第21話「推奨量と適量」診断から8ヶ月

副腎皮質機能低下症には、原発性(副腎そのものが原因・アジソン病)と、続発性(下垂体または視床下部が原因で、副腎に指令が届かないタイプ)の2種類があります。私は以前、それを調べるために検査入院をしましたが、原因の特定には至らず、現在は副腎皮質機能低下症という診断名で治療を続けています。

これまでの負荷試験の結果は、迅速ACTH負荷試験(コルチゾールMAX 14.2μg/dL)、CRH負荷試験(ACTH反応あり・コルチゾールMAX 10.5μg/dL)、インスリン負荷試験(ACTH高反応・コルチゾールMAX 5.5μg/dL)で、安静時の早朝コルチゾールの数値とあわせて考えると、副腎が生きている可能性がゼロではないという見立てのもと、最小限のコートリルを補充して経過を見ています。

コートリル服用開始からこれまで、体感をもとに自分に合ったコートリルの量を探してきましたが、学会誌に掲載されていた「体表面積換算」および「体重換算」の定義に基づいて、裏づけを取ってみました。

体表面積換算の推奨服用量

健常成人は1日あたり平均20mgのコルチゾールを分泌しているとされていますが、血液検査の基準値は4.5〜21.1μg/dLと幅があり、日本内分泌学会雑誌に記載されていた5〜10mg/㎡/日を目安にすると、私の体表面積(1.47㎡)では7.35〜14.7mgがコルチゾール基礎分泌量の範囲になります。
初期の頃に専門医のS先生が言われていた「負荷に合わせて15mg/dayまで服用可能」との説明とも一致していました。

その後、ある程度自発コルチゾールが戻ったこともあり、負荷や炎症のない日常生活では2.5〜5mgの補充で十分に活動できている点も、数値的に辻褄が合っているように思います。実際、20mgを服用していた頃は体調が悪く、10mg以上では体重増加などの副作用があり、7.5mg以下でようやく自然に近い感覚に戻りました。もしかすると、私の健康だった頃の基礎分泌量は、この最低値の7.35mgに近かったのかもしれません。

体重換算の推奨服用量

日本内科学会雑誌によると、体重あたりの投与量0.12mg/kgを目安にすると、私の適量は約5.76mgになります。体重換算あたりのヒドロコルチゾン推奨服用量(表1)では50kg以下の記載はありませんが、おそらく5〜7.5mg程度が妥当と考えられ、現在の服用量とも整合しているようです。

その他の要素

実際のコルチゾール基礎分泌量や、活動・炎症・ストレスによる消耗は個人差があります。私の場合、推奨量よりも少なめでも体調を維持できていて、副腎が生きている可能性がゼロではない点を踏まえると、現在の服用量はガイドライン上でもおおむね適量だと感じています。

このセオリーが正しいかを確認するため、専門医のS先生の診察時に質問したところ、見立ては一致していました。

過剰投与になってしまうケースでは、もともと体表面積や体重換算を目安に始めた投与量が、服薬後の「体調が悪い」というフィードバックをもとに徐々に増えてしまうこともあるのかもしれません。そのため、体調不良が本当にコルチゾール不足によるものなのかを、患者自身が見極めることも大切だと感じました。

コートリルの血中濃度

私は10mgを服用することはほとんどありませんが、コートリルは10mg飲んだからといって10μg/dL補充されるわけではなく、空腹時に服用すると一時的に血中濃度が大きく上がるようです(グラフA)。
クッシング症候群の定義では、血中コルチゾール濃度が30μg/dLを超える状態が長く続くとリスクがあるとされていて、日本内科学会雑誌のデータ(グラフB)を参考に、血中濃度をなだらかに保つため、毎朝は補食後にコートリルを服用するようにしています。

副腎皮質機能低下症の患者は、おそらく生涯にわたりコートリルを服用することになります。対処療法の薬に頼るだけでなく、治せる不調は治療して体調を整え、必要な分だけを補充することで、服薬量や体調のコントロールがしやすくなり、副作用の予防にもつながるのではないかと思います。

[出典]日本内科学会雑誌(2021年97巻)第4号「副腎不全:診断と治療の進歩」
[出典]日本内分泌学会雑誌(2015年91巻)第1部「副腎不全症概要」

2023.3.13 掲載

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