HintHPA軸の機能低下の原因

薬剤性のHPA軸抑制にまとめたように、ベンゾジアゼピン系や抗うつ薬、オピオイド系鎮痛薬などが視床下部や下垂体のホルモン分泌に影響を与える可能性が指摘されています。長期的に使用を続けることで、ストレス反応としてのコルチゾール上昇が鈍くなることも報告されています。

日本でも、多くの医師はこれらの薬剤の副作用により、使用中や離脱時に体調を大きく崩すケースがあることを理解していて、一部の専門医はそれがHPA軸の「可逆的な」機能抑制を引き起こす可能性があることも視野に入れているみたいです。
実際、ベンゾジアゼピン系の薬剤は2〜4週間程度の短期使用を目安とするよう厚労省も注意喚起を出していますが、現場では長期処方が続いている例も少なくありません。

副腎皮質機能低下症と診断されながらメンタルの不調が続いている人の中には、実際にはコルチゾール不足や、逆にコートリル過剰による副作用が関係しているケースもあるのかもしれません。こうした背景に加え、対処法として処方されている向精神薬の長期使用や併用の影響が重なって、体調が安定しづらくなっている例もあるように感じます。

原因不明の不調を「副腎疲労」として治そうとしている人の中にも、よく見るとベンゾジアゼピン系(睡眠薬・抗不安薬)や抗うつ薬(SSRI・SNRIなど)を長期間使用していた、あるいは現在も使用している人が多い印象があります。

原因がはっきりしないままコルチゾールの反応が鈍いと感じている人や、副腎皮質機能低下症でコルチゾール補充療法をしているのに安定しないと感じている人の中には、こうした薬剤の副作用や離脱後の不調、後遺症などが背景にあるケースもあるのかもしれません。

もちろん全員がそうなるわけではありませんが、一部の患者は原疾患を治療することで、今よりもコルチゾールを出せるようになり、安定した体調を取り戻せる可能性があるのかもしれないので、可能性のひとつとして丁寧に見ていくことが大事だと思いました。

2025.11.12 掲載

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