Noteコルチゾールと運動

副腎皮質機能低下症で比較的体調が安定している方で、体に負担をかけずに、適度な運動を習慣にしたいと思う方もいらっしゃるかもしれません。そこで今回は、運動とコルチゾール補充に関する論文が紹介されているディスカッションスレッドの情報を、日本語でまとめてみました。

運動時の増薬(追加)に関する論文は色々とある様ですが、意外な事に、運動前にコルチゾールを増薬する必要がなかったという結論のものが多い事がわかりました。

実際、運動前に補充した場合・しなかった場合のどちらにおいても、運動後には健康な人と比べてコルチゾール値が低下しており、補充していた場合は一時的に高くなるものの、その後に大きく下がり、開始時よりも低くなるという結果が出ていたそうです。

また、多くの研究で、運動開始時の負荷によるグルコース反応が、運動中の主なストレス要因であることや、コルチゾール補充が運動パフォーマンスに影響を与えないことが示されており、これも「運動前の増薬は不要」とされる理由のひとつになっているようです。

そもそも副腎皮質機能低下症では、血糖状態が不十分であることが多く、その影響でパフォーマンスだけでなく、運動後の体調も安定しにくくなるといわれています。

そのため、コルチゾールを増やすこと以上に、血糖・電解質・水分を適切に補給することの方が、運動後の体調維持にとっても、パフォーマンスにとっても重要だと考えられています。

このテーマに関する複数の研究でも、視点は異なっていても、同様の結論に至っているようでした。

実際に、副腎皮質機能低下症のアスリートコミュニティ(2025年5月時点で4,600人以上が参加)では、多くのメンバーが「服薬後80〜100分以内に血糖値が健常者と同レベルになる」という理論に基づき、追加や頓服ではなく、通常の服薬スケジュール内で、服薬後1時間以内に運動するというスタイルを取っているそうです。

また、服薬・食事・水分・電解質・カフェインなどを工夫しながら、運動能力の40〜70%の範囲で行う「Zone2トレーニングを実践している方が多いとのことでした。

もちろんこれは、日常的に体調管理がうまくできていることが前提になりますが、もし体調が不安定な場合でも、段階的な運動療法(段階的に負荷を高める方法)を取り入れながら、2年かけて少しずつ安全にパフォーマンスを上げていく方法も紹介されていました。

欧米の患者さんたちは、体調不良が予測される場面(非日常の作業・旅行・イベントなど)や、クリーゼが疑われるときに限定して追加服用を行い、運動のためだけに毎回追加しないよう節度を持って調整している印象です。

日々の活動で「つい追加が必要になってしまう」という場合でも、コートリルの服用時間にあわせて予定を立てるなど、工夫によって追加を減らすこともできるかもしれません。

[出典]Effect of a pre-exercise hydrocortisone dose on short-term physical performance in female patients with primary adrenal failure

※あくまで理論であり、体調には個人差があります。もし運動中や運動後にクリーゼの兆候があれば、迷わずコートリルを服用してくださいね。

2023.12.22 掲載

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