過剰投与のリスク 必読

副腎皮質機能低下症の患者さんからの相談で、「日常的に追いコートリルを続けていたら、だんだん効かなくなった」「コートリルの持ちが悪くなってきた」という話を聞くことがあります。

「前はプラス1錠で効いたのに」「2錠飲まないと効かなくなった」「4錠飲んでも効かない気がする」「量がどんどん増えてしまって減らせない」「適正量まで戻せたけれど、以前より持ちが悪い」。そんな声を目にするうちに、慢性的にコートリルを多く飲み続けると、体の中では何が起きているのだろうという疑問が湧きました。

そこで、グルココルチコイド受容体(GR)について書かれたレビュー論文を読んでみました。

コートリルに含まれるヒドロコルチゾンは、細胞の中にある受容体にくっついて効果を発揮します。薬が「鍵」だとすれば、受容体は「鍵穴」です。血液中に薬が残っているかどうかだけでなく、その薬を受け止める鍵穴がどれだけあり、正常に働ける状態にあるかも、効き方を左右するそうです。

資料

コートリルのようなステロイドが体の中で多い状態が長く続くと、細胞が受容体そのものを減らす方向へ働くことが紹介されています。受容体を減らす仕組みは、ひとつではありません。受容体を作るための設計図であるmRNAを減らす仕組みや、できあがった受容体タンパク質を分解する仕組みなどが重なり、細胞の中にある受容体が減っていく可能性があるそうです。

資料

マウスを使った研究では、コルチコステロンの投与によって、通常のマウスのGRαタンパク質が最大42%減少しました。また、SIAH2というタンパク質を作れないマウスではGRαが減りにくかったことから、SIAH2が受容体の分解に関わっている可能性も示されています。

受容体が減れば、同じ量のコートリルが血液中にあっても、それを受け止められる鍵穴は少なくなります。レビュー論文では、このように受容体が減っていくことが、あとから薬が効きにくくなる状態につながるとまとめられていました。

量が増え続ける悪循環

受容体が減っている状態では、以前と同じ量を飲んでも、以前と同じように効かない可能性があります。効きにくいからコートリルを追加する。体の中にステロイドが多い状態が続き、受容体を減らす仕組みも働き続ける。すると、もっと効きにくく感じて、また追加する。このような悪循環に入る可能性があります。

患者さんが話す「前は少量で効いていたのに、だんだん必要な量が増えた」という感覚には、残っていた自発機能が抑制された、飲み薬の吸収が悪くなった、病状が変化したなど、ほかの理由もあり得ます。ただ、体の中にステロイドが多い状態が続くことで受容体が減り、同じ量に対する反応が弱くなる影響もあるのかもしれません。

このレビューで紹介されている研究は、副腎皮質機能低下症の患者さんが日常的に追いコートリルを続けた場合を直接調べたものではありません。必要最低限の補充を心がけている限り、このような心配は少ないと思います。一方で、必要な補充量を慢性的に上回るコートリルを続けた場合には、体の中が慢性的なステロイド過剰に近い状態となり、同じように受容体が減り、コートリルが効きにくくなる可能性があると思いました。

ただ、それが原因であれば、主治医と相談しながら適切な補充量へ少しずつ戻していくことで、受容体の数や働きが回復し、コートリルへの反応も戻っていく余地はあるのかもしれません。

戻しても、すぐには戻らない

もうひとつ気になっていたのが、「量は減らせたけれど、今もコートリルの持ちが悪い」「適正量に戻したあとも、以前より効きにくい」という話です。

血液中のヒドロコルチゾンは数時間で減っていきます。しかし、受容体を作る指令が抑えられ、作りかけの受容体や、できあがった受容体まで分解されていたとすれば、薬の血中濃度が下がった瞬間に、受容体の数や働きまで元へ戻るとは限りません。

このレビューでは、副腎皮質機能低下症の患者さんが適正量へ戻したあと、受容体やコートリルへの反応がどのくらいの期間で回復するかまでは調べられていません。ただ、量を戻してもすぐには以前と同じ状態にならず、しばらく「効きにくい」「持ちが悪い」と感じる可能性は、体の仕組みとしてあり得るのではないかと思いました。

補充療法と、過剰補充は別物

副腎皮質機能低下症の補充療法は、体で作れないコルチゾールを、必要な範囲で補うための治療です。主治医の先生が見積もった適正な補充量であれば、一般的なステロイド治療のような副作用を過度に心配する必要はありません。大切なのは、その適正な範囲を慢性的に上回らないことだと思います。

健康な人のようにコルチゾールが自由に作れない私たちにとって、コートリルの効きが悪くなってしまうのは死活問題です。いざという時に頼る薬が、いざという時に効かなかったら。そう考えると、日頃から適正な範囲を守っておくことには、大きな意味があると思っています。

参考


※この記事で紹介している文献や論文は、情報が乏しいこの病気において、改善の糸口を探るために部分的に参考にしたものです。あくまで個人の体調管理のヒントとして活用した記録なので、医学的な普遍性や効果を保証するものではないことをご理解ください。

補充療法の考え方

コートリルをただ「足す・減らす」だけで考えるのではなく、体の状態や生活の負荷、回復の流れを見ながら、補充療法をどう理解していくかをまとめています。

« 前の記事へ ストレスドーズの考え方
2026.7.17 掲載

読んでくださった方が、自分なりの工夫を見つけるヒントになればうれしいです。
医療に関する判断を行う際は、必ず医師にご相談ください。