Hintグルテンフリーの役割
欧米の副腎疾患コミュニティでは、グルテンフリーや食事制限を取り入れている方が驚くほど多くいます。セリアック病を併発しやすいアジソン病や、橋本病を併発している人に限らず、続発性の副腎皮質機能低下症・HPA軸の機能障害・慢性疲労を伴うようなケースにも共通して見られる傾向です。
私も最初は、「グルテンなんて関係ないのでは?」と思っていました。でも、一緒に過ごしている家族の目から見ても、どう考えてもグルテンなどの一部の食材を食べたあとの数週間は、体調が思わしくなかったので、思いきって除去してみました。
最近改めてコミュニティ内で「Gluten」と検索してみたところ、「症状が改善した」「減薬がスムーズになった」「補充量を減らせた」という体験談が多く見つかりました。
彼らのグルテンフリーの目的として挙げられていたのは、次のような内容でした。
- 減薬をスムーズに進めるため
- なかなか改善しない不調の原因を探る中で
- 炎症(特に喘息や関節の痛み)を抑えるため
- より少ない補充量で安定させるため
さらに、グルテンだけでなく、ソイフリー(大豆除去)、デイリーフリー(乳製品除去)、無加工食品への切り替え、ケト(高脂質・低糖質食)など、複数の要素を組み合わせてようやく体調が安定した、という声も多く、「コートリル(ヒドロコルチゾン)の吸収が良くなる」と感じている人も多く見られました。
また、「食べた後にメンタルが揺れる」「翌日の疲労感が強くなる」「炎症が再燃する」というパターンもあるようで、「気づかないうちに少しずつ不調が蓄積している」と感じる人もいました。
もちろん、全員に当てはまるわけではありません。「特に困っていない」「食べても補充量が変わらない」「気にしていない」という人もいて、そのあたりのスタンスは人それぞれです。
なぜグルテンフリーが良いのか
グルテンフリーが注目される理由として、以下のような背景が考えられます。
- グルテンによる腸の炎症やリーキーガット(腸漏れ)が、慢性的な炎症や免疫の過剰反応を引き起こす
- 炎症を抑えることが、副腎の負担を減らし、補充量の安定化に役立つ
- 腸内環境やHPA軸のバランスが乱れているとき、グルテンが炎症や不調を助長する一因となることがある
食物由来のオピオイド
最近では、グルテンが消化される過程で生じる「食物由来のオピオイド」が、脳内のオピオイド受容体に作用する可能性についても注目されています。
医師が監修する記事では、グリアドモルフィンは中枢神経系に影響を与える物質として紹介されていて、実際に医療用オピオイドは、HPA軸(視床下部ー下垂体ー副腎系)を抑制し、副腎皮質機能低下症の原因となることもあるとされています。これは、オピオイドが視床下部や下垂体に作用して、CRHやACTHの分泌を抑えることで、コルチゾールの低下を招くというメカニズムだそうです。
また、自閉スペクトラム症(ASD)との関係を調べた研究では、腸のバリア機能が低下している人において、グリアドモルフィンが神経系に影響を与える可能性があると報告されています。
参考にした文献
グリアドモルフィンは、腸内環境やHPA軸に影響を与える可能性があり、特に自己免疫疾患や腸の透過性が高まっている方にとっては、グルテンフリーの食事が体調管理の一環として有効かもしれないとする研究があります。
Casomorphins and Gliadorphins Have Diverse Systemic Effects Spanning Gut, Brain and Internal Organs
グルテンやカゼインが消化されると、オピオイド様のペプチド(グリアドモルフィン、カソモルフィン)が生成され、それらが腸や脳、行動に与える影響と、自閉スペクトラム症(ASD)との関係についての仮説も紹介されています。
https://bibgraph.hpcr.jp/abst/pubmed/34264553?click_by=rel_abst
信念よりも実感で
ベジタリアンやヴィーガンのような「理念」による制限とは違い、グルテンフリーなどの取り組みは、「状態を見ながら」「必要に応じて」行われているのが特徴的です。
実際、欧米の副腎疾患コミュニティでは、「Gluten free, sugar free, and grain free」「GF, only goat dairy, low sugar, low carb, nothing processed」「Gluten-free, dairy-free, sugar-free, and no enriched/fortified foods」といった食事スタイルが当たり前のように紹介されていて、私のように「グルテン・乳製品・糖質控えめ・無添加」なスタイルは、まったく珍しくありませんでした。
これは特別な取り組みではなく、「食べ物を選ぶこと」は体調と向き合うためのごく自然な手段として受け入れられています。診断名にとらわれず、「どうすれば今より元気に過ごせるか」を探る中で、食事を見直すという選択が無理なく取り入れられている印象でした。グルテンフリーも、その一つの手段として、「思想」ではなく「実感」から語られている点がとても印象的でした。
国内外の情報・論文・コントロール良好な方の体験談などから見つけた情報を記録しています。副腎皮質機能低下症のメカニズムに関する情報は「Note」へ、体験談やヒントなどは「Hint」へ、その他の内容は「Misc」に記録しています。
※医療も翻訳も素人で、コメントも個人的な感想・見解です。