第31話「旅行と不調」

副腎皮質機能低下症と診断されて2回目のフライトで、リゾートへ行くことになりました。この日の為に色々と準備をして体調を整えていたのですが、前日の夜まで仕事が忙しく、いつの間にか無理をしてしまい、出発日の朝に、今までで一番ひどい体調不良になってしまいました。

日常の場合、コートリルを適量追加して、午前中ゆっくり過ごすことで、お昼ごろには回復できるのですが、この日はそんな時間の余裕もなく、準備して空港へ向かわなければならないスケジュールでした。

旅行の日のベース量のコートリル10mgを服用して、気合いでシャワー浴び、ドライヤーをかけようとメイク台に座ったのですが、倦怠感と脱力感で普通に座ることができませんでした。床に座りベッドの横にもたれながら髪を乾かしたところで力尽き、出発時間ギリギリまで横になっていたのですが、まったく症状が改善する気配がなく、動悸・吐き気・消化器症状・全身の関節痛や脱力感も酷くなり、会話すらできなくなっていました。

午前中ゆっくりして午後の便に振り替えることも考えたのですが、あいにくこの日のフライトは全て満席らしく、定刻の飛行機に乗れない場合は、旅程を全てキャンセルすることになってしまうので、楽しみにしている旦那さんの為にも、絶対に諦める訳にはいかず、コートリル10mgをプラスして空港へ向かうことにしました。

空港に着いた頃は、座っている状態でも、息切れ・頻脈(130bpm)・吐き気・低酸素(93%)で、歩くことができないので、車椅子をお借りして手荷物検査を通り、搭乗口まで移動しました。藁にも縋る気持ちでコートリル10mgとワソランを服用して、車椅子で飛行機に搭乗し、なんとかシートに座ることができた時は、涙が出そうな気持ちになりました。

日常の6倍以上の30mgのコートリルの効果なのか、飛行機で1時間ほど眠ったことが良かったのか、到着する頃には少し歩けるようになっていて、ホテルに到着した頃には、ゆっくり歩けるようになり、夜はかろうじてレストランで食事ができるくらいに回復しました。

体調が完全に回復できていなかったことから、食欲低下の症状もあり、グルテンフリーで用意していただいていたフルコースを、半分以上残してしまったのが残念でした。

翌日はさらに回復し、コートリルを10mg追加しながら、少しだけ海やプールに入ったりすることができました。ただ、いつもに増して体温調節が上手くできない様で、全く汗をかけなくなってしまったり、熱がこもってしまったりするので、熱中症にならないように、随時少量のコートリルとスポーツドリンクを飲みながら過ごしました。

というのも、この病気と診断される前に訪れた海外リゾートでも、汗がかけなくなり熱中症になった経験があることから、同じ事態にならないように、気をつけていました。私の場合は、汗がかけなくなった時は、少量のコートリルですぐに発汗し始めるので、やっぱりコルチゾール不足に由来する症状なんだと確信しました。

日常では、なるべく最小限の補充量で体調維持をするように心がけているのですが、単発の増量ならステロイドの副作用の心配は不要なので、非日常の旅行や、熱中症リスクがある場所にいる時だけは、安全重視の服薬計画にシフトすることが大事だと実感しました。

歩けなくなってしまうという経験は初めてでもあり、副腎皮質機能低下症になって以来、一番ひどい体調不良からのスタートで、何度も心折れそうになったのですが、結果的に持ち直すことができ、それなりに楽しい時間を過ごし、自分の足で歩ける状態で帰宅することができました。

今回の大失敗から、旅行やマストな予定の前は余裕を持ったスケジュールにすること、翌日でもできることは翌日に持ち越す勇気を持つこと、自分の体調を過信しないこと、動けなくなった時はシックディの対応(一時的なコートリル増量)を迅速にすることが重要で、万が一動けない体調になってしまった場合でも、車椅子で移動ができたこと、フライトの低気圧は体調に影響しないことが経験知になりました。

この病気は、服薬や体調の管理が難しく、キャパを超えて無理をした場合、とんでもない体調不良になってしまうことが、痛いほど理解できました。健康な人と同じ様には過ごせないかもしれないけれど、それなりに体調を整えて、やりたいことをやれる人生になるように、改善して行こうと思います。


闘病日記 by ここ プロフィール