Miscスプーン理論

病気や障害を抱えながら生活する毎日の大変さを、周囲の人にどう伝えるか――。そんな難しいテーマに、「スプーン理論」というユニークな方法で向き合った女性のエピソードがあります。
このお話は、特に慢性疾患や障害を抱える人々に共感を呼び、多くの人に知られるようになったそうです。

スプーン理論って何?

ある日、ループス(全身性エリテマトーデス)という慢性疾患を持つ女性が、親友から「病気を持ちながら、どんな毎日を過ごしているの?」と聞かれました。
彼女は一瞬、どう説明すればいいのか迷ったものの、目の前のテーブルにあったスプーンを使って説明を始めたそうです。

テーブルのスプーンをすべてかき集め、友人に手渡しながら、「これがあなたの一日のエネルギーだと思ってみて」と話を切り出します。

病気とスプーンの関係

彼女は、健康な人は朝目覚めた時に「無限のエネルギー(スプーン)」を持っているように感じるかもしれないけれど、病気を抱える人は限られたスプーンの中でやりくりしなければならないと説明しました。

たとえば、朝起きるだけでスプーンを1本消費。
シャワーを浴びたり、身支度をしたりするたびにスプーンがどんどん減っていきます。
昼前にはスプーンが半分以下になってしまうこともあるそうです。
そして、「スプーンがなくなる」ということは、それ以上何もできないことを意味します。

さらに、もし今日のスプーンを使い果たしてしまえば、明日のスプーンを前借りすることもできるけれど、その分翌日がもっと大変になる可能性があるとも伝えたそうです。

理解することの大切さ

このエピソードを通じて、友人は病気を抱える人が日々どれだけ多くのことを考えながら生活しているのかを実感しました。
一見、何でもないように見える「朝の準備」や「食事をする」といった行動でも、病気を持つ人にとっては大きなエネルギーを必要とすることがあります。

また、この「スプーン理論」は、病気を持つ人自身にも、自分の体力や時間を無駄にせず大切に使うことを教えてくれるものでもあります。

スプーンを無駄にしない生き方

このスプーン理論の話の最後で、彼女はこう締めくくります。
「私は、無駄なスプーンを使わず、大切な時間を大好きな人と過ごすことを選んでいる。だから、あなたと今日一緒に過ごした時間は、私にとって本当に特別なものなんだ」と。

スプーン理論は、単に病気の理解を深めるだけでなく、健康な人にとっても「自分のエネルギーや時間をどう使うか」を改めて考えるきっかけになると思います。

「スプーン理論」は、私たちが普段当たり前に思っているエネルギーや健康が、実はとても貴重なものだということを教えてくれるお話です。
病気や障害を持つ人だけでなく、誰にとっても学びのある考え方だと思います。

このエピソードが気になった方は、ぜひ自分自身の「スプーン」の使い方を見直してみてください。
そして、もし周りに病気を抱える方がいるなら、このスプーン理論を参考に、少しでもその人に寄り添うヒントになれば嬉しいです。

2025.2.7 掲載

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※体験をもとに整理した内容であり、医学的助言を目的としたものではありません。