Hint共同ガイドライン2024

日本の公式セミナーでも引用されていた、欧州内分泌学会と米国内分泌学会の共同ガイドライン「European Society of Endocrinology and Endocrine Society Joint Clinical Guideline: Diagnosis and Therapy of Glucocorticoid-induced Adrenal Insufficiency」を参考に、回復や自発を残していくためのヒントをまとめました。

リスクについて

まず知っておきたいのは、副腎不全は飲み薬(経口薬)だけで起こるものではないということです。ガイドラインでは、経口だけでなく、外用、吸入、鼻腔内、静脈内、関節内投与など、どのような投与経路であってもHPA軸(視床下部ー下垂体ー副腎系)が抑制される可能性があると書かれています。

つまり、喘息の吸入薬や皮膚科の塗り薬、関節への注射などでも、長く使っていたり量が多い場合は、知らないうちに副腎の機能が落ちていることがあります。特に、1年以上の使用や、CYP3A4阻害薬を併用している場合は注意が必要とされています。

「朝の血中コルチゾール」が目安に

補充療法を中止(断薬)できるかどうかの判断には、早朝の血中コルチゾールが目安として使われるそうです。測定は朝8〜9時、少なくとも24時間はステロイドを控えた状態で行うとされています。この数値は一度だけで判断するものではなく、ある程度の期間、継続して見ていく前提だそうです。

数値としては、10µg/dLを安定して超えてくると回復を示唆し、12.8µg/dL以上であれば正常機能に近い状態と判断できる可能性が高いとされています。一方で5〜10µg/dLは回復途中の範囲で、生理的補充量を続けながら再評価、5µg/dL未満の場合は抑制が残っていると考えられ、引き続き補充を継続する形になります。

別の研究では、12.8µg/dL以上であれば100%の感度で正常機能を予測できたというデータもあるようです。

「夜のコートリル」が回復を妨げる理由

ガイドラインでは、夜間投与についても触れられていて、ACTHや早朝コルチゾールの立ち上がりを抑えてしまう可能性があるとされています。回復を目指す場合は、この影響も踏まえて、投与のタイミングを調整していくことが一つのポイントになるのかもしれません。

やはり「追いコートリル」に頼るよりも、治療計画で見積もったベースの投与で安定して過ごせる状態を作っていくことも大事になってくるのかなと感じました。

気をつけたい「副腎クリーゼ」

回復の過程で注意が必要なのが副腎クリーゼです。特にステロイドを中止してから最初の2ヶ月はリスクが上がるとされていて、この期間は慎重に体調を見ていく必要があるそうです。「コートリルを断薬できたから安心」ではなく、その後も含めて管理していくイメージに近いと思います。

ストレスドーズについて

軽度のストレスで、血圧が下がってふらつくような状態や、体にうまく血が回っていないような状態がなく、継続した嘔吐や下痢がない場合には、基本的には経口でのステロイド補充で対応する形とされています。

一方で、中等度から重度のストレスがかかる状況、たとえば全身麻酔や局所麻酔を伴う処置がある場合や、経口での内服が難しい状態、または血圧低下などの循環の不安定さや嘔吐・下痢が続いている場合には、点滴や筋肉注射といった非経口での投与が必要とされています。

要するに点滴はあくまで「限定的な場面で使うもの」という位置づけで、日常的に頼るものではないと感じました。

回復には時間がかかる

回復のプロセスについても触れられていて、最初に回復してくるのは視床下部や下垂体で、その後に副腎がゆっくり追いついてくる流れが説明されています。減薬の初期は、ACTHもコルチゾールもまだ抑制された状態が続くことが前提とされています。

最終的な回復には個人差が大きく、一定数は完全には回復しないケースもあるとされています。

「CYP3A4」とステロイドの関係

ガイドラインのチェックリストの最後に、「強力なシトクロムP450 3A4(CYP3A4)阻害薬による治療を併用している場合」と書かれています。私たちの体の中には、ステロイドを分解して外に出してくれる「酵素」があります。その代表がCYP3A4です。ところが、この酵素の動きを止めてしまう薬(阻害薬)があって、これが意外と身近なところにあります。

もしこの酵素がうまく働かなくなると、体の中のステロイドがなかなか分解されず、長く残るようになります。その結果、自分では少量を飲んでいるつもりでも、体の中では「多めに効いている状態」になってしまいます。そうなると、副腎は「まだステロイドがあるから作らなくていい」と判断してしまい、HPA軸の抑制が続きやすくなります。

「ステロイドを減らしているはずなのに、なかなか副腎が戻らない」と感じるときに、実は併用している薬やサプリメントが影響していた、ということもあり得ます。たとえば、抗真菌薬や、マクロライド系の抗生物質、グレープフルーツジュースなどが挙げられます。

誘導薬と阻害薬(CYP3A4)
コルチゾールに影響する成分

しかもこれ、強い薬だけの話ではなくて、体質によって代謝の強さに差があったり、複数の薬が重なったりすることで、じわっと影響が出ることもあるようです。実際、臨床で使われている薬の中でも、かなりの割合がこのCYP3A4で代謝されていると言われていて、思っているより身近なところで関わっているポイントです。

なので、「強力な阻害薬じゃないから大丈夫」と単純には言い切れなくて、特にステロイドのように体感や副作用に出やすい薬の場合は、こういう細かいところまで目を光らせておくのが、回復への近道だったりします。

まとめ

「原因不明」で回復の可能性がゼロではないとされて経過を見ている場合、このような視点を持つことで、解決の糸口が見えてくることもあるのかなと感じました。

また、回復を目指していない場合でも、必要最低限の補充で、なるべく副作用を抑えながら安定させていきたいと考えるなら、「夜のコートリル」と「CYP3A4」は、コントロールの精度に関わるポイントになってくるのかなと思います。

加えて、「原因がはっきりしないけど自発が少し残っている」「ステロイドの影響もゼロではないかもしれない」といったケースにとっても、こうした視点はヒントになる部分があるのかなと感じました。

このあたりを少し意識しておくだけでも、「量は変えていないのに体調や副作用の出方が違う」と感じる場面の整理につながることもあるのかなと思います。

出典

2026.5.8 掲載

読んでくださった方が、自分なりの工夫を見つけるヒントになればうれしいです。
医療に関する判断を行う際は、必ず医師にご相談ください。