Hint肥満と副腎の炎症
肥満が肝臓や筋肉に影響を及ぼすことは知られていますが、副腎にも似たような変化が起きている可能性がある──そんな視点から、今回の研究では高脂肪食が副腎の細胞や構造にどのような影響を与えるのかを詳しく調べていました。

マウスに通常食と高脂肪食を8週間与えて副腎を調べたところ、高脂肪食のグループでは、副腎の細胞で炎症に関わる遺伝子(Cd9やTrim30a)が上昇していました。炎症による変化は副腎のさまざまな層や細胞に広がっていて、細胞の分化や構造を保つ働きにも影響が出ていたそうです。細胞どうしのシグナル伝達、特にFGF系の経路も弱くなっており、高脂肪食(=肥満)によって副腎の分化・構造維持・増殖にまで影響が及ぶ可能性が示されていました。
この結果を見ると、肥満が筋肉や肝臓に影響するのと同じように、副腎でも炎症シグナルが入りやすくなる状況があるみたいです。
HPA軸が弱めの人は、副腎の機能をできるだけ守っていきたい状況だと思います。今回の研究で、高脂肪食による炎症が副腎の構造そのものに影響する可能性が示されていたので、炎症が少ないことは副腎にとってもメリットが大きいように思います。
肥満は慢性的な炎症をつくりやすく、HPA軸が弱い人はこうした炎症が抜けにくい傾向があります。もし肥満による副腎の炎症と、もともとのHPA軸の弱さが重なると、回復しにくさが強まることもありえるので、体脂肪や糖代謝、食事の脂質バランス、慢性炎症(CRPなど)を整えることには、HPA軸の回復という視点でも意義があるように思いました。
出典
日本内分泌学会雑誌(2025年101巻)シングル核遺伝子発現解析を用いた、高脂肪食負荷が副腎組織に及ぼす影響の解析
https://www.jstage.jst.go.jp/article/endocrine/101/3/101_715/_pdf/-char/ja
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