Hint適度な運動の効果

薬だけに頼らず、体そのものの「底力」を引き出していくには、無理のない運動の積み重ねがとても効果的です。特に副腎皮質機能低下症の方にとっては、日々のコンディションを安定させ、回復の後押しをしてくれる強い味方になると言われていて、欧米の副腎皮質機能低下症の方々も、毎日の習慣として取り入れています。

有酸素運動

軽めの有酸素運動で、20分ほど心拍数を上げる時間(Zone 2の強度)を日常に取り入れていくことで、「疲れにくく、ストレスに強い体」のベースがつくられていきます。

具体的には、HPA軸の回復・自律神経の安定・ストレス耐性の向上・血糖値の安定・睡眠の質の向上・認知機能の改善と予防・気温変化への適応力アップ・ミトコンドリアの活性化と増加・脂肪代謝の効率化・慢性炎症の抑制・免疫機能の最適化・心肺機能の向上・疲労の回復が早くなる・メンタルの安定──など、薬の服用だけでは得られない恩恵がたくさんあります

まずはここから、コートリルだけに頼らない“省エネで動ける体”を整えるのが基本です。実際にこの習慣を取り入れて、安定剤や睡眠薬(HPA軸を抑制する薬)を減薬・中止できた方も多くいらっしゃいます。(複数の研究もあって、よく知られている話ですね)

筋トレ

筋トレは「年齢による下り坂」を防ぎ、特に更年期以降の体調維持にとても効果的な“攻め”の習慣です。

たとえば、骨密度の低下を予防(特に更年期以降)・筋力や基礎代謝を維持・血糖コントロールを強化・体型や姿勢の崩れを予防・ホルモンバランスを整える・メンタルの安定・関節を安定・認知機能や記憶力の維持・睡眠の質を向上させる・慢性痛や不定愁訴の軽減・炎症マーカーを低下・心肺機能や全身の回復力を底上げする効果──など、こちらも服薬だけでは得られないメリットがたくさんあります

リハビリと筋トレの違い

リハビリは“マイナスをゼロに戻す”アプローチで、筋トレは“ゼロをプラスにする”アプローチなので、目的と目標がそもそも違います。

たとえば──
リハビリはラジオ体操です。ゆっくり、安全第一で、日常動作を取り戻すための基礎作りです。ジムでの筋トレはインターハイです。限界に挑戦し、結果を出すために高負荷をかけていく活動です。その中間にあたるのが「部活の基礎練習」です。地味だけど、正しいフォームで少しずつ土台を整えていく段階です。

実際にどんな強度が最適?

運動のたびにコートリルを追加するのは、長期的に見るとあまり理想的とは言えません。研究でも言われている通り、ごく少量でも“塵も積もれば”で副作用リスクが高まりやすく、運動に関する複数の研究でも「軽〜中等度の運動ではステロイド追加は不要」とされています。むしろ、気軽に追加することで、かえって不調を招いたというケースも見受けられます。

副腎皮質機能低下症の方にとって最適なのは、「部活の基礎練」レベルです。がんばりすぎない、でも止まらない。身の丈にあったレベルの運動に留めておく。体調に合わせて呼吸・心拍・疲労感をチェックしながら、少しずつ進めていく。そんな運動なら、コートリルを追加せずとも取り組みやすく、体調管理のベースを整えるのにぴったりです。

そして、こうした地道な積み重ねを続けていくことで、実際に「インターハイ級の強度」にまで戻すことができた、という方もいらっしゃいます。

有酸素運動で整えて、筋トレで将来を守る。まだ筋トレができないレベルの方は、まずはリハビリから始めて、筋トレができるスタートラインに立てるようにする。今の自分に合った段階から、無理なく積み上げていけたら、健康的に過ごせる時間を延長できますね。

その他、運動の方法や効果について、エビデンスをもとにまとめていますので、ご興味がある方は、あわせて読んでみてください。

2025.6.13 掲載

国内外の情報・論文・コントロール良好な方の体験談などから見つけた情報を記録しています。副腎皮質機能低下症のメカニズムに関する情報は「Note」へ、体験談やヒントなどは「Hint」へ、その他の内容は「Misc」に記録しています。

※医療も翻訳も素人で、コメントも個人的な感想・見解です。