MiscACTH治療からのヒント

登録している欧米の副腎皮質機能低下症の論文や研究資料を共有してディスカッションするコミュニティで見かけたのが、ステロイド使用歴による医原性のケースには、コルチゾール補充療法の他にも、ACTH治療という研究も試みているという話でした。

医原性と診断され、何年もの間コルチゾール補充療法無しで経過を見ていた中で、2回目の副腎クリーゼをきっかけに、コルチゾール補充療法を始めたそうですが、やっぱりコルチゾールでの補充の感覚が好きではなく、ACTH治療を実験的に約2年間試してみる事にしたそうです。

ACTH治療とは、自分のACTHを科学的に作ってもらい、それを使って補充するという方法らしく、コルチゾールに比べると自然な感覚で過ごせるようで、開始から1年半ほど経過した時には、5.8μg/dLだった早朝のコルチゾール基礎値が6.5μg/dLまで回復していて、負荷試験でもMAX値が基準値に入るようになった(副腎機能が回復した)そうです。

ただ、そのタイミングで、体が補充されたACTHを異物として認識してしまい、副腎が反応しなくなくなり、そこで実験は中断になり、結局10mg/日のコルチゾールの補充で、体調維持をしている様です。

医原性の場合は、副腎機能だけでなくACTHやCRHも機能低下している場合もあり、ACTH治療で副腎機能だけを回復させたとしても、自発のACTHやCRHを出せるようにしないと、根本的な問題は解決されないらしく、むしろ、体が独自のACTHを生成する理由が少なくなる事で、問題が悪化する可能性もあるそうです。

低下した下垂体機能を回復できる唯一の方法は、下垂体からACTHの生産をさせることで、コルチゾールが低い時ほど、ACTHパルスは大きくなり、午後や夜間に比べて、早朝のほうが大きくなる事からも、結局のところ、この状態を作る唯一の方法は、経口補充の量を減らして、特に夜間にACTHの合成を強制することだそうです。

このACTH治療とは別で、FDAが認可したPurified Cortrophin gelというのがあって、副腎皮質機能低下症は適用にはなっていませんが、効果が期待できる事から、欧米では、喘息からの医原性の方で、実験的に治療に使ってみてるケースもある様です。

その他にも、ちょっと古い情報ですが、カフェイン投与(服薬)で、医原性の副腎皮質機能低下症のHPA軸を回復させるという試みもある様ですが、その論文によると100mg/kgなので、75kgの人には7500mgのカフェイン(1日あたり37.5杯のコーヒーと同等)という、副作用を考えると非現実的な内容でした。

これは日本の医療でも認識されている事ですが、低ACTHが長期的に続いた場合、副腎はACTHに反応できなくなる事があるのですが、可逆的な状態だそうです。なので、適量のコルチゾール補充などで経過を見ているうちに正常に戻る事もあるそうです。

[出典]Caffeine Enhances the Speed of the Recovery of the Hypothalamo-Pituitary-Adrenocortical Axis after Chronic Prednisolone Administration in the Rat
2023.12.18 掲載

国内外の情報や論文・コントロール良好な方の体験談などから見つけた情報を集めています。副腎皮質機能低下症のメカニズムに関する事は「Note」へ、体験談やヒントなどは「Misc」に記録しています。

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