View歩くことから始めた理由
副腎皮質機能低下症では、運動が一般的に言われる「体に良い刺激」として働かず、体調を崩す引き金になることがあります。これは単に体力が落ちているから、という話ではないと思っています。
本来、運動という刺激に対して体は「まずアドレナリンで瞬間的に対応し」「その後コルチゾールが出て、炎症や血糖、循環を安定させる」という二段構えの反応をします。ところが副腎皮質機能低下症では、この「後始末」を担うコルチゾール側が弱い、もしくはタイミングよく出ません。すると、運動でアドレナリンだけが先行し、ブレーキのないアクセル状態になります。
その結果、心拍や血圧は上がる、一時的には動けてしまう、でも後から強い疲労、脱力、動悸などの不調が出るという形になりやすく、体は「運動=危険な負荷」と学習してしまうこともあります。そんな状態の人が「体力をつけよう」「慣れれば良くなる」と運動を重ねると、安定する前にコートリルの追加が増えやすくなります。すると、体力はつかないのに、薬だけが増えていく、という悪循環に入ってしまいます。
なので、この病気では、鍛える前に、まず「崩れない土台」を作るという順番がとても大事だと感じています。
私自身も、頻繁な追加が減り、日常生活を比較的安定して送れるようになるまで、運動らしい運動はほとんどできませんでした。運動を始める条件は「やる気」や「時間」ではなく、「今日は追加なしで過ごせているか」だったと思います。
安定してから最初に選んだのが「歩くこと」だったのは、アドレナリンの急上昇を起こしにくい負荷だったからです。速さと時間をほんの少しずつ伸ばし、「崩れない範囲」を体に覚えさせていく。その範囲が広がってから、ようやく自体重の筋トレを、ごく少量ずつ重ねていきました。
今振り返ると、これは運動というより、「アドレナリンに振り回されない」「コルチゾールが足りない前提で動き方を再学習する」というリハビリの過程に近かったと思います。
副腎皮質機能低下症における運動は、「強くなる」ためではなく、「体が安全だと判断できる刺激」を、時間をかけて増やしていく作業なのかもしれません。
