Hint補充療法とコレステロール

副腎皮質ホルモンの補充療法を続けていると、LDLコレステロールが以前より高くなる人が一定数いるようです。欧米の患者さんのやり取りを読んでいても、「治療を始めてから数値が上がった」と感じる声がいくつか見られました。

ヒドロコルチゾンは少量であれば影響は小さいと言われていますが、治療初期の高容量や、長期間の使用では脂質に変化が出るケースがあるみたいです。もちろん、全てがステロイドの影響というわけではなく、遺伝的にコレステロールが高い人もいて、その場合は治療前から高めだったという話もありました。

日本と同じく「スタチンはできれば避けたい」という意見が多く、副作用への不安や、長期服用への抵抗感が理由として挙げられていました。特にスタチンは、血糖値を上げる種類があり、糖尿病のリスクがわずかに高くなることが知られています。また、筋肉痛・こわばり・脱力感、吐き気や腹痛などの消化器症状、眠気や不眠、記憶のぼやけなど、コルチゾール不足と重なりやすい副作用も指摘されていて、「本当に悪化なのか、副作用なのか」が判断しづらい点がストレスになることもあるようです。

さらに、スタチンの一部はCYP3A4で代謝されるため、同じく部分的にCYP3A4で代謝されるヒドロコルチゾン(コートリル)と薬物動態が重なります。完全に相性が悪いというより、「CYP3A4を共有する薬が増えるほど、どちらかの血中濃度が変動しやすくなる」という意味で、副腎皮質機能低下症の人にとってはコントロールに影響することがデメリットです。

そういった背景があるため、負担が少ない代替として選ばれていたのが、腸でのコレステロール吸収を抑えるエゼチミブでした。スタチンよりも副作用が少なく、単剤でもLDLを下げられることから、医師と相談しながら使っている人が多かったです。私もこの薬で正常範囲にコントロールできていて、特に問題なく過ごしています。

生活面では、体重管理や食事の調整、運動などを組み合わせている人が多かったですが、努力しても全く数値が変わらないケースもありました。その場合は遺伝の影響が強く、生活改善だけでは限界があるという指摘もありました。

副腎皮質機能低下症の治療ではステロイドの使用が不可欠なので、もしコレステロール値が高くなったとしても、どう対処していくかを考えている人は少なくないようでした。治療そのものを避けることはできないので、薬の選択や生活の工夫など、負担の少ない方法を組み合わせていく情報が多く共有されていました。

2025.11.21 掲載

副腎皮質機能低下症のメカニズムに関する情報は「Note」へ、参考になった情報は「Hint」へ、その他の情報は「Misc」へ、メッセージ経由でいただいた質問の一部は「FAQ」にまとめています。読んでくださった方が、自分なりの工夫を見つけるヒントになればうれしいです。

※体験をもとに整理した内容であり、医学的助言を目的としたものではありません。医療に関する判断を行う際は、必ず医師にご相談ください。