Hint薬の影響と回復について
経口のステロイドを飲んだことがないのに続発性の副腎皮質機能低下症になったり、軽度のHPA軸機能低下を起こしている人の一部は、Pituitary誌の総説「Drugs and the HPA axis」(Ambrogio AGほか, 2008)を読むと、回復できる可能性があることが見えてくるかもしれません。
対象となるのは、たとえば以下のような薬剤を使用していた人です。
- ベンゾジアゼピン系(睡眠薬・抗不安薬)
- オピオイド(鎮痛薬)
- 抗てんかん薬、抗うつ薬、抗精神病薬
- 抗真菌薬、抗ウイルス薬などのCYP3A4阻害薬
- 吸入ステロイド、点鼻薬、軟膏など
- ベンゾジアゼピン系は、脳内のGABA受容体を介して下垂体からのACTH分泌を抑える
- オピオイドは、視床下部レベルでCRH分泌を抑える
- CYP3A4阻害薬と局所ステロイドの併用で、血中ステロイド濃度が想定以上に上がることがある
このような「外部からの化学的ブレーキ」が長く続くと、一時的にHPA軸が機能低下し、ACTHやコルチゾールの反応が鈍くなることがあるそうです。原因となっている薬剤を中止または減量すると、数週間〜数ヶ月でHPA軸の反応性が戻るケースも、複数の研究で報告されています。
詳しい仕組みや影響については、薬剤性のHPA軸抑制にまとめていますが、つまり、「経口のステロイドを使っていないのにHPA軸の機能が落ちた人」の中には、薬剤性や環境性による可逆的な抑制にあたるケースも多く、正確な原因の特定と時間をかけた回復サポートによって改善が見込める場合もあるということです。
ただし注意すべき点として、
- 抑制が長期化した場合や、炎症・感染・慢性ストレスなどが重なった場合、回復に年単位を要することもある
- 回復の過程では、一時的に低コルチゾール状態になることがあり、専門医の管理下での負荷試験・漸減・補助療法が重要
- 特にベンゾジアゼピン系薬剤は、ステロイドと同様に急な減量や中止が危険
このように、薬剤性のHPA軸の抑制には、さまざまな薬が関わることがあります。なかには、一時的な抑制が「本当の副腎不全」と判断されたり、別の病気として扱われてしまうケースもあり、その見極めが回復への第一歩になることもあるようです。
副腎皮質機能低下症のメカニズムに関する情報は「Note」へ、参考になった情報は「Hint」へ、その他の情報は「Misc」へ、メッセージ経由でいただいた質問の一部は「FAQ」にまとめています。読んでくださった方が、自分なりの工夫を見つけるヒントになればうれしいです。
※体験をもとに整理した内容であり、医学的助言を目的としたものではありません。医療に関する判断を行う際は、必ず医師にご相談ください。
