Hint補充の補助策
コルチゾールが不足すると糖新生が十分に行われず、低血糖を引き起こしやすい状態になるので、副腎皮質機能低下症では、必要に応じてコルチゾールを補充し、糖新生をサポートすることで血糖値の安定を図りながら生活しています。
ただ、回復を目指す場合は、少なめやギリギリの補充量で過ごす必要があるので、コートリルだけに頼らずに体調維持をする手段が必要になります。そこで、欧米の患者さんは、「適度な糖質制限」だけではなく「適度な運動」も、コルチゾール補充を減らしても糖新生をサポートできる「補充の補助策」や、長期的な健康維持として取り入れています。
適度な運動の効果
適度な運動(例:ウォーキングや軽いジョギングなどのゾーン2トレーニング)は、糖ではなく脂肪を主なエネルギー源として活用するため、ステロイド補充療法によって蓄積しやすい脂肪を燃焼する効果が期待できます。また、この病気で失われがちな筋肉を動かして維持することで、長期的な低血糖の予防にもつながります。加えて、骨への適度な負荷をかけることで、骨粗鬆症の予防にも効果があると言われています。
ゾーン2トレーニング)と脂肪燃焼ゾーン
こうした運動をうまく習慣化できれば、コルチゾール補充だけに頼らずに、ある程度動ける体質を作ることができ、日常生活のQOLや予後の向上にも役立ちます。
運動が難しいケース
減薬中や回復を目指している段階では、コルチゾール補充がギリギリの状態なので、運動を習慣化することが難しい場合があります。その場合は、まず運動よりも「適度な糖質制限」の方が無理なく始められる安全な選択肢と言われています。
適量模索してないケース
それなりの量(1日15mg以上)のコルチゾールを補充している場合や、併用している薬が多い場合は、余剰分のコルチゾールが糖新生を促進し、夜間に血糖値が高くなることがあります。ただ、朝の血糖値は低めになることが多く、病院の採血では早期に問題として認識されにくいようです。(参考:第13回市民公開講座)
補充量が少しでも多い場合、長期的に10年くらいかけてジワジワと糖尿病や骨粗鬆症のリスクが高まる※1ので、こうしたケースこそ、早期から良い習慣を取り入れることが重要と言われています。
適度な糖質制限と運動はコルチゾールの補充量に関わらず、副腎皮質機能低下症のすべてのケースでメリットがあります。
※2025年8月現在、欧米の副腎皮質機能低下症のコミュニティには約15,000人が登録されており、運動を習慣にしている方は約4,920人、回復を目指して減薬に取り組んでいる方は約1010人、調整・減薬に取り組んでいる方は480人、論文ディスカッションに参加している患者・医師・研究者は約1,080人いらっしゃいます。
参考資料
- Husebye ES, Pearce SH, Krone NP, Kampe O. Adrenal Insufficiency – Published: 13 Feb 2021
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33484633/
欧米のコミュニティや患者さんが執筆した書籍では、具体的で実践的な知恵がたくさん紹介されています。このブログでは、そのなかから「病院では教えてもらえない工夫」を学び、自分でも試して効果を感じられたこと、そして病気のメカニズムに関する理解を深めた内容を記録しています。
副腎皮質機能低下症のメカニズムに関する情報は「Note」へ、参考になった情報は「Hint」へ、その他の情報は「Misc」にまとめています。また、メッセージ経由でいただいた質問の一部は、「FAQ」にまとめています。
読んでくださった方が、自分なりの工夫を見つけるヒントになればうれしいです。
※医療も翻訳も素人で、コメントも個人的な感想・見解です。