HintベンゾジアゼピンとHPA軸

ステロイドからの副腎不全は「グルココルチコイド誘発性副腎不全」として分類されますが、ステロイド以外の薬剤、たとえばオピオイドや抗精神病薬などによってHPA軸が抑制される場合は、「続発性副腎不全」に分類されるようです。

例えばベンゾジアゼピンもHPA軸に影響を与える薬のひとつで、長期間・高用量の使用では、実際に副腎皮質機能低下症(続発性)を引き起こすことがあると報告されています。多くは使用を中止することで回復が期待できますが、その回復のプロセスや注意点については、グルココルチコイド誘発性副腎不全の知見が参考になる部分もあると思いました。

Isolated ACTH deficiency following long-term benzodiazepine treatment
https://www.endocrine-abstracts.org/ea/0011/ea0011p51
長年ベンゾジアゼピンを使用していた患者で、ACTHが著しく低下し、副腎皮質機能低下症が疑われた症例報告です。 薬の中止後にACTHとコルチゾールの値が徐々に回復しており、ベンゾジアゼピンが中枢性のHPA軸抑制を起こしうることが示唆されています。

Benzodiazepines and anterior pituitary function
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/12240908/
ヒトと動物において、ベンゾジアゼピンが視床下部–下垂体系に及ぼす影響を総合的に検討したレビューです。 特に、ACTHやGH、PRLなどの分泌に影響を与える可能性があり、長期使用時の内分泌系への影響に注意が必要とされています。

Inhibitory effect of diazepam on the activity of the hypothalamic-pituitary-adrenal axis in female rats
https://link.springer.com/article/10.1007/BF01244876
動物実験による研究で、ジアゼパム(ベンゾジアゼピン系薬)がストレス刺激に対するACTHとコルチコステロンの分泌反応を抑制することが確認されています。 この結果は、ベンゾジアゼピンがHPA軸の活動性を低下させる作用を持つことを示しています。

2025.7.14 掲載

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