第78話「回復のきっかけ」

原因不明の体調不良が始まってから8年、副腎皮質機能低下症と診断されてから2年7ヶ月、コートリルを頓服に切り替えて1年1ヶ月、そして喘息の治療で数年使用していた吸入ステロイドを断薬してから9ヶ月が経ちました。

特に困っていたのが喘息で、風邪を引くたびに発作が出ていたのですが、第61話「呼吸器科の卒業」にまとめた通り、コルチゾール不足を解消することで発作が減り、生活改善をしているうちに全く発作がなくなり、2024年の6月に、呼吸器科の通院も卒業することができました。

今になって考えると、コルチゾールの基礎値が1.6μg/dL程度では、炎症や不調が頻発していたのも無理はない状態だったのかもしれません。(参考:診断前の経緯診断後の経緯

あらゆる負荷やリスクを最小限にして、改善に取り組んできましたが、状態が良くなった理由がコートリル補充だけの効果だったとしたら、断薬しても安定を保てるのだろうか?という不安が残っていました。そんな中、吸入ステロイドと副腎機能に関する話題を目にしたことがきっかけで、情報を探してみることにしました。

治療の転機

そこで気づいたのは、私が意識せずに続けてきた食生活が、実は欧米の副腎皮質機能低下症の患者さんたちに広く実践されている糖質制限食という食事法で、それが副腎皮質機能低下症の回復やコントロールだけでなく、喘息の改善にも効果的だったということでした。(参考:効果的な食事法

糖質制限食にはストイックなイメージがあり、特に興味を持っていなかったのですが、体調を優先して食事を調整していくうちに、気づけば自然と糖質制限の形に落ち着いていたようです。糖質制限といっても糖質を完全にカットするものではなく、「スイーツを控えつつヘルシーな糖質は適量摂る」というスタイルなので、無理なく続けられています。(参考:Xの投稿

この食事法が多くの患者さんに支持され、実際に効果を上げている理由を調べてみると、その背景には「ケトン体」と「マスト細胞」の働きが深く関係していることが分かりました。実は、これらの言葉は以前から欧米のコミュニティでよく目にしていたものの、特に関心を持たず、詳しく調べることもありませんでした。それがいつの間にか私にとっての「ゲームチェンジャー」となり、大きな転機をもたらしていました。

経過について

欧米の論文や成功者の体験談、経過が良好な方々を参考にして、バランスの良い食事を心がけ、甘いものを一切食べず、アレルゲンを徹底して除去して、適度な運動を習慣にして過ごした結果、コートリルは頓服に、吸入ステロイドは断薬することができました。

週に一度はお寿司を楽しむことで、魚の良質なタンパク質やオメガ3脂肪酸を補っています。このように良質な糖質を適度に取り入れているため、全くストレスを感じることなく、体調もますます良くなっていて、この1ヶ月は、合計4回で8.25mgのコートリル頓服で体調維持が出来ました。

  頓服 総量 備考
2024年8月 2回 3.75mg 16日に1回ペースで頓服
2024年9月 6回 13.75mg 5日に1回ペースで頓服
2024年10月 4回 9.25mg 8日に1回ペースで頓服
2024年11月 4回 15mg 8日に1回ペースで頓服
2024年12月 4回 8.25mg 8日に1回ペースで頓服
回復への鍵

私の副腎不全は未だに原因不明のままですが、内分泌の専門医のS先生の見解でも、原因のひとつとして吸入ステロイドの影響が否定できないとされています。ただ、当時の私の吸入量は、ビレーズトリ2吸入(ブデソニド320μg/day)と高用量ではないので、独自の体質に加え、併用薬の影響で効果が強まっていた可能性が考えられます。(参考:吸入薬と住環境

実際に吸入ステロイドを徐々に漸減・断薬した際に、ステロイドの離脱症状を感じたことや、使用していた時と使用していない時、断薬後のコルチゾールの値の変化を振り返ると、吸入ステロイドが想像以上に影響を与えていた可能性が高いと感じています。

私の副腎機能の回復の最初のきっかけになった「喘息の状態が良くなった明確な理由」がわからず、少し不安が残っていましたが、同じ取り組みで回復した方々の体験談や、回復を裏付ける情報に出会い、特にこの食事法が大きく寄与してくれていたことが理解できました。

このライフスタイルを続ければ、大きな悪化は防げることがわかったので、体質に合う気管支拡張剤と、HPA軸の機能低下を招きにくい吸入薬「オルベスコ」を、お守りとしながら、完全断薬を目指そうと思います。

情報制限の壁

欧米のコミュニティの良い点は、「上手くコントロールして改善・回復すること」が目的なので、個人的な関係性に左右されず、特定のケースに忖度した情報制限がないことでした。一方で、日本の情報は「楽しくすること」が重視されるため、特定のケースに忖度された情報が多く、また、回復の可能性が十分に知られていないことから、回復に関する情報が制限されたり、誤った情報が広まっていたり、多数派の「回復できないケース」の情報ばかりが残り、結果として病状が悪化している方が多い印象でした。

そんな中でも、この病気や投薬に関する正しい知識を持ち、ごく少量で体調を維持されていたり、回復して卒業していった方の情報が残っていたので、その方々の体験談が私の希望の道標でした。


この8年間の闘病を通じて、病気を深く理解することの重要性、治療が医療だけに依存しないこと、国内の情報に偏らない姿勢、成功例から柔軟に学ぶこと、そして薬のリスクを正しく把握する大切さを実感しました。

また、この病気の患者さんだけでなく、研究者に至るまでが「食べるものの質」の大切さを語る理由を、自身の闘病と回復の経験を通じて深く実感することができました。情報を共有してくださった皆さま、そしてこれまで私の闘病を支えてくださった方々に、心より感謝申し上げます。


闘病日記 by ここ プロフィール