Noteコルチゾール補充療法 重要

コートリルの補充療法は、単純に量を増やせばその分だけ元気になれるという薬ではなく、一日のリズム(概日リズム)をうまく模倣することで、より自然なホルモンバランスを再現し、体調を整えていく治療法だと言われています。

副腎皮質機能低下症と診断されて、コートリルを飲んでいるのになかなか体調が上向かない場合、薬の量を増やすだけでは解決しないこともあるようです。もちろん、体調を崩した時(シックデイ)など、一時的に増やすことは命を守るために必要ですが、日常的なベース量を増やすことには慎重さが求められます。

コートリルの量を増やし続けると、元の量に戻すのが難しくなるだけでなく、まだ残っている自分の副腎の機能を抑えてしまうリスクがあるそうです。特に、健康な人が体内で作る量を超えて補充しすぎると、副作用が出やすくなるだけでなく、今の不調の原因が「足りないせい」なのか「多すぎるせい」なのか、判断がつきにくくなってしまうこともあります。

コートリルの量を増やしても、薬が体内にとどまる時間は変わらず、変化するのは血中濃度の「ピーク値」だけだという点は、とても重要なポイントです。また、10mg飲んだからといって必ずしも数値が10増えるわけではなく、個人差によっては一時的に30近くまで跳ね上がってしまうこともあるようです。

一度にたくさん飲みすぎて、血中のコルチゾール濃度が16〜18μg/dLを超えてしまうと、以前書いた通り、運び役であるコルチゾール結合グロブリン(CBG)がいっぱい(飽和状態)になってしまいます。すると、溢れた分はうまく利用されずに体から排出されてしまうため、結局は持続時間が短くなり、体調をコントロールするのが難しくなることがあるようです。

欧米のコントロール方法

欧米の患者さんの多くは、内分泌医のPeter C. Hindmarsh先生らによる「Replacement Therapies in Adrenal Insufficiency」という専門書を参考にしているようです。この本では、単なる増量ではなく、飲むタイミングを工夫して自然なリズムに近づけるサーカディアンリズム投与など、メカニズムに基づいた調整方法がいくつも紹介されています。

[出典]Hindmarsh, Peter C.; Geertsma, Kathy. Replacement Therapies in Adrenal Insufficiency. Elsevier Science. Kindle.

こうした方法を取り入れることで、薬の総量は増やさずに、より自然なバランスを再現して体調を安定させられる可能性があります。

ある程度自発機能が残っている方の場合は、朝1回や、朝・昼過ぎの2回服用で夜まで過ごせることもありますが、自発機能がほとんどない場合は、3分割よりも4分割の方がリズムを模倣しやすいと言われているようです。

ただ、これも甘草とグレープフルーツで書いたように、吸収率や代謝の速さ、他のお薬や食品(CYP)の影響など、個人差がとても大きいため、自分に合った調整を見つけるにはCBGの影響CYPの影響を理解しておくことが欠かせないようです。

日本の現状と対策

コートリルを毎日補充しているのに調子が良くない時、日本の病院では「足りないのかもしれないから、少し増やしてみましょうか」という話になることが多い印象です。これは、過剰による副作用よりも、不足によって命に関わるクリーゼが起きるのを防ぐことを最優先に考えてくださっているからだと思います。

ただ、今のところコルチゾールの不足レベルを正確に可視化できる仕組みがないため、専門医であっても、私たちの申告をもとに推測で判断せざるを得ないのが現状です。このアプローチだけでは、人それぞれ違う不調の原因を正確に見極めるのは難しい場面もあるかもしれません。

なので、実際に生活している私たち患者自身が知識を深め、自分の体の反応を記録してヒントを掴んでいくことが大切だと思っています。主治医の先生と協力しながら、より良い調整を進めていくためには、患者側の理解や工夫も必要不可欠と言えそうです。

参考資料

2024.11.11 掲載

読んでくださった方が、自分なりの工夫を見つけるヒントになればうれしいです。
医療に関する判断を行う際は、必ず医師にご相談ください。