第58話「副腎不全の専門書」

欧米のコミュニティで話題になっているPeter C. Hindmarsh(内分泌医)とKathy Geertsma(患者家族)が2024年3月29日に出版したReplacement Therapies in Adrenal Insufficiencyという副腎不全の補充療法の書籍の存在を知り、早速購入してみました。

この本は、副腎皮質機能低下症の補充療法を中心に、内分泌医と患者家族の視点から、患者が知識を高めることを目的に、なるべく解りやすくまとめた内容になっています。同じく話題になっているHusebyeの治療推奨事項の内容も反映しているので、間違い無い情報と言われています。

Husebyeの治療推奨事項の翻訳も進めているのですが、この書籍を読めば、それ以上の知識を得ることができるので、最強な副腎皮質機能低下症の専門書だと思いました。

今までコミュニティから得た欧米の内分泌医や研究者の情報とも誤差が無く、患者の口コミの答え合わせも出来ています。この病気の最新情報・メカニズム・シックデイ・副作用・薬理学・相互作用などの詳細とエビデンスを理解して、今後の体調維持に活かそうと思います。

コントロールのコツ

Another situation where the normal cortisol production through the circadian rhythm can be altered, is in hypoglycaemia (low blood glucose), or if blood glucose falls rapidly within the normal range. There is a sequence of events that take place as blood glucose falls.

Hindmarsh, Peter C.; Geertsma, Kathy. Replacement Therapies in Adrenal Insufficiency (p.36). Elsevier Science. Kindle.

副腎皮質機能低下症の体調維持は、低血糖と血糖値スパイクを防ぐことが最重要で効果がある方法で、低血糖や血糖値スパイクはコルチゾールのムダ使いになるので、例えポンプで忠実に日内変動を再現した場合でも、低血糖を安定させない限り、コルチゾール値に影響するそうです。

加えて、低血糖や血糖値スパイクを繰り返すと、アドレナリンが出にくくなり、グリコーゲンが血糖値を上げる効果が低下するので、どんどんコントロールしにくい体質を作り上げてしまうそうです。

甘草はコルチゾールをコルチゾンに変換する邪魔をした上、コルチゾールの排出を阻害するので、コルチゾンになれないコルチゾールが体内に溜まってしまいます。例えるなら「コートリル効かないのに副作用だけ増える」みたいな可能性があることから、副腎皮質機能低下症には禁忌だそうです。

その他にも沢山コントロールに重要な知識を得ることができました。
ご興味のある方は、購入して読んでみてください。


Peter C. Hindmarshの書籍の概要は「副腎不全の補充療法の書籍」に、欧米の運動とHPA軸の理論と方法は「コルチゾールと運動」に、Anders Hansenの理論と方法は「HPA軸を整える理論と方法」にまとめています。


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