Note副腎不全の補充療法の書籍 重要
欧米のコミュニティで副腎皮質機能低下症の専門書を紹介していたので、購入して読んでみました。
概要
Peter C. Hindmarsh(内分泌医)とKathy Geertsma(患者家族)の副腎不全の補充療法の書籍「Replacement Therapies in Adrenal Insufficiency」という本で、Amazonでも購入可能です。
著者のPeter C. Hindmarshは、ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンの小児内分泌学教授で、ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン病院およびグレート・オーモンド・ストリート小児病院で、小児内分泌・糖尿病のコンサルタントも務めているとのことでした。
Kathy Geertsmaは、先天性副腎過形成をもつお子さんの親で、家族向けサポートグループの議長をされている方です。適切な治療にたどり着くことが難しい患者さんやご家族と世界的にネットワークを持っていて、患者視点からの実践的な意見を発信されているようでした。
Peter C. HindmarshとKathy Geertsmaは、2017年5月に先天性副腎過形成症の専門書「Congenital Adrenal Hyperplasia: A Comprehensive Guide」も執筆しています。
この書籍の内容の一部は、続発性副腎皮質機能低下症のコミュニティでも参考にされているようで、多くの評価やフィードバックが寄せられていたとのことでした。そうした背景もあり、今回は副腎皮質機能低下症の方全体に向けた内容として、あらためて整理・執筆されたもののようです。
構成
全内容は16章の構成になっていて、第3章の「ステロイドとは」まではAmazonのサンプルで読む事ができました。
第1章「副腎不全」
第2章「コルチゾール分泌の生理学」
第3章「ステロイドとは」
第4章「副腎不全に使用される生化学的検査」
第5章「副腎不全の原因を確定するための検査」
第6章「薬理学の原則」
第7章「適量の補充が重要な理由」
第8章「副腎不全に関連する問題」
第9章「グルココルチコイドの投与」
第10章「補充療法のモニタリング」
第11章「概日リズムを模倣するポンプ療法」
第12章「ストレス・シックデイ・手術時の投薬」
第13章「補充療法と他のホルモンとの相互作用」
第14章「ナトリウムと水のバランス」
第15章「減薬について」
第16章「慢性医療と副腎不全」
この本は、補充療法を前提に書かれていて、副腎不全の多くの患者に当てはめて考えられる内容になっているようでした。副腎クリーゼの基本的な考え方に加えて、補充量が不足した場合や過剰になった場合に起こりうる短期的・長期的な影響についても、丁寧に整理されています。
また、この分野の知識や治療の考え方は常に更新されていて、研究の進展にあわせて実践や治療方針も見直されていくものだとされています。
日本の副腎皮質機能低下症の医療も、こうした流れの中で少しずつ変化していくと思いますが、実際には10年単位で差が出ることもあるようです。なので、欧米の情報も参考にしながら、自分なりに理解を深めておくことは大切だと感じました。
コルチゾールの概日リズムをより自然に再現する方法として、ポンプを使った補充療法では、他のホルモンバランスの安定にもつながる可能性があるとされています。副腎不全があっても体の基本的な生理機能そのものが変わるわけではないので、補充をどう合わせていくかがポイントになる、という考え方でした。
第1章「副腎不全」では、診断・原因特定・補充療法の投与と評価について解説されています。第2章「コルチゾール分泌の生理学」では、補充量の不足や過剰が短期的(24時間以内)に引き起こす問題について触れられています。第3章「ステロイドとは」では、最適な補充療法や日々の体調管理方法、18時以降に服用しないほうがよい理由、水とナトリウムのバランスの重要性、補充療法の減薬について解説されています。
[出典]Replacement Therapies in Adrenal Insufficiencyサンプル版
第2章の「補充量の不足や過剰で短期的に直面する問題」では、血糖値の乱れがコルチゾールの消費につながる仕組みについても説明されています。「低血糖」だけでなく、血糖値が正常範囲内でも急速に低下した場合にはコルチゾールが分泌されるとされており、その分補充が必要になる可能性があることが示されていました。
また、コルチゾール産生における概日リズムは、睡眠だけでなく光と闇のサイクルに合わせて変化しているとされています。健康な人でも夕方にはコルチゾール値は低下するものの、1.8mg/dLを下回ることはほとんどないとされていて、夜間にもある程度のコルチゾールが維持されていることが説明されていました。
さらに、シックデイにおいては、呼吸器感染症(上下気道炎)の場合、24時間にわたって28〜43mg/dLのコルチゾールが必要になることや、コートリルを3倍量服用しても血中濃度は単純に3倍にはならず、2倍程度にとどまることも記載されています。
[出典]Replacement Therapies in Adrenal Insufficiencyサンプル版
そのほか、CYP450やコルチゾール結合グロブリン(CBG)、アルブミンの影響についても触れられており、甘草がコルチゾールの代謝や排出に影響するため避けるべきであること、グリチルリチン酸の影響により高血圧や低カリウム、代謝性アルカローシス、不整脈を引き起こす可能性があることも説明されています。
また、ACTH産生が不足すると、副腎からのコルチゾール産生が減少し、副腎萎縮が起こることについても記載されていました。
結論としては、これまで言われてきた内容と大きくは変わらず、「補充量の調整」「不要な薬の見直し」「血糖値をなだらかに保つこと」が重要で、そのうえで副腎を萎縮させないように、残っている分泌機能をできるだけ維持していくことが大切なようでした。
ご興味がある方・詳細を知りたい方も、購入して全文を読んでみる事をお勧めします。
出典
Replacement Therapies in Adrenal Insufficiency
https://amzn.asia/d/hOt2joJ
読んでくださった方が、自分なりの工夫を見つけるヒントになればうれしいです。
医療に関する判断を行う際は、必ず医師にご相談ください。
