診断された方へ

私がこの病気と診断された頃は、まだまだ情報が少なく、病名で検索して出てきた情報・SNS・ブログの体験談を参考にして、この病気について学んでいました。より具体的な情報を求めて、欧米の副腎皮質機能低下症のコミュニティ(実名制・内分泌医と研究者も所属・入会条件あり)にも参加して情報収集を始めたところ、比較的元気に日常を過ごしている人が多いことを知りました。中には適度な運動を習慣にして、安定した体調を維持している人も多く、その工夫や判断の仕方がとても参考になりました。

そこで見えてきたのは、病気そのものだけでなく、体がどんな仕組みで負荷を受けやすくなるのかというメカニズムを踏まえて生活を整えていくことが、想像以上に大事だという点でした。特に、他の大きな持病がなく、自発が部分的に残っているタイプの方(partial AIや、欧米でいうhealthy individuals with AIに相当する人たち)は、生活環境や日々の対処法を見直すことで、病気の定義にもある「適切な治療が行われれば予後は良好」という状態に近づける可能性が高いと感じています。

この「適切な治療」とは、単にコートリルを補充することだけではなく、日々の栄養状態を整えて、負荷のかかりにくい環境を整えること、そしてコートリルの追加増量だけに頼らず、追加に依存しない生活づくりを軸に、必要最低限のコートリルで過ごせるように生活そのものを調整していくことのようです。

コートリルの飲み方

コートリルは「ベース量で日常をまかなうこと」が基本で、頻繁に追加を繰り返すと、副作用や調整困難につながる可能性があります。一方で、シックデイ(事故・怪我・発熱・感染症・医療処置など)の緊急時や、非日常イベント(旅行・激しい運動・大きなストレス時など)には、追加投与が必要になることもあり、それは命を守るための正しい判断です。意識しておきたいのは、本当に必要な追加は我慢しないこと、そして控えるべきなのは「追加が増えてしまう要因」の方だという点です。欧米のコミュニティでは、この点を踏まえた工夫や知識が多く共有されており、日々の生活を安定させるための参考になりました。

追加の答え合わせ

コートリルを追加した時には、いつ・どのくらい・どんな理由で飲んだのかを必ず主治医に共有していました。そのたびに、「これは副腎不全とは関係ない不調かもしれないね」「この場面は追加して正解だったと思うよ」といったフィードバックをいただき、自分の判断を少しずつ修正しながら学んでいきました。大切なのは、「健康な人でも起こりうる不調」と「副腎不全による不足」をどう見分けるか、そして「一時的に必要な増量」と「日常化すると危険な増量」を主治医と一緒に整理していくことだと思います。必要のない場面まで飲まないよう気をつけながら、適切な判断に近づけるように調整していきました。

コートリルの量

少し前の日本では、コートリルを多めに処方されていたこともあった(=参考)ようで、その影響から、現在も「増量対応」のまま過ごされている患者さんが一部いらっしゃるようです。最近は「ACTH単独欠損症の場合は多くても15mg/day」とされていて、特に日本人女性なら、それより少ない量でも十分(=参考)という見方が広まりつつあります。これから補充を始める方や、見直しを考えている方は、まずは「今の基準」に合わせて、体調を丁寧に観察していくことが大切だと思います。

コートリルの調整

コートリル(ステロイド)を常用している場合、健康な人でも無理に減らすと副腎不全を招くおそれがあります。この点については、診断時に主治医から説明を受けていると思いますので、自己判断で減量や中止をしないことが大前提です。多くのケースでは生涯にわたって補充が必要ですが、なかには副腎機能が一部残っていたり、処方量がやや多めだったりして、回復(部分的な回復も含め)が見込めるために減薬できるタイプもあります。

減薬のプロセス

減薬を進めるには体調が安定していて、「減らしても日常生活を送れる手応え」があることが前提です。主治医から「減薬OK」の指示が出た場合でも、他の薬のように簡単に減らせるものではなく、気合いや根性で乗り切れるものでもありません。私自身の経験でも、1錠を1/8にカットした1.25mg単位で何ヶ月もかけて慎重に減らしていきました。主治医や専門家と連携しながら、体のサインを丁寧に拾い、無理のないペースで進めていく必要がある、とても繊細なプロセスでした。

私の立ち位置

私は、副腎皮質機能低下症(ACTH単独欠損症)で、他にホルモンの欠如や持病はなく、比較的シンプルなタイプの病態です。このブログには、「診断されたばかりの自分が知りたかったこと」を記録しています。当時の自分に向けて書いている内容ではありますが、同じような状況にいる誰かの役に立つことがあるかもしれないので、誰からでも見えるように公開しています。

資料

私がこの病気と向き合いコントロールしていく上で欠かせなかったのは、コートリルの追加や増量だけに頼らないこと、CBGの影響CYPの影響を理解して、負荷やリスクを避ける視点を持つことでした。参考にした文献の中から、調整や回復に役立った知識の多くは、Vaidya先生の総説(2025)Hindmarsh教授の専門書(2024)Husebye先生の総説(2021)に詳しく書かれています。


補充療法まとめ

予防投与とタイミング(2025.12.14)
コートリルの調整方法(2025.11.28)
追いコートリルの由来(2025.11.26)
不足した分だけの補充()
指導が違う理由(2025.11.23)
微調整と増量の違い(2025.11.20)
コートリル調整の誤解(2025.11.15)
追加に追われない工夫(2025.09.04)
補充療法の落とし穴(2025.08.21)
補充療法の限界と工夫(2025.08.19)
過剰投与の予防法(2025.07.07)
しっかり補充の誤解(2025.06.22)
コートリルの飲み方(2025.06.18)
副腎クリーゼの誤解(2025.06.10)
追いコートリルの罠(2025.06.04)
補充療法の失敗例(2023.12.17)


国内の公式情報
セミナーまとめ

第14回市民公開講座(2025.12.14)
下垂体ミニレクチャー(2025.07.27)
第5回大阪下垂体セミナー(2025.03.14)
令和6年度市民公開講座(2025.02.08)
第13回市民公開講座(2024.12.15)
オンライン医療講演会(2024.12.08)
下垂体ミニレクチャー(2024.07.07)
下垂体の市民公開講座(2024.03.16)

診断・治療ガイドライン

ガイドラインの補足文献(2024.06.13)
ガイドライン2023年版(2024.03.19)

その他、欧米の論文や研究からのヒントもあわせて参考にしています。
論文・総説の記事一覧

※補足としてに、文献の信頼性を判断する目安を記載しています。

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