HintオピオイドとHPA軸
ステロイドからの副腎不全は「グルココルチコイド誘発性副腎不全」として分類されますが、ステロイド以外の薬剤、たとえばオピオイドや抗精神病薬などによってHPA軸が抑制される場合は、「続発性副腎不全」に分類されるようです。
オピオイドもHPA軸に影響を与える薬のひとつで、慢性的な使用や高用量では、実際に副腎皮質機能低下症(続発性)を引き起こすことがあると報告されています。症状があいまいなことも多く、見逃されがちですが、コルチゾール分泌の低下によって、疲労感・低血圧・ストレス耐性の低下などが出ることがあります。
多くの場合、原因薬剤の減量・中止によってHPA軸の回復が期待できますが、そのプロセスや期間には個人差があり、グルココルチコイド誘発性副腎不全と共通する注意点も多いと感じました。
Exogenous opioids and the human endocrine system: an Endocrine Society scientific statement
https://doi.org/10.1210/endrev/bnae023
エンドクライン学会による公式声明で、オピオイドが視床下部–下垂体–副腎(HPA)軸を含む内分泌系に与える影響をまとめたものです。長期使用によるACTH・コルチゾールの抑制が報告されており、副腎不全リスクへの注意が呼びかけられています。
Prevalence of opioid-induced adrenal insufficiency in patients taking chronic opioids
https://doi.org/10.1210/clinem/dgaa499
慢性的にオピオイドを使用している患者において、副腎不全の有病率を調査した研究です。非特異的な症状により見逃されやすく、ホルモン評価の重要性が指摘されています。
Opioids and their endocrine effects: a systematic review and meta-analysis
https://doi.org/10.1210/clinem/dgz022
複数の研究を対象としたレビュー・メタアナリシスで、オピオイドによるHPA軸抑制と副腎不全の関連が検討されています。性腺機能への影響だけでなく、副腎機能への抑制作用についても明確に述べられています。
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※医療も翻訳も素人で、コメントも個人的な感想・見解です。