HintGABAとHPA軸

HPA軸のバランスを考える上で、GABAとHPA軸(視床下部ー下垂体ー副腎)の関係を理解することが重要です。

例えばベンゾジアゼピン系の薬は、GABA(γ-アミノ酪酸)の抑制効果を高めることで、CRHのレベル低下を引き起こして、ACTHの分泌を鈍くする「GABA=神経のブレーキ」と考えられいましたが、ある研究では、条件次第では「GABA=アクセル」に変わって、HPA軸を活性化する可能性が示唆されています。
※ベンゾジアゼピンやGABAについては以前書いたブログ記事でも触れています。

[出典]「ストレスホルモン放出機構の新しい経路を発見」浜松医科大学

欧米の体験談の情報

欧米のコミュニティでは、ベンゾジアゼピンは、コルチゾール低下薬にも増加薬にもなるという話や、減薬の時にベンゾジアゼピンを飲むと楽になるが、後でリバウンドするという体験談を見かけます。この研究をプラスして考えても、結局ベンゾジアゼピンはHPA軸に関与するというメカニズムなんだと思いました。

栄養についての記述

この研究の「栄養状態をモニター」の部分を解釈すると、体のエネルギーや栄養バランスに応じて、GABAが視床下部で興奮性にも抑制性にも働く可能性があると考えられているようです。

  • エネルギー不足(低血糖)時:GABAが興奮性に働き、CRHを増加させる
  • エネルギー充足(血糖安定)時:GABAは抑制性に働き、HPA軸を抑える

その場合、「甘いもの摂取による血糖値スパイクがコルチゾール不足につながる」「血糖値スパイクを予防したらコルチゾールの無駄使いが予防できた」という理論を間接的に裏付けるものにもなるのかもしれません。

今までも色々な文献で見かけていた通り、ベンゾジアゼピン(非ベンゾジアゼピン・サプリなど)はなるべく避けること、甘いもの控えめで栄養バランスを整えることが大事なのかなと思いました。

GABAのバランス

GABAは「多ければ良い」「少なければ悪い」という単純な話ではなく、脳と体のバランスに応じて適切なレベルを保つことが重要だそうです。GABAは神経活動のブレーキ役ですが、コルチゾールと同様に、過剰でも不足でも問題が生じることがあります。

  • GABAが増えるとき:リラックス時・満腹時・適度な運動後・良質な栄養状態・薬剤
  • GABAが減るとき:慢性ストレス・低血糖・睡眠不足・栄養不足・加齢
  • GABAに作用する薬剤:ベンゾジアゼピン系・非ベンゾジアゼピン系・バルビツール酸系・プロポフォール・ガバペンチン・プレガバリン・ビガバトリン・バクロフェン・GABAサプリ・L-テアニン・マグネシウムなど
  • GABAを増やす栄養素:ビタミンB6・マグネシウム・亜鉛・L-テアニン・プロバイオティクス
  • GABAを減少させる生活習慣:長期的なストレス・低栄養・睡眠不足・過度なカフェイン摂取
HPA軸とGABAの関係
  • GABAが適正:HPA軸は安定し、ストレス反応が適切に調整される
  • GABA不足:HPA軸が過剰に反応し、コルチゾール分泌が増加
  • GABA過剰:HPA軸が抑制され、副腎機能低下のリスク
副腎皮質機能低下症の場合

原因や病状にもよりますが、副腎皮質機能低下症の場合、CRHの分泌が低下している(または生物活性が乏しいこともある)ため、たとえGABAがアクセルとして作用しても、コルチゾールが十分に分泌されるかは不確かです。

欧米のコミュニティでは、ベンゾジアゼピンなどの安定剤を中止して体調が改善したという体験談や、GABAサプリは血液脳関門を通過しないため効果が乏しいという情報、さらにGABAサプリ・ビタミンB6・亜鉛の摂取で不調や副腎クリーゼになったという体験談を目にしたことがあります。

HPA軸が健康な場合は、多少のサプリや薬剤の影響があっても自己調整できるのかもしれませんが、副腎機能が低下している場合はバランスが乱れやすいのかもしれません。一方で、食べ物から栄養素を摂取する場合は、体内で吸収・代謝・排出を自然に調整する仕組みが働くため、サプリよりも安全でリスクも低いようです。

様々な情報を見た結果、GABAもコルチゾールと同様に、薬剤やサプリで無理に操作するのではなく、余計な刺激を避けながら自己調整機能を守りつつ、バランスを整えることが体に優しい選択肢だと思いました。


国内外の情報・論文・コントロール良好な方の体験談などから見つけた情報を記録しています。副腎皮質機能低下症のメカニズムに関する情報は「Note」へ、体験談やヒントなどは「Hint」へ、その他の内容は「Misc」に記録しています。

※医療も翻訳も素人で、コメントも個人的な感想・見解です。