Hint補充療法の戦略の違い 必読
コルチゾール補充療法について調べていると、「できるだけ増やさないほうがいい」と言われることもあれば、「迷ったら増やしていい」と言われることもあって、先生ごとに言っていることがバラバラに感じてしまうことがあります。ただ、これは補充療法そのものが矛盾しているというよりも、先生が想定している患者像や、最優先しているゴールが違うことによるものだと思います。
その前提の違いを整理するために、「コルチゾール補充療法の戦略の違い」という図を作りました。

図の中央にあるのは、ガイドラインに沿った標準治療でコントロールすることを目標にしている人たちです。日常はできるだけベース量で過ごし、増量は感染症や手術など、明確なシックデイを中心に行うという考え方です。補充量は「必要最低限」を目指しますが、これはコルチゾール不足を我慢するという意味ではありません。足りなくならないように予防することが大事だ、という前提に立っています。
一方で、図の右側に示しているのは、標準治療での調整が難しい人たちです。すでに高容量を長期間使用していたり、少し減らすだけで生活が成り立たなくなってしまう場合には、副腎クリーゼの予防が最優先になります。このゾーンでは、安全を重視してコートリルを比較的自由に増量する戦略が取られることがあります。
どちらが正しいか、という話ではありません。同じ補充療法でも、置かれている状況によって戦略が違う、というだけだと思います。
今回の図では、補充量の違いに加えて、自発機能の残りやすさ、体調コントロールのしやすさ、副腎クリーゼのなりやすさといった要素も可視化しています。高容量は一時的には不調が緩和されやすい一方で、副作用リスクが高まり、糖尿病や高血圧などの病気が増えることで、結果的にさらに調整が難しくなる場合があります。
逆に、標準治療のゾーンにいる人が、「自由に増薬していい」という考え方だけを真似してしまうと、ガイドラインが守ろうとしている前提が崩れてしまいます。また、「必要最低限」という言葉だけを真似して、コルチゾール不足を我慢するのも危険です。不足は我慢するものではなく、事前に防ぐものだからです。
その「防ぐためにできること」として位置づけているのが、セルフケアです。睡眠や栄養、ストレス管理、ペーシング、環境調整といった工夫は、治療の代わりになるものではありませんし、無理に薬を減らすための努力でもありません。セルフケアは、患者さんが担える役割として、増やさずに済む余地をできるだけ保つための工夫だと考えています。
特に標準治療の範囲でコントロールできている人にとっては、セルフケアは「これ以上増やさなくて済む状態を維持する」ことに加えて、気づかないうちに増えていた分を見直していける余地を守る役割もあると思います。無理に減らそうとしなくても、生活側が安定してくると、結果として必要量がはっきりしてくる、という感覚に近いと思います。
コルチゾール補充療法は、薬の量だけで完結するものではなく、生活側の土台がどれだけ整っているかによって、増やすかどうかの判断の難しさが大きく変わります。この図が、「どうして先生ごとに言っていることが違うのか」を整理する手がかりになり、自分はいまどの戦略を目指しているのかを考えるヒントになればと思います。
副腎皮質機能低下症のメカニズムに関する情報は「Note」へ、補充療法のヒントは「Hint」へ、その他の情報は「Misc」へ、メッセージ経由でいただいた質問の一部は「FAQ」にまとめています。読んでくださった方が、自分なりの工夫を見つけるヒントになればうれしいです。
※体験をもとに整理した内容であり、医学的助言を目的としたものではありません。医療に関する判断を行う際は、必ず医師にご相談ください。
