Note回復の可能性についての論文

数値がなぜ回復したのか、この状態が維持できるのかといった情報を探している中で、欧米のコミュニティで「続発性副腎皮質機能低下症の一部は回復する・回復した」という情報を見かけました。そこで、具体的にどのような状況で回復の可能性があるのかを調べてみました。

欧米では、続発性副腎不全の一部のケースで、回復の可能性を見ながら補充療法と経過観察が行われていて、実際に回復しているのは次のような特徴があるケースが多いようです。

  • ACTH負荷試験である程度コルチゾール反応が残っている
  • デルタコルチゾール(ピークとベースの差)が一定以上ある

このあたりがひとつの目安になっていて、「もともと少なからずコルチゾールを作れる状態が残っているかどうか」が、回復に関係している可能性が高そうです。

実際に、The Short Synacthen (Corticotropin) Test Can Be Used to Predict Recovery of Hypothalamo-Pituitary-Adrenal Axis Functionでは、回復しやすい特徴がかなりはっきり分かれています。ACTH負荷試験の30分後のコルチゾール値が12.7μg/dL前後の回復率が最も高く、12.7μg/dL以上のケースでは99%が4年以内に回復し、それ以下のケースでも49%が回復したことが示されています。

また、ステロイド治療歴のある患者において、デルタコルチゾール値(ピークとベースの差)が3.6μg/dL以上の場合、95%が4年以内に回復し、逆にこの値が低く、さらにその後のランダムコルチゾール値も低い場合は、回復しにくい可能性が高いことが示されています。

  1. 対象は、下垂体手術後・下垂体腺腫(非機能性・手術なし・放射線療法なし)・その他の中枢神経系腫瘍・下垂体疾患(下垂体炎を含む)・副腎疾患(片側副腎摘出・腺腫・癌を含む)・ステロイド治療歴(局所・鼻・吸入・経口・筋肉・静脈)・その他の適応症(自己免疫疾患・低ナトリウム血症・嘔吐・体重減少・高カリウム血症・低血糖・低血圧・虚脱・疲労)とされています。なお、アジソン病・先天性副腎過形成症・副腎腫瘍で放射線治療を受けた患者・両側副腎摘出術を受けた患者は除外されています。

[出典]The Short Synacthen (Corticotropin) Test Can Be Used to Predict Recovery of Hypothalamo-Pituitary-Adrenal Axis Function – Published: 25 May 2018

2018年に行われたこの研究では、ACTH負荷試験とランダムコルチゾールの評価を組み合わせることで、回復する可能性が高い人とそうでない人をある程度予測できることが報告されています。

別の論文では、補充療法を継続中の患者51例のうち、9例(17.6%)が8〜51ヶ月の期間で完全に回復したという報告や、続発性の患者の約6人に1人が回復しているというデータもあります。

さらに、回復の仕方にも特徴があって、数ヶ月〜数年といった時間をかけてゆっくり回復していくケースが多いようです。4年以内に回復する例が多いとされていることもあって、「すぐ元に戻る」というよりは、時間をかけて少しずつ回復していくグループがいる、というイメージに近いのかもしれません。

欧米の副腎皮質機能低下症のコミュニティの投稿でも、ライフスタイルの改善や薬、サプリ、食べ物、日用品の見直しによって体調が整い、そこから治療や回復のスタートラインに立てたという声が見られます。診断から長期間経過していても、状態を整えることで変化が出てくる可能性はあるのかもしれません。

[出典]The Short Synacthen (Corticotropin) Test Can Be Used to Predict Recovery of Hypothalamo-Pituitary-Adrenal Axis Function – Published: 25 May 2018(※日本語訳は参考までに)

2018年時点では、欧米でも回復を評価する手法や時期についてコンセンサスが取れていなかったようですが、こういった研究が出てきたことで、続発性の患者に対して「定期的に回復を評価していく」という考え方が広がってきているようです。もともと副腎皮質機能低下症は、「一度なったら戻らないもの」として扱われることも多かった中で、こうして回復するケースが一定数あると示されたこと自体が、ひとつの希望になるデータだと感じています。

回復の可能性を示す指標のひとつであるランダムコルチゾール値は、国内でも受診日の採血時に測ってもらうことができると思います。

ただ、正確に評価してもらうためには、ACTH負荷試験と同様に、採血の前日の14時以降はコートリルを服用しないことや、誘導薬と阻害薬(CYP450)コルチゾール結合グロブリン(CBG)の影響を考慮すること、コルチゾールに影響する成分は事前に中止しておく必要があるとされています。

こういった条件が揃っていないと、本来の値が見えにくくなってしまうこともあるので、このあたりは意外と重要なポイントだと思っています。

回復の可能性をきちんと評価してもらうためにも、また補充量の調整をうまく進めていくためにも、なるべく条件を整えた状態で検査を受けることが大切になってくると思います。その前提として、ライフスタイルの見直しや、併用薬の整理など、ベースを整えておくこともひとつの助けになるのかもしれません。

出典

2024.1.6 掲載

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