副腎皮質機能低下症とは

副腎皮質機能低下症は、体内でストレスや炎症を抑えるホルモン「コルチゾール」が十分に作れなくなる病気です。このホルモンが不足すると、疲労感・低血圧・低血糖などさまざまな症状が現れます。病状によって指定難病に分類され、根本的な治療法には確立されていませんが、コルチゾールを薬で補うことで日常生活を送ることは可能です。

病気の概要

ステロイドという言葉を聞いたことがある方も多いと思います。体内の炎症を抑えたり、免疫を抑制したりする作用があり、さまざまな疾患の治療に使われている薬です。効果が高い一方で副作用も多く、服用には注意が必要で、多量・長期の服用はリスクが高いとされています。

人間や動物は副腎という臓器でコルチゾール(ステロイド)というホルモンを作り、運動・疲労・病気・怪我・ストレスなどの負荷に対応しながら生命を維持しています。健康な人は負荷に応じて自動的にコルチゾールを分泌できるため、意識せずに生活を送れます。

私は何らかの理由で、そのホルモンを作れなくなる「副腎皮質機能低下症※1」という病気になりました。10万人に数人の珍しい病気で、病状によって国の指定難病に分類されています。現在のところ治療法はなく、対処法としてコルチゾール(ステロイド)を補充しながら生命を維持しています。

リスク管理

適切なタイミングで薬を服用できないまま、運動・疲労・病気・怪我・ストレスなどの負荷がかかると、電解質異常・低血圧・低血糖、心臓・呼吸・消化器・体温調整など全身の機能が維持できなくなり、「副腎不全※2」や「副腎クリーゼ※3」に陥ることがあり、重症化すると命に関わる危険もあります。(参考:コルチゾール不足と症状

ケガや事故の際も、適切なタイミングで薬を服用することが必須です。意識がなくて服薬できない場合や、嘔吐・消化器症状で薬を吸収できない場合は、注射や点滴でコルチゾールを補う必要があります。そのため、外出時はヘルプカードと一緒に、病名と対処法が記載された副腎不全カード(写真右)と緊急用の薬を携帯しています。

コルチゾール値は一般血液検査では簡単に調べられない項目なので、意識を失った場合、原因を救急隊員や救急外来の医師に伝えることができず、救命が間に合わない可能性があります。そのため、このカードが副腎皮質機能低下症の患者にとって命綱になっています。

日常の生活

体内のホルモン量は日々の体調や活動、負荷によって変化するため、必要な薬の量を正確に見極めるのが難しく、健康な人と全く同じ状態にはできません。暑さで熱中症、寒さで低体温になりやすく、運動や体を使う作業もリスクにつながるので、歩き方や活動量を工夫しながら過ごしています。

見た目は元気に見え、状態が良い時はそれなりに動けますが、健康な方が当たり前にできる「ちょっとした無理」が思った以上に体調に影響するため、その日のコンディションによってできることが大きく変わります。(参考:スプーン理論

課題と現状

体内のコルチゾールが不足すると副腎不全副腎クリーゼを引き起こし、逆に必要以上に服用するとステロイドの副作用で免疫力が低下し、さまざまな病気を招くだけでなく、もともと健康な人より弱い副腎の機能を抑制してしまい、さらに体のコントロールが難しくなります。そのため、補充療法は一筋縄ではいきません。

長期的に元気に暮らすためには、多すぎず少なすぎず、ちょうど良いコルチゾールを補充することが欠かせません。しかし、それは簡単ではなく、例えるなら「見えないガソリンタンクの残量を想像しながら、溢れないように給油する作業」です。足りなくても多すぎても不調を招くため、難易度の高い課題に日々取り組んでいます。

薬でコントロールする場合
軽症で補充しない場合
周囲の方々へ

副腎皮質機能低下症は「頑張って治す物質が出ない病気」で、気持ちは頑張りたくても、身体が頑張れない時があります。

  • 昨日できたことが、翌日にはできないことがあります
  • 体調が整わず、急に予定をキャンセルしてしまうことがあります
  • 懇親会やイベントを途中で抜けることがあります
  • 座っていられず、横になって休む必要があることがあります

社会生活の中でご迷惑をおかけすることがあるかもしれませんが、温かく見守っていただけるとうれしいです。

周囲の方々への手紙
手紙の文面1
手紙の文面2

  1. 副腎皮質機能低下症とは、副腎から分泌されるコルチゾールが少なくなってしまう病気です。易疲労感・全身倦怠感・腹痛・悪心・嘔吐・消化器症状・体重減少・精神機能低下・低血圧・低血糖・耐寒性低下など、様々な症状が出てきますが、いずれも非特異的なことから、不定愁訴や他の病気と診断されているケースも多く、また、診断の基準になるコルチゾール値も、血液検査の一般項目に含まれていない為、なかなか診断に繋がらないのが現状です。生涯にわたりコルチゾールの補充が必要で、治療が軌道にのった後も、負荷やストレスにさらされた際には副腎不全を起こして重篤な状態に陥ることがあるため、日々のイベントに応じた服薬の調整が不可欠で、治療が遅れれば生命にかかわる病気です。
  2. 副腎不全とは、副腎から分泌されるコルチゾールの低下により、全身倦怠感・腹痛・悪心・嘔吐・消化器症状・体重減少・精神機能低下・低血圧・低血糖・耐寒性低下などの状態になり、早い段階で適切な治療をしない場合は副腎クリーゼに繋がります。
  3. 副腎クリーゼ(急性副腎不全)とは、副腎の機能が急激に低下することで、生命の危険に曝される状態で、脱水・血圧低下・血糖低下で意識障害を呈し、ショックに陥り死に至ります。

闘病日記 by ここ プロフィール