Noteコルチゾールに影響する成分 重要
欧米(特にイギリス)では、負荷試験を正しく行うために「コルチゾールに影響を与える薬やサプリメント」は、検査の約6週間前から中止するよう指導されることがあります。他の国でも必ずしも同じ対応ではありませんが、少しずつ影響を考慮する方向に変わってきているようです。
実際に、コルチゾールやACTHに作用する薬はリスト化されており、日常生活の中でも注意が必要とされています。
このリストは、論文(Ambrogio AG, Pecori Giraldi F, Cavagnini F. Drugs and HPA axis. Pituitary 2008; 11:219-229)を参考に、Friedman博士がまとめたものです。彼のラボで検査を受ける際には、1週間前から中止するよう推奨されているそうです。
[出典]Drugs and Cortisol – Good Hormone Health
※PDF内には「コートリルの代わりになるのでは?」と感じる記載もありますが、副腎皮質機能低下症の方にとってはステロイド様作用で副作用リスクが上がるので、避ける方が安全と考えられています。
中には、日常的にもできるだけ控えた方がよい成分も含まれています。やむを得ず服用する場合は「コルチゾールを下げる作用か」「上げる作用か」を確認し、下げる薬は夜、上げる薬は朝に服用するといった工夫が推奨されています。
クッシング治療薬・抗うつ剤・抗精神病薬・抗不安薬・ドパミン系薬剤・高血圧治療薬・オピオイド・抗オピオイド薬・ホルモン製剤・糖尿病治療薬・その他の薬物・アルコール・タバコ・一部のサプリメント
※詳しい薬品名はPDFに記載ありコミュニティ内の情報
欧米の副腎皮質機能低下症の患者さんたちの間では、日常生活の中でコルチゾールに影響を与える可能性がある成分をできるだけ避ける工夫が共有されています。以下は実際に「避けている」と報告されていたものの一部で、それぞれ根拠や研究がある内容です。
<医薬品>
ベンゾジアゼピン系、オピオイド系薬剤、一部のホルモン製剤、抗菌薬の一部(マクロライド系・抗真菌薬ケトコナゾール/イトラコナゾール/フルコナゾールなど ※皮膚科処方や日用品に含まれる場合もあり)、NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)
<サプリメント・植物成分>
アダプトゲン(例:アシュワガンダ)、セイヨウオトギリソウ(St. John’s Wort)、高麗人参、甘草、亜鉛、ケルセチン
<食品・嗜好品>
カフェイン(コーヒー・緑茶など)、アルコール、ニコチン(喫煙)、グレープフルーツ(ジュース・フレーバー食品・一部の柑橘類を含む)
<その他>
食品添加物(グリシン、ラウリル硫酸ナトリウムなど)
日本の情報
[参考]CYP3A阻害剤一覧 – 大塚製薬
[参考]CYP3A4誘導の影響を受けやすいステロイドの種類 – Pfizer
[参考]医療現場における薬物相互作用へのかかわり方ガイド
グレープフルーツと甘草
グレープフルーツや甘草は、コルチゾールの代謝や受容体に作用し、HPA軸のフィードバックが乱れることでコルチゾールが高い状態のまま続く可能性があります。その結果、血圧やカリウムにも影響し、コントロールが難しくなることが懸念されています。
実際に、補充量は生理的範囲にもかかわらずクッシング様の症状が出た方が、グレープフルーツをやめたところ症状が消え、体調が安定したケースも報告されています。逆に少量を試した方は追加投与が減ったものの、体重増加につながったとのことです。つまり「効きが強まる」リスクは確かに存在します。
季節や産地によって成分が変動するため、コルチゾール補充の調整に利用するのは非常に危険と考えられています。
※甘草とグレープフルーツについての詳細
[出典]Grapefruit juice and licorice increase cortisol availability in patients with Addison’s disease
NHS England(United Kingdom National Health Service)のヒドロコルチゾン錠の情報ページにも、「ヒドロコルチゾン錠で治療を受けている間は、グレープフルーツやジュースを摂取しないで下さい。ヒドロコルチゾンの効き方を変え、副作用のリスクを高めます。」と記載がありました。(参考)
高麗人参も同様にHPA軸に作用し、健康な人では「コルチゾールを下げる」ことで不調を和らげる仕組みがありますが、副腎不全の方には逆効果となる可能性があります。(参考)
サプリメント
サプリメントは本来「副腎が健康な人」を前提に作られており、コルチゾールを下げる作用を持つものが多くあります。副腎不全の方が服用すると、不足をさらに悪化させ、追加補充が増える要因になることがあります。(※アシュワガンダについて)
さらに海外のサプリには、医薬品成分(例:デキサメタゾン)が混入していた例もあり、成分表示が不完全なケースもあるため、思わぬ相互作用を引き起こすリスクがあります。そのため欧米の患者コミュニティでは「サプリに関する話題を禁止」している所もあるほどです。
ビタミン剤・ミネラル
血液検査で実際に欠乏が確認された場合(DHEA・マグネシウム・カリウム・ビタミンなど)は、医師の指導のもと処方薬や確認済みサプリで補充されることがあります。その場合は予後も良好とされています。一方で、欠乏症ではない方が自己判断で摂取すると効果はなく、むしろ過剰摂取による副作用や、コルチゾール不足と似た不調を引き起こすリスクがあるとされています。
加筆修正:ビタミンの効果と副作用
また、プレドニゾンと亜鉛の相互作用により関節症が悪化したという報告や、亜鉛が一時的にコルチゾール分泌を抑える研究もあり、注意が必要です。
[出典]Prednisone and Zinc sulfate drug interactions – a phase IV clinical study of FDA data
[出典]Zinc acutely and temporarily inhibits adrenal cortisol secretion in humans. A preliminary report
アロマオイル
ベルガモット・ラベンダー・ローズマリー・ゼラニウム・グレープフルーツなどのアロマも、コルチゾールを下げる作用があると報告されています。欧米の患者さんは「香り」にも気をつけ、使用する前に主治医に相談しているケースが多いようです。
[出典]Odorの多面的作用に対する 生理心理学的視点からのアプローチ
まとめ
内分泌のT先生のアドバイスにもある通り、コートリルは添付文書に「併用注意」と明記されていなくても、実際には相性の悪い薬や成分が多く存在するそうです。調べ始めるとCYP450・CYP3A4など肝臓での代謝の話に広がり、専門的で理解が難しく感じましたが、後日勉強して誘導薬と阻害薬(CYP450)に整理しました。
欧米の患者さんたちも細かいメカニズムまでは把握していない場合が多いですが、共通しているのは「不要な薬やサプリはできるだけ使わない」という姿勢です。さらに食品・日用品・化粧品に関しても、コルチゾールやアドレナリンに影響する成分(上げる・下げる両方)を避けることでリスクを減らしています。
特に注意したいのは「コルチゾールを上昇させる成分」です。一時的には体調が良くなり、コートリルがよく効いているように感じるため、気づかずに続けてしまうことがあります。しかし、その裏で副作用や長期的な予備能低下につながる恐れもあるため、慎重に判断する必要があります。
欧米のコミュニティや患者さんが執筆した書籍では、具体的で実践的な知恵がたくさん紹介されています。このブログでは、そのなかから「病院では教えてもらえない工夫」を学び、自分でも試して効果を感じられたこと、そして病気のメカニズムに関する理解を深めた内容を記録しています。
副腎皮質機能低下症のメカニズムに関する情報は「Note」へ、参考になった情報は「Hint」へ、その他の情報は「Misc」にまとめています。また、メッセージ経由でいただいた質問の一部は、「FAQ」にまとめています。
読んでくださった方が、自分なりの工夫を見つけるヒントになればうれしいです。
※医療も翻訳も素人で、コメントも個人的な感想・見解である事をご了承ください。