を入れる時間をコートリルの服用時間にあわせる事で、余計なコートリルの追加が減らせる工夫はできるのかもしれません。

[出典]Effect of a pre-exercise hydrocortisone dose on short-term physical performance in female patients with primary adrenal failure

※あくまでも理論で、体調は人それぞれなので、運動中や運動後にクリーゼになった場合は、コートリルを飲んでくださいね。


国内外の情報や論文・コントロール良好な方の体験談などから見つけた情報を集めています。副腎皮質機能低下症のメカニズムに関する事は「Note」へ、体験談やヒントなどは「Misc」に記録しています。

※医療も翻訳も素人で、コメントも個人的な感想・見解である事をご了承ください。