コルチゾールと運動
副腎皮質機能低下症では、筋力や体力が落ちていることで、同じことをしても以前より大きな負荷になってしまうことがあります。
少しずつ体力をつけていくことで、同じコートリルの量でもできることが増えていく可能性はあると言われています。
運動時の増薬についてはいくつか論文がありますが、意外だったのは、運動前にコルチゾールを追加しても、それだけで運動中や運動後の状態を安定させられるわけではなさそうだったことでした。
実際に、運動前に補充した場合も、しなかった場合も、運動後のコルチゾール値は健康な人より低くなっていました。補充した場合は一時的に上昇するものの、その後は大きく低下し、開始時より低くなるという結果も報告されています。
また、多くの研究では、運動によるストレスの中心はコルチゾールよりも血糖の変動にある可能性が示されています。コルチゾールを追加しても運動パフォーマンスへの影響は大きくなく、「運動前の増薬は不要」と考えられている理由のひとつになっているようです。
そもそも副腎皮質機能低下症では血糖が不安定になりやすく、その影響で運動後の体調も崩れやすいと言われています。
なので、コルチゾールを増やすことよりも、血糖や電解質、水分を整えることの方が大切と考えられているようです。
欧米の副腎皮質機能低下症コミュニティのアスリートの方々の中には、運動のためにコートリルを追加するのではなく、通常の服薬後に運動する方も多いそうです。
服薬後しばらくして血糖が安定しやすいタイミングに合わせて運動する、という考え方だと思います。
※2026年3月現在、欧米の副腎皮質機能低下症のコミュニティには約16,000人が登録されており、運動を習慣にしている方は約5,280人、回復を目指して減薬に取り組んでいる方は約1100人、調整・減薬に取り組んでいる方は520人、論文ディスカッションに参加している患者・医師・研究者は約1,100人いらっしゃいます。
また、服薬や食事、水分、電解質、カフェインなどを調整しながら、運動能力の40〜70%程度で行う「Zone2トレーニング」を取り入れている人もいらっしゃいます。
運動を続けるためには、まず日常の体調が安定していることが大切ですが、体力に自信がない場合でも、負荷を少しずつ上げながら時間をかけて慣らしていく方法があるようです。
欧米の患者さんたちの話を見ていると、運動のたびにヒドロコルチゾン(コートリル)を追加するというより、服薬や食事のタイミングを工夫しながら運動している方が多い印象でした。
これは運動だけでなく、日常生活でも同じかもしれません。
追加で補うことを考える前に、服薬のタイミングに合わせて予定を組んでみることで、追加の回数を減らせることもあるのかもしれません。
- 体調には個人差がありますので、運動中や運動後にクリーゼの兆候を感じた場合は、迷わずコートリルを服用するようにしてくださいね
参考資料
Effect of a pre-exercise hydrocortisone dose on short-term physical performance in female patients with primary adrenal failure
https://doi.org/10.1530/EJE-15-0630
※この記事で紹介している文献や論文は、情報が乏しいこの病気において、改善の糸口を探るために部分的に参考にしたものです。あくまで個人の体調管理のヒントとして活用した記録なので、医学的な普遍性や効果を保証するものではないことをご理解ください。
読んでくださった方が、自分なりの工夫を見つけるヒントになればうれしいです。
医療に関する判断を行う際は、必ず医師にご相談ください。
