Miscアドレナリン反応
副腎皮質機能低下症の方の中には、アドレナリンが急に高まる際に、胸のザワつきや内側の震え、冷感・発汗、息苦しさ、胃の不快感、視界の変化、強いそわそわ感などを伴うことがあると言われています。この「アドレナリン反応」は医学的には正式な症状名として定義されていませんが、海外の患者コミュニティでは共通して見られる体験として広く共有されています。
アドレナリンに影響する仕組み
アドレナリンは瞬時に体を「戦うか逃げるか」の状態にするホルモンで、心拍数や血圧、覚醒度を高める働きがあります。一方、コルチゾールは血圧や血糖、自律神経を安定させる役割があり、アドレナリンの動きを調整しています。コルチゾール補充療法は生体リズムを完全に再現することが難しく、1日の中でコルチゾールの“谷”が生じることがあります。この谷の時期に血圧や血糖を維持するため、体がアドレナリンで補おうとして急な高まりを感じやすくなると言われています。
ステロイドの種類による違い
使用するステロイドの種類によって、アドレナリン急上昇の出やすさが変わると報告されています。ヒドロコルチゾンは作用時間が短いため、服用間隔の中でコルチゾールの谷が複数生じやすく、その際に神経症状が起きやすい傾向があります。プレドニゾロンやメドロールでは、午前中に安定していても午後に“落ち方”が強く出ることで、神経が過敏になるケースがあります。
薬の種類を変えた直後や、量やタイミングを調整したばかりの時期は、自律神経が一時的に敏感になり、アドレナリン反応が出やすいと言われています。そのため、日常の補充量をできるだけ安定させておくことは、自律神経の過敏さを抑える意味でも役立つと考えられています。もちろん体調によって増減が必要な日はありますが、普段のベース量が整っているほど、日々の変動が少なくなり、アドレナリン反応も起きにくくなるようです。
誘発しやすい要因
低血糖・脱水・低ナトリウム・睡眠不足・運動後・精神的ストレス・感染症・痛みのような負荷が重なると、アドレナリンの急上昇が起きやすいとされています。コルチゾールが低い状態では、こうした負荷に対して交感神経が過剰に反応しやすくなるそうです。
こうした背景から、副腎皮質機能低下症で見られる症状の中には、このアドレナリン反応が関わっているケースがあると考えられています。コルチゾール不足と体感が似ている部分もあるため、その違いを理解しておくことが大切だと言われています。コルチゾールの日内変動や自律神経の関係性を理解してアドレナリン反応を知っておくことで、コルチゾール不足との混同を避けやすくなり、必要以上の増量を防ぐ目安にもなるとされています。
参考
https://www.zrtlab.com/blog/archive/creating-balance-stress-response/
Cleveland Clinic. Epinephrine (Adrenaline): What It Is, Function, Deficiency & Side Effects.
https://my.clevelandclinic.org/health/articles/22611-epinephrine-adrenaline
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※体験をもとに整理した内容であり、医学的助言を目的としたものではありません。
