
第98話「炎症との折り合い」
最近は、私のように「頓服」だったり、「少なめの常用の微調整スタイル」の方も、けっこうみかけるようになりました。このフェーズでは、最低限のコートリルで体調維持しながらも、「少なすぎることによる持病の悪化」を防いで、安定した体調をキープしていくことが課題です。
先日の感染症からのリカバリーのなかで、最優先にしていたのは「喘息の再燃を防ぐこと」「咳を慢性化させないこと」「副鼻腔炎を慢性化させないこと」でした。そのうえで、炎症を再燃させずに、日常の活動や運動習慣をゆっくり再開していく「リハビリ」が、プロセスの中で欠かせない作業のひとつでした。
喘息の再燃は避けることができましたが、もともと寛解していた副鼻腔炎が悪化していました。副鼻腔炎が長引くと、炎症が気道へ波及し、喘息の再燃につながることもあるため、ここをしっかり抑えておくのはとても重要なポイントでした。
なので私は、これまでの自分の経験や知識に加えて、副鼻腔炎を寛解させた経験をもつ周囲の方々のアドバイスも積極的に取り入れながら、できる工夫はフルパワーで実践しました。その結果、咳が慢性化することもなく、副鼻腔炎も無事に鎮静させて、しっかりリカバリーすることができました。
コロナ・インフル・アデノなどは陰性でしたが、その後、一緒に暮らしている旦那さんにも移してしまったので、同じくらいの強度の感染症だったんだと思います。検査で出なくても、初期の発熱がない場合でも、「これはただの風邪じゃない」と思った時は、シックデイ投与をしっかりしなければと思います。
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炎症とコルチゾール
炎症と機能回復にまとめたように、コートリルの服用は「我慢 vs. 足す」ではなく、「炎症を放置して消耗しないように、自分のリズムで最小限の補充をする」という戦略が重要です。この読みが上手くできるようになると、HPA軸の“回復を邪魔しない補充”として、かなり質が高い運用ができるんじゃないかと思っています。
血糖値と炎症の関係
血糖値と炎症の関係にまとめていますが、高血糖や血糖値スパイクが炎症の目安とされているCRP(C反応性タンパク)を上昇させるという研究もいくつか報告されていました。実際に、欧米の患者さんのクリーゼ体験談のなかにも、日常の負荷に加えて、甘いものを食べたことが引き金のひとつになっていた──という話もありました。
Hindmarshの書籍にもあったように、日常的な血糖値スパイクを防ぐことが、コートリルのベース量を増やさずに過ごす秘訣なので、コートリルの「増量対応」を避けるためにも、糖尿病にならないようにしておくことも、大事な対策のひとつだと思いました。
ただ、もともと炎症があってCRPも高めで、コートリルも多めの方の場合は、このあたりの体感が埋もれてしまって、気づきにくいこともあるかもしれません。でも、私のようにプラマイゼロの量で過ごしていると、この「ほんの少しの炎症」でも、必要量に影響しているような体感がわかるので、私は幸運なんだと思います。
体験談からのヒント
NADF(National Addison’s Disease Foundation)さんの「A Day in the Life(ある日の出来事)」に書かれていた体験談からも読み取れるように、欧米では「ガイドラインに沿ったコートリルの使い方」が一般的なので、副作用に悩まされる人も少なくて、ほぼ健康な人と変わらない体調を保っている人も、たくさんいらっしゃいます。
副腎皮質機能低下症はコートリルの飲み方や飲む量が、その後の体調の安定度や副作用の有無にも影響します。もちろん、「一般的な量」で安定できる患者さんばかりではありませんが、まずは睡眠や食事、生活習慣を見直してみると、「増量対応」なしで過ごせる可能性があることは、知っておくと選択肢のひとつになると思います。
最近もコートリルは頓服で過ごせていて、感染症のように強い炎症があるときは10mg+@、コルチゾール不足の症状があってフライトでの移動時には5mg、滅多に飲むことはありませんが、日常の微調整は1.25〜2.5mgの範囲で体調維持ができています。