Hint指導が違う理由 必読
副腎皮質機能低下症の補充療法では、同じ病名でも人によって指導が少しずつ違うことがあります。患者さんの間でも「主治医によって言っていることが違う」という声をよく見かけますが、その理由のひとつには、そもそも治療の目標が違っているという点があるのかもしれません。
初期の頃の私のように、少し自発が残っていて、その自発を維持していくことを目標にするケースと、副腎や下垂体を摘出した「絶対的な副腎不全」の場合では、補充の考え方や使い方が変わる部分があります。
私の場合は、生涯なるべく自発を残しながら生活できるように、明らかなコルチゾール不足の時だけ、本当に必要な分だけ補うという方針だったようです。
とくに続発性の人は、器質的に完全に0になるケースばかりではなく、ある程度の自発が残っている人も多いので、残っている機能と生活環境の掛け合わせで変動しやすい印象があります。
ただし、コートリルを慢性的に必要以上に飲み続けると自発は抑制され、副腎も萎縮してしまうので、自発があった人が途中でそれを失ってしまうことはありますね。
自発だけでは決まらない
一方で、コントロールの良し悪しは自発の有無だけでは決まりません。自発が少なくても穏やかに安定している人はいますし、自発がそこそこあっても波が大きい人もいます。背景には、感染症のなりやすさ・併用薬の影響・血糖値の安定性・睡眠の質・アレルギー体質・自律神経の揺らぎやすさ・体力や筋力のベース・食事や補水の工夫など、細かい土台の差がかなり影響しているように見えます。
私の周囲でも、「自発が少なくても生活の土台を整えることで急に安定した人」「自発があっても併用薬・睡眠・血糖の乱れで不調が長引く人」どちらのケースもありました。
欧米の続発性の傾向
ちなみに欧米のコミュニティにいる続発性の人の多くは「部分的な副腎不全」なので、私が受けていた指導と近い方法でコントロールしている方が多い印象があります。ただ、その一方で、欧米には「増量対応のまま日常を乗り切る」というスタイルを続けている人も一部にいます。
でも、あれは「その人にとってはそれ以外の方法では安定できなかった」という特殊なケースに限られていて、体調がそれなりに安定して過ごせている人が真似するべき方法ではないと思っています。自発が残っている人や生活の土台が整っている人が慢性的に多めを続けてしまうと、かえって自発を落としてしまい、長期的に不利になる可能性もあります。
同じ病気でも幅がある
絶対的な副腎不全の方でも、セルフケアを丁寧に積み重ねながら健やかに暮らしている人はたくさんいます。つい先日も、アジソン病の女性がフルマラソンを完走したという報告を目にしました。同じ病気でも、生活の幅や体感は本当にさまざまです。
結局のところ、目指すべきは「自分にとっての必要最低限の量」で、その人に合ったペースで生活の土台を整えながら、できるだけ健全な状態を維持していくことが、長期的に副作用を防ぎ、体調の良い時間を増やすコツだと思います。
初期設定の大切さ
ここにもうひとつ補足すると、この病気の認知度がまだ低いことが背景にあって、私のように自発が残っているにもかかわらず、初期の段階で20mgなどの高容量が処方されてしまうケースもあるようです。
自発を温存したいタイプの続発性の場合、初期の補充量の設定はとても重要なので、患者側もこうした内容を理解したうえで、主治医と治療の目的や方針を話し合っておくことが、過剰投与を防ぐ意味でも大切なんだと思います。
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※体験をもとに整理した内容であり、医学的助言を目的としたものではありません。医療に関する判断を行う際は、必ず医師にご相談ください。
