コートリルは、不足した場合の影響だけでなく、微量でも長期的に過剰になると副作用のリスクがあるため、自分に合った適量を見つけ、不足や過剰にならないよう体調を維持することが重要だと言われています。

しかし、補充量の「スイートスポット」は非常に狭いため、副腎皮質機能低下症の服薬コントロールは、想像していたよりも大変です。

欧米のコミュニティで話題になっている、Peter C. Hindmarsh（内分泌医）とKathy Geertsma（患者家族）の副腎不全の補充療法の書籍「Replacement Therapies in Adrenal Insufficiency」（2024年3月29日に出版）には、コルチゾールが不足の場合と過剰の場合の副作用が、原発性・続発性それぞれ具体的に書かれています。

続発性のコルチゾール補充が過剰になると、胃腸炎・胃潰瘍・成長停止・食欲増加・高血糖・体重増加・高血圧・内出血・骨粗鬆症・めまい・頭痛・短期記憶の喪失・体力低下・集中力の低下など、さまざまな影響があるとされています。

Getting replacement optimal is important not just from a side effects viewpoint, but also quality of life as well as excluding treatment as a possible cause for symptoms.

Hindmarsh, Peter C.; Geertsma, Kathy. Replacement Therapies in Adrenal Insufficiency (p.244). Elsevier Science. Kindle.

「補充療法を最適化する」ということは、副作用を予防するだけでなく、生活の質の向上を考慮する必要があると同時に、治療自体が症状や不調の原因になっている可能性を排除することも重要と考えられています。また、コルチゾール不足以外の症状がある場合は、治せるものは治す努力をして、ノイズを減らす事も大事だと思っています。

第9章「グルココルチコイドの投与」には、コルチゾール補充が不足すると、副腎クリーゼのリスクや低血糖、短期および長期的な副作用が生じること、また、過剰になるとピーク値が非常に高くなり、血流中にコルチゾールが存在しない時間が生じ※1、同様に短期および長期的な副作用を引き起こす可能性があると記載されています。

1. コルチゾールの血中濃度が16～18μg/dLを超えると、コルチゾール結合グロブリン（CBG）が飽和状態になり、それよりも多く取り込まれる事が無いので、たくさん飲んでもコルチゾールとして利用できません。詳しくはコルチゾールとCBGの影響にまとめています。

[出典]Hindmarsh, Peter C.; Geertsma, Kathy. Replacement Therapies in Adrenal Insufficiency

When evaluating the changes to a dose, it is important to realise that simply increasing the dose will only increase the peak and not how long the dose will last for.

Hindmarsh, Peter C.; Geertsma, Kathy. Replacement Therapies in Adrenal Insufficiency (p.251). Elsevier Science. Kindle.

コートリルの投与量を単に増やすだけではピーク値が高くなるだけで、投与量が持続する時間は長くならないので、今の補充療法じゃ体調が整わないという場合は、全体の量を増やす事なく「頻度とタイミングを調整する」という方法でカバーを改善すると、小さな不調が改善されて、体調が安定するケースが多いそうです。

補充療法では、ヒドロコルチゾンからのコルチゾールの供給を、なるべく自然なコルチゾールの概日リズムに近づける事と、身長・体重・吸収・クリアランス・半減期・投薬する時間帯・接種している薬や物質（グレープフルーツジュース・甘草など含め）の影響を考慮する事が体調の安定につながります。

日内変動と補充量のイメージ（=参考）